寝たきりの人を介護するために気をつける3つのポイントとは?

2019/3/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

高齢者はもちろん、若い方でも突然のケガや病気で寝たきりになるリスクはあります。両親、祖父母、パートナーなど、身近な人が寝たきりになったとき、どのように介護してあげれば良いのでしょうか。今回は、寝たきりの人を介護するために気を付けるべき3つのポイントを解説します。

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寝たきりの方を介護するときの注意点は?

寝たきりの人を介護する際に特に注意すべき点は、「床ずれへの配慮」「排泄への配慮」「体の清潔さの保持」の3つです。
以下に、3つそれぞれの理由やポイントを解説します。

寝たきりの人への、床ずれの配慮

寝たきりの方の中には、自力で体勢を変えることができない方も多いです。このため、寝たきりの人を介護する場合は、床ずれを起こさないよう配慮する必要があります。

寝たきりの人への、排泄の配慮

排泄のお世話をしてもらうのが恥ずかしいという方もいます。このため、介助者は、寝たきりの人の衛生面とともに、尊厳にも配慮しながら介助することが求められます。

寝たきりの人への、体の清潔さの保持

自力で起き上がることが難しくなり、着替えや入浴にもほかの人の手を借りる状況になると、どうしても着替えや入浴の頻度が少なくなってしまいがちです。このため、寝たきりの方は体や身の周りの環境が不衛生になりやすくなります。したがって、介助者は寝たきりの人の体と環境を清潔を保つための工夫・努力が求められます。

床ずれができる原因と対処法は?

床ずれは、主に長時間同じ姿勢でいることで圧力が特定の部位に集中することが原因で起こりますが、他にも以下のような原因が複雑に絡み合って発症しています。

  • 食事が十分に摂れず、痩せて骨が突出して体圧を強く受けている
  • 寝たきり状態により皮膚が刺激に弱くなっている、または非常に乾燥している
  • 尿や便で汚れていたり、湿っていたりして不衛生な状態のベッドに寝ている
  • 抗がん剤やステロイド剤など、薬剤を常用している
  • 病気や薬剤、または寝たきり状態の影響から体がむくんでいる
  • 手足の関節が硬くなってきている
  • 意識が低下している                          など

なお、床ずれが最もできやすい部位は、痩せてくると骨が突出しやすいおしりの中央・仙骨部の他、後頭部、肩甲骨、かかとなどが挙げられます。

床ずれができるのを防止するためには、体圧の分散とともに、皮膚を清潔に保つためのスキンケアを行うのが効果的です。
体圧は専用のマットレスを使って分散し、姿勢保持クッションもうまく利用しながら、2~3時間おきに体勢を変えて分散してあげましょう。

また、スキンケアに関しては、食生活・栄養状態の改善や、保湿剤の塗布、むくみ解消のためのマッサージなどが肌の健康・バリア機能の向上に効果的です。

寝たきりの人の排泄で気をつけるポイントと対処法は?

寝たきりになると、健康な人とはお腹にかかる圧力が変わるため、うまく便が肛門まで移動せず、便秘状態に陥りがちです。
このため、自然に便意を催すことも少なくなります。ただ、本人が便意や尿意を訴えたり、コントロールできる間は専用のトイレで排泄させてあげるのが適切です。

しかし、本人が便意・尿意をコントロールしたり、その意思を介助者に伝えるのが難しい場合は、おむつの使用と推奨されます。このようなとき、周囲の介助者が排泄というプライベートな行為を手伝ううえで気を付けるべきポイントをご紹介します。

排泄介助に対しネガティブな発言を控え、自尊心を傷つけない

ほとんどの方が、排泄を手伝ってもらうことに恥ずかしさや負い目を感じています。そこで、介助者に失禁や排泄がうまくいかなかったことを批判されたり、ネガティブなことを言われると、生きるのに必要な排泄自体が本人にとって苦痛になりかねません。排泄介助の際は特にネガティブな発言を控え、うまくできたら一緒に喜んであげましょう。

少しでも長く自分で排泄できるよう、周囲の介助者が工夫する

まだ自分で尿意・便意の意思表示ができるのに、介助者の効率のためにおむつの着用をさせるのは、寝たきりの人の自尊心を傷つける行為です。また、介助すればトイレまで歩ける人の場合、介助者都合によるおむつの使用は本人の筋力を下げ、状態を悪化させる引き金にもなりかねません。

排泄の時間を決めてルーチン化する、本人ができることを増やせるよう促すなどして、寝たきりの人が少しでも排泄を成功させられるよう工夫してあげてください。

水分の摂取は控えさせず、十分な量を摂らせる

本人、または周囲の介助者の判断で排泄の回数を減らすために水分の摂取量を減らすと、脱水症状や便秘、脳梗塞を発症するリスクが高くなります。水分補給は生きるために必要ですから、十分に行うよう促しましょう。

寝たきりの人を介護する負担を少しでも軽くするには

寝たきりの方を介護するのは、介助者にとって精神的にも肉体的にも大きな負担となります。「寝たきりの人の介護」という負担は、到底1人だけで担える負担ではありません。まずは兄弟・家族や親しい親戚・知人を頼るなどして、寝たきり介護の負担を分散・軽減することが大切になります。

また、兄弟・家族や親せき・知人の手を借りるのが難しかったり、強力しながら介護しても負担が十分に軽減されない場合は、介護サービスを利用するのもひとつの方法です。

プロが提供する介護サービスには、自宅に介護の手伝いに来てくれる在宅介護サービスや、施設に入所して24時間体制の介護を受けられる施設介護サービスなどがあります。これらのサービスは、介護保険制度を使えば低額で利用できるケースもあります。まずは担当のケアマネージャーや、地域の支援センターなどに相談してみましょう。

おわりに:寝たきりの人の介護では、床ずれ・排泄・衛生面に特に注意を

日常生活に他者の介助が必要になる寝たきり状態になると、どうしても床ずれや排泄困難、不衛生な状態が起こりがちです。このため寝たきりの人の介護では、特に床ずれを起こさない、そして本人の自尊心を傷つけないように排泄を介助することが求められます。ただし、寝たきりの人の介護には介護者にも大きな負担がかかります。適切な介護を続けるためにも、まずは介護者が周囲やプロをうまく頼って、負担を抱え込まないことが重要です。

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