血液の成分や働きについて学んでみよう!

2019/3/26 記事改定日: 2020/10/5
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

血液は主に血漿と血球で構成されており、酸素など細胞に運ぶなど重要な役割を果たしています。今回は血液の成分や働きについて解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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血液をつくる臓器「骨髄」とは?血液が足りないとどんな不調が起きる?

血液の成分は、骨髄でつくられます。まず、骨髄で「造血幹細胞」という血球のもととなる細胞がつくられ、造血幹細胞が赤血球などに変化します。骨髄では毎日、赤血球が2,000億個ほど、白血球は1,000億個ほど、血小板は1億個ほどつくられていると言われています。

骨髄とは骨の中の組織です。全身の骨髄の総量は大人で2.6kgほどあると言われており、臓器の中でも最大です。乳児の場合、全身の骨の中にある骨髄で血球成分がつくられますが、大人になるにつれて脊椎、胸骨、骨盤など、限られた場所でしかつくられなくなります。

骨髄以外でつくられるもの

血漿蛋白質やリンパ球のT細胞など。血漿蛋白質はほとんどが肝臓でつくられています。また、リンパ球のT細胞以外は胸腺でつくられています。

血液が不足すると、次のような不調が現れます。

  • 動悸
  • めまい
  • 息切れ
  • 倦怠感
  • 疲労感
  • のどの渇き
  • 吐き気
  • 尿量の減少

血球と血漿にはどんな成分が含まれる?

血液は「血球」と「血漿(けっしょう)」からできています。血管を巡って体内を循環しているときは血漿が55%、血球が45%ぐらいの割合です。

血漿とは、血液から血球を取り除いた液体成分のことです。91%は水分で、固形成分(グロブリン、アルブミン、血液凝固因子などのタンパク質)は9%です。糖質、無機塩類、脂質なども含みます。

血球は赤血球、白血球、血小板から成り立っています。

赤血球

骨髄でつくられ、脾臓で壊されるまでの120日間ほどが赤血球の寿命です。数としては、成人では血液1μLの中に、男性は500万個ほど、女性で450万個ほど、幼児は690万個ほどあります。

白血球

成人の場合、血液1μLの中に平均7,500個ほどあります。顆粒球、リンパ球、単球などから構成されています。

血小板

血液1μLの中に14~36万個ほどあります。大きさは直径が2~3μmほどで、円盤の形をしています。

血液の働き-酸素や栄養やホルモンの運搬・病原菌退治・体温調節など

わたしたちの体の中で、血液は以下のような役割を担っています。

酸素を運び、二酸化炭素の排出を手伝う

赤血球の中の「ヘモグロビン」が肺で酸素を取り込み、体全体に酸素を運びます。また、血漿が主となり組織呼吸で発生した炭酸ガスを肺に送っています。

栄養を体全体に運ぶ

消化器官で吸収された栄養素は、血液に入るくらい細かく分解されます。主に血漿がその栄養素を細胞や組織に運んでいます。

病原菌の退治

白血球の中の「顆粒球(かりゅうきゅう:好中球、好酸球、好塩基球の総称)」は免疫に関わっており、病原菌などの異物が血液内に侵入すると、それらを飲み込んで消化や殺菌などを行います。そのため、病原菌などを退治する白血球が足りないと、病原菌が増殖して病気になります。

また、「リンパ球」は抗体の生産に関わり、体の免疫機能に役立っています。そして、「単球」はマクロファージに変化し、異物や老廃物を処理します。アレルギー反応や毒素の中和にも関わっていると言われています。

ホルモンを運ぶ

副腎や甲状腺などの内分泌腺で生産されたホルモンは、血液の中に放出されて各器官へと運ばれます。

老廃物や有害物質を運ぶ

細胞活動で産出された老廃物、そして代謝で生まれた有害物質などは、血液が腎臓や肝臓などへ運んでいきます。

体温を調節する

肝臓など臓器や筋肉が活動する時、熱が生まれます。血液は器官を通るときにその熱を吸収し、皮膚を流れる際に熱を放出します。そのおかげで肝臓などがオーバーヒートを起こさずに済んでおり、体温も一定に保たれています。

血圧の保持

私たちの体温は、血圧が変動することによって対応調節が行われています。
血液の量は血圧を左右する重要な要素でもありますが、これは血圧は心臓の拍動によって押し出された血液が血管の壁を押す力を示すものだからです。

血液の量が少ないと、血管が押される力は弱くなるため血圧は低下し、逆に血液の量が多いとその分血管にかかる圧は高まるため血圧は高くなります。著しく血液量が減ると血圧が低くなることで動悸、めまい、倦怠感などの全身症状を引き起こします。

ケガをしたときに血液が固まるメカニズム

血液がケガなどで大量に出血すると、生命の維持が危ぶまれます。大量の出血を防ぐため、血を止める機構が人間の体には備わっていて、この機構は大きく分けると以下の2種類あります。

  1. 血小板が主体となって止血する
  2. 血漿のなかにある複数の「血液凝固因子」が主体となって止血する

血小板による止血

出血をするほどケガをすると、血管が傷ついて血管内皮細胞がはがれます。すると、血小板が血管内皮細胞の下にある「コラーゲン線維」と結合します。

結合すると、血小板が活性化され、血小板の形が円盤状から足が出たような形に変化し、細胞質から多くの血小板を集めるための物質を放出します。結果的に集まった血小板同士が結合し、傷口をふさぎます。

血液凝固因子による止血

血液凝固因子にはカルシウムやタンパク質があり、怪我をするとこれらの血液凝固因子が活性化し、血液はゲル化(粘土が増加し、膠化[こうか]した状態)します。このゲル化した血液は網状になっており、血小板や細胞をその網でからめ、傷口を塞ぎます。

おわりに:血液の働きで体内バランスやウイルスへの抵抗ができる

血液は酸素や栄養素を運んだり、老廃物を回収したりといった働きをしています。特に、呼吸器の問題やヘモグロビン不足による貧血などが起きると、全身への酸素供給が満足にできなくなります。そうすると、低酸素状態となり、臓器異常などが起きるので注意が必要ですので、血液が不足しないように日頃から栄養などに気をつけましょう。

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