心臓の病気、大動脈解離とは ― 原因・症状について解説

2019/4/25

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

大動脈解離とは、なんらかの原因で血管壁に傷がついたことがきっかけで、本来流れるはずのないところに血液が入り込んで血管壁がはがれてしまう病気です。発症原因はまだ明らかになっていませんが、生活習慣病や遺伝子の異常によって発症すると言われています。この記事では、大動脈解離について症状の特徴や原因、治療法を紹介します。

大動脈解離ってどんな病気?

大動脈は、心臓から送り出された血液が最初に流れる動脈です。胸から腹部にかけて走り、人間の体の中でもっとも太い血管です。勢いよく流れ出た血液を血液を最初に受け止めるため、血管には厚みと柔軟性があります。

血管の壁は、内膜、中膜、外膜の3層の膜からできています。しかし、丈夫な構造のはずの血管も、何らかの原因で血管壁が傷つくことで、本来は血液がない場所に血液が流れ、血管の壁が剥がれてしまうことがあります。これを大動脈解離といいます。大動脈解離を発症すると血管の壁がもろくなってしまうため、血液がたまって膨らんで破裂したり、血液が染み出して周囲の臓器に悪い影響を与えたりします。

大動脈解離になるとどんな症状が出てくる?

大動脈解離は、ほとんどの場合は突然起こります。胸や背中に起こる激しい痛みが代表的な症状ですが、そのほかにさまざまな症状があります。

たとえば、血液がたまってふくらむことで血流障害を起こすことがあります。また、破裂して出血を起こしたり、じわじわと血液が滲みだして周囲の臓器に悪い影響を与えたりすることもあります。

たとえば、上行大動脈で大動脈解離が起こると、滲みでた血液が心臓を圧迫したり、心臓と大動脈の繋ぎ目まで浸透して心不全を起こしたりして命を落とすことがあります。また、弓部大動脈からは脳や腕などに血液を送る血管が分岐していますが、この部分で解離が起こると脳への血流が少なくなって意識を失うことがあります。

さらに、大動脈解離によって血管壁のすきまに血液がたまり、コブ状の膨らみ(解離性大動脈瘤)ができることがあります。この膨らみが破裂すれば大出血してショック状態となり、命を落とすこともあります。

大動脈解離は、何もしなければ進んでいく病気です。中には、緊急手術が必要となるものもあり、早期の診断や治療が必要です。このため、大動脈解離の症状があらわれたらすぐに救急車を呼ぶ必要があります。

大動脈解離になるのはどうして?

大動脈解離は原因不明のものもありますが、加齢や動脈硬化、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、先天的な異常などがリスクになるといわれています。

また、妊娠中に増えるホルモンが、影響を与える場合もあるともいわれています。妊娠25週以降から出産後までが起こりやすい時期と考えられています。ほか、交通事故や転落など、大きなケガも要因となります。

大動脈解離の治療法は?

大動脈解離は、大動脈のどの部位で起こったかや、どの程度の状態なのかによって、すぐに命に関わるのかどうかや治療方法が異なります。そのため、大動脈の部位は、大動脈基部、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈、腹部大動脈と細かく分けられています。

特に、上行大動脈に解離がある場合は心臓への影響が大きく一刻を争うため、緊急で胸を開く手術を行うことがほとんどです。上行大動脈以外の部位で解離が起こった場合には、状態に応じて血圧管理や、痛みを和らげる治療から行うこともあります。

手術では、解離した血管を人工血管に置き換える「人工血管置換術」や、血の巡りが悪い部位の血流を回復させるために迂回路をつくる「人工血管バイパス術」があります。

また、治療が受けられる病院は限られていますが、近年ではカテーテル治療のひとつである「ステントグラフト治療」が選択されることがあります。ステントグラフト治療は、解離が起きた場所で人工血管を内側から広げ、血管を補強する手術です。足のつけ根などの太い血管からカテーテルを挿入して行うため、胸を開く手術に比べると体への負担が小さい手術法です。

おわりに:大動脈解離は命に関わる病気。症状が出たときはすぐに病院へ。

大動脈は人間の血管の中で、もっとも太い血管です。身体の中心に縦に伸びており、体中に血管を分岐させています。大動脈は3層の膜からできていますが、何らかの原因で内側から傷がつき、本来は血液が流れるはずのない場所に血液が流れこんで血管壁が剥がれていく状態を大動脈解離といいます。大動脈解離の多くは突然起こり、何もしなければ進行して命に関わります。躊躇せずに救急車を呼ぶ必要がある病気のひとつです。

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