寝たきりの人にみられる便秘の特徴って?予防するには?

2019/4/20

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

高齢者の方の場合、寝たきりになると便秘をしやすくなるといわれています。この記事では、なぜ高齢になると便秘になりやすくなるかや、予防・改善方法を解説します。

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寝たきりの高齢者にみられる便秘の特徴は?

一般的に「便秘」とは、腸内に長時間便が留まる、腸内の便の通過が遅くなるなど、排便がスムーズに行われない状態を指します。毎日排便があったとしても残便感が残る、3日以上排便がない場合は便秘とされています。

便秘には突然起こる場合と、長時間にわたって症状が続く場合があり、後者は「機能性便秘」「薬剤性便秘」などに分けられます。なかでも機能性便秘は「直腸性便秘」「弛緩性便秘」「痙攣性便秘」分類されており、なかでも「弛緩性便秘」が日本人に最も多い便秘とされています。

弛緩性便秘とは、便を排出するための蠕動運動のはたらきが弱まる、筋力の低下によって便を排出する力が弱くなることなどによって引き起こされます。弛緩性便秘は特に高齢者や寝たきりの人などに多いといわれている便秘で、腹痛はなく、便が硬く太くなることなどが特徴として挙げられます。

高齢者が便秘になりやすいのはどうして?

特に高齢者に弛緩性便秘が多いのは、自律神経のはたらきが関わっているといわれています。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、それぞれシーソーのようにバランスを取って全身の調整をしています。

自律神経のうち、主に日中の活動時にはたらくのが交感神経、夜間の体を休めるときにはたらくのが副交感神経です。たとえば、交感神経が活発になると心拍数が増える一方で、副交感神経が活発になると胃腸のはたらきが高まります。しかしこの副交感神経のはたらきは加齢とともに低下し、男性では30代、女性では40代から動きが弱まることが知られています。

また、朝食を食べないことや食物繊維の不足なども弛緩性便秘が高齢者に多いとされる原因です。朝食は眠ったままの胃腸を起こす役割もあり、起床後に太陽の光を浴びて朝食をとることで腸が目覚め、食事による刺激によって腸がしっかり動き出します。
しかし朝食を抜くことによって胃腸が眠ったままとなってしまい、便秘を助長することになるといわれています。また食物繊維の不足により、便が少なくなって腸に便が溜まりやすくなっているとも考えられています。

便秘を防ぐためにはどうすればいい?

寝たきりの人が便秘を予防するための方法として、主に以下のようなものが挙げられます。

食事

朝食をしっかりとり、腸を刺激しましょう。食物繊維や乳酸菌は便通を良くする効果が期待できるため、積極的に摂ることをおすすめします。あまり食欲がないなど、たくさん食べられないようなときには栄養価の高い食事を取るようにしましょう。

また、喉が渇いていなくてもこまめに水分補給をしてください。寝たきりの場合にはポータブルトイレなどに座って排便できれば良いですが、無理をすることは避け、医師と相談して便秘を予防していきましょう。

運動

適度な運動によって、腸を活性化させることができるといわれています。体の状況などに応じて、主に以下のような運動が考えられます。

座ることができる場合
もし車いすなどに座ることが可能であれば、座ったまま足踏みをしてもらうのがおすすめです。歩くような動作で手を前後に大きく振り、足を可能な範囲で高く上げます。前かがみになるとあまり腹筋が刺激されないため、注意してください。
また、足を上げるのが難しい場合には、足を使って車いすを前に進める動きをさせてみましょう。下腹部をねじる動作なども取り入れると、より腹筋を刺激する効果が期待できます。
座ることが難しい場合
補助してくれる人や背もたれに寄りかかって起き上がる動作をしてもらうと、重力によって腸が引っ張られて活性化するといわれています。できるだけ背骨をまっすぐに伸ばすことがポイントです。少しずつ座る時間を長くし、支える部分を減らしたり、体のバランスを崩すような刺激を与えたりしましょう。反射的に姿勢をもとに戻そうとする動きによって腹筋や背筋が自然と使われ、腸に良い刺激を与えることができます。
ベッドに横になっている場合
あお向けで両膝を立て、床から足を離して胸の方に膝を引き寄せる動きをしてもらうのがおすすめです。難しい場合には、片膝ずつ行う、両手で膝を支えて行うなど、やりやすい方法で行いましょう。

おわりに:食事や運動を見直して便秘を改善しましょう

高齢者の場合、ぜん動運動が低下したり、筋力が弱くなったりすることで便秘になりやすくなります。朝食をきちんと食べることやこまめな水分補給、そしてできる範囲内での運動などを通して、便秘を予防・改善していきましょう。

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