血液のがんってどんな種類があるの?

2019/3/18

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

血液というと、体中に酸素を運んでくれるというイメージを持っている人は多いですよね。その他にも、細菌やウイルスから体を守る免疫機能、体のさまざまな部位に栄養を届ける機能など、血液は私達の体が正常に機能するために欠かせません。
そんな血液にも、がんが起こることを知っていますか?今回は、血液のがんの種類とその特徴や症状についてご紹介します。

血液のがんにはいくつかタイプがある?

私達の血液は、以下のようないくつかの成分から成り立っています。

赤血球
体の各組織に酸素を運ぶ
白血球
ウイルスや細菌など、異物が体内に入ってきた時に排除する免疫機構を司る
血小板
血管の壁が破れたところに集まり、かさぶたを作って出血を止める
血漿
液体の成分で、組織でできた二酸化炭素や代謝の老廃物を回収し、肺や腎臓へ運ぶ

これらのうち、赤血球や白血球・血小板などの固形成分は、骨髄にある「造血幹細胞」が細胞分裂しながらだんだんと分化(それぞれの特徴的な機能を獲得し、細胞として成熟すること)していくことで作られます。造血幹細胞はさらに「骨髄系幹細胞」「リンパ系幹細胞」の2つに分化し、それぞれから以下のような細胞が産生されます。

  • 骨髄系幹細胞:赤血球、血小板、顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)、単球など
  • リンパ系幹細胞:B細胞、T細胞、NK細胞などのリンパ球

顆粒球・単球・リンパ球(B細胞やT細胞、NK細胞など)を合わせて白血球と呼んでいます。これらはいずれも免疫機構に関係している細胞で、一般的には単球や顆粒球(好中球)の貪食作用、すなわち細菌や異物を体内に取り込むことで殺菌などの処理を行う作用が白血球のイメージとして有名なのではないでしょうか。

このように、血液の中にはさまざまな細胞や成分が含まれているため、一口に「血液のがん」と言ってもそのタイプはいくつかに分けられます。その中でも「三大血液がん」と呼ばれる「白血病」「悪性リンパ腫」「多発性骨髄腫」の3タイプが血液がんのほとんどを占めています。特に、悪性リンパ腫は「胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・肝がん」の五大がんに続く頻度で起こるがんですから、決してまれな疾患というわけではありません。

白血病ってどんな病気?

白血病とは、文字通り白血球に起こる疾患のことです。前章で触れた通り、白血球には「骨髄系肝細胞」から分化したものと、「リンパ系肝細胞」から分化したものがありますので、由来によって「骨髄性白血病」と「リンパ性白血病」の2つに分けられます。また、症状の進行度合いによっても「急性白血病(症状が急激に進行する)」と「慢性白血病(症状は徐々に進行する)」の2つに分けられます。

急性白血病ってどんな病気?

急性白血病は、白血病の中でも症状が急激に進行するタイプのがんです。白血球のうち、顆粒球・単球などに分化途中の細胞ががん化したものを「急性骨髄性白血病」、B細胞やT細胞などのリンパ球などに分化途中の細胞ががん化したものを「急性リンパ性白血病」と呼んでいます。

いずれの場合も、急激に骨髄またはリンパに属する白血球ががん化して異常増殖するため、正常な細胞に分化するための肝細胞がどんどん消費されてしまいます。「骨髄系肝細胞」「リンパ系肝細胞」のどちらも「造血幹細胞」という大本の肝細胞から作られているため、いずれの場合も白血球(好中球・好酸球・好塩基球・単球)・赤血球・血小板などの血液細胞が減少します。

好中球などの顆粒球や単球が少なくなるとウイルスや細菌を排除しにくくなるため、感染症にかかりやすくなります。また、赤血球が減少すると貧血の症状(動悸・息切れ・めまいなど)が起こります。血小板が減少すると出血の際に血が止まりにくくなったり、最悪の場合は自然に出血が起こって全身に点状の出血斑ができたり、鼻血や歯茎から出血したりします。

さらに重篤化すると、がん化した細胞が臓器や組織に浸潤する場合もあります。主に発熱や全身倦怠感、歯茎の腫れや痛み、腰痛・関節痛などがみられます。肝臓や脾臓に及ぶ場合は腹部の膨満感や腫瘤、痛みが出てくることがあり、骨髄性白血病のほか、リンパ性白血病のB細胞系でよく起こります。また、リンパ性白血病では特に頸部などのリンパ節の腫れがよくみられます。

慢性白血病ってどんな病気?

慢性白血病は、白血病の中でも症状の進行が比較的ゆっくりしたものを指します。慢性白血病にも骨髄性のものとリンパ性のものがあり、「骨髄系肝細胞」や「リンパ系肝細胞」に分化する前の「造血幹細胞」ががん化したものを「慢性骨髄性白血病」、成熟したリンパ球のうち小型のB細胞ががん化したものを「慢性リンパ性白血病」と呼んでいます。

慢性骨髄性白血病の患者さんのうち、95%以上で「フィラデルフィア染色体」という特徴的な染色体異常が見つかっています。これはヒトの染色体のうち、9番目と22番目の2本が途中で切れてつながってしまった染色体のことを指します。つながった部分にできた新しい遺伝子から作られるタンパク質ががん化した造血幹細胞を増やす指令を出し続けるため、がん化した造血幹細胞が増え続けてしまうのです。

しかし、慢性骨髄性白血病の場合、初期には造血幹細胞ががん化しても、その造血幹細胞からできた白血球はほぼ正常の白血球と同じ働きをするのです。さらに、進行が非常にゆっくりなため、初期の段階ではほとんど症状として現れません。そのため、初期状態で発見される場合は健康診断などで白血球数が異常に増加していることを指摘されて偶然見つかる場合が過半数です。

さらに病状が進行すると、白血球数だけでなく血小板数の増加が見られるようになり、それに伴って赤血球の数は減少します。このため、貧血が起こりやすくなります。また、だんだんと正常な機能を持たないがん化した細胞が増えてくると、全身の倦怠感や無気力、発熱、夜間の寝汗、体重減少、脾臓が腫れて大きくなることでの腹部膨満感などの症状が現れてきます。

慢性リンパ性白血病の原因は、まだはっきりと解明されていないため、よくわかっていません。しかし、欧米人に多く、日本人も含むアジア人ではまれな疾患であることはわかっており、また、アジア人が欧米に移住しても頻度が増えるわけではないことから、環境ではなく遺伝的な要因が関係しているのではないかと言われています。そのため、全ての血液がんの中で最も遺伝的要素の影響が大きい疾患だと考えられています。

慢性リンパ性白血病も、慢性骨髄性白血病と同様、初期段階ではほとんど症状がありません。そのため、やはり同じように健康診断などで白血球数の異常増加を指摘されて偶然見つかることも多い疾患です。

病状が進行してくると、倦怠感・食欲不振・寝汗を伴う微熱・体重減少・脾臓や肝臓が腫れて大きくなるなどの症状が現れます。発熱や肺炎など、感染症の症状が最初に現れることもあります。また、多くの場合で首やわきの下、足の付け根などのリンパ節に腫れがみられます。通常は痛みのないしこりとして現れ、数週間~数カ月かけてだんだんと大きくなり、縮むことはありません。

がん化した細胞が増えてくると正常な造血ができなくなるため、白血球・赤血球・血小板が減少してくるのは骨髄性白血病と同じですが、特に慢性リンパ性白血病では「自己免疫性溶血性貧血」という、自分の赤血球に対して自己抗体ができ、自ら赤血球を破壊していってしまう現象が起こることがあります。こうなると当然、極めて重度な貧血となってしまいます。

悪性リンパ腫ってどんな病気?

悪性リンパ腫とは、白血球の一種である「リンパ球」ががん化して増殖する疾患です。白血病との違いは、がん化した細胞が塊を作ることです。この塊はリンパ節の腫れとなって現れるため、首やわきの下、足の付け根などのリンパ節が腫れることが自覚症状となって気づくことが多いです。ただし、リンパ組織は全身に分布しているため、リンパ節からだけ発症するとは限らないことに注意が必要です。

腫瘍細胞の形や性質によって、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の2種類に分けられます。それぞれの特徴や割合は以下のようになっています。

名称 割合 特徴
ホジキンリンパ腫 約10% 病変組織の一部に「ホジキン細胞」や「リードスタンバーグ細胞」などの特徴的な細胞がある

治癒する可能性が高く、約65〜80%

非ホジキンリンパ腫 約90% ホジキンリンパ腫よりも全身に広がりやすい

がん化したリンパ球の種類や、悪性度によっても分類される

日本では「ホジキンリンパ腫」よりも「非ホジキンリンパ腫」の方が圧倒的に多く、「非ホジキンリンパ腫」はその中でもさらにたくさんの種類に分類されます。これは、分類によって週単位で急速に進行するものから年単位でゆっくりと進行するものまでさまざまだからです。悪性リンパ腫の進行度合いによって、即入院して治療が必要な場合と、治療よりもひとまず経過観察をした方が良い場合があるのです。

多発性骨髄腫ってどんな病気?

多発性骨髄腫とは、リンパ球のうち「B細胞(Bリンパ球)」がさらに成熟した「形質細胞」ががん化して起こる疾患です。形質細胞は、通常、体内に細菌やウイルスなどの異物が入ってきたときに「抗体」というタンパク質を作って異物を攻撃し、体を守る免疫機能の働きを持っている細胞です。

多発性骨髄腫で形質細胞ががん化すると、異物を攻撃するための抗体を作れなくなります。しかし、抗体自体を作る働きは残っているため、役に立たない抗体(Mタンパク)を作り続けます。Mタンパクは異物を攻撃する能力がないだけでなく、増えていくと体にさまざまな悪い症状を引き起こすようになります。

多発性骨髄腫の症状で最も多いのが、骨の痛みです。がん化した形質細胞を「骨髄腫細胞」と呼んでいますが、この骨髄腫細胞が「破骨細胞」という骨を溶かす細胞を異常に活性化させてしまうため、本来は古い骨を溶かすための破骨細胞によってどんどん骨の組織が溶かされてしまうために起こります。全身の骨がもろく折れやすくなり、骨の痛みや脊髄の圧迫による麻痺、さらに血中に骨が溶けてできたカルシウムが流れ出すため、高カルシウム血症になることもあります。

また、骨髄腫細胞が骨髄の中で異常に増殖することにより、正常な血液細胞を作り出す過程が妨げられ、他の白血球や赤血球、血小板が減少します。すると、他の血液がん同様、感染症や貧血、出血の症状がみられます。さらに、Mタンパクが増えすぎることによって腎機能障害や血液循環の障害が起こることもあります。

このように、多発性骨髄腫は多岐にわたる症状を引き起こす疾患ですが、無症状の場合も少なくなく、血液検査や尿検査などでMタンパクをはじめとした異常を指摘されて発見されることも多いです。多くは慢性に進行しますが、まれに急性に進行する場合もありますので、個々の患者さんに合わせた治療が必要です。

おわりに:三大血液がんは「白血病」「悪性リンパ腫」「多発性骨髄腫」

血液がんの中でも、白血病は非常によく名前の知られた疾患です。進行スピードによって急性・慢性、またはがん化した細胞の違いによって骨髄性・リンパ性に分けられます。悪性リンパ腫や多発性骨髄腫はリンパ球やその分化後ががん化したものです。

いずれのがんも、がん化した細胞が異常増殖することにより、正常な血液細胞が減少することによる症状が見られます。また、無症状であっても血液検査などで発見されることもあります。

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