片頭痛の予防療法で使われる「予防薬」ってどんなもの?

2019/4/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

人によっては生活や仕事に支障が出るほど、強く長く痛みが現れる片頭痛。近年ではそんな片頭痛が起こらないように、症状が出る前に予防する薬も出てきています。今回は片頭痛の予防療法や、そのために使われる薬について解説していきます。

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片頭痛の予防療法が必要になるのはどんなとき?

片頭痛の症状が出る方のうち、片頭痛の予防療法(薬を使って片頭痛の発症を予防する治療を行うこと)が行われるのは、以下の条件に該当する場合です。

  • 片頭痛による発作が、月に2回以上現れている場合
  • 痛みが出てからの治療や対処だけでは、日常生活や仕事に支障が出る場合
  • 持病や体質、年齢など、何らかの事情で痛みが出てから服用する薬が使えない場合

予防療法で使われる「予防薬」ってどんなもの?

片頭痛の発症を予防するために行われる予防療法では、主にβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシン系阻害薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などが使われます。ここからは、片頭痛予防薬の働きや特徴、具体的な薬品名について解説します。

片頭痛の予防薬:β遮断薬

プロプラノロールなど、高血圧や冠動脈疾患、頻拍性不整脈などの持病のある方に使われることが多い片頭痛予防薬です。ただし、心不全、抑うつ状態、喘息の人への使用は極力避けるべきとされています。また、トリプタン製剤の一種であるリザトリプタンとの併用は禁止されています。

片頭痛の予防薬:カルシウム拮抗薬

血圧を下げる作用があります。ロメリジンやワソランなどの種類があり、片頭痛発作の程度や得たい効果などによって、医師の判断で使い分けられます。

片頭痛の予防薬:アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬

それぞれACE、ARBとも呼ばれる、血圧を下げる作用のある薬です。この薬を服用した患者さんの中に、片頭痛発作が発生する回数や痛みの程度が軽減する傾向がみられたことから、片頭痛予防薬として使われるようになりました。

片頭痛の予防薬:抗てんかん薬

バルプロ酸ナトリウム、トピラマートなどの種類がある片頭痛予防薬です。継続的に服用することで、片頭痛発作の回数を減らす効果が期待できます。

片頭痛の予防薬:抗うつ薬

抗うつ薬のうち、特にアミトリプチリンは片頭痛予防薬としても使われています。片頭痛の発症原因の1つとされるセロトニンの代謝を改善し、片頭痛の発生を予防する作用があることが確認されている薬です。

予防療法の進め方は?

片頭痛の予防療法は、医師が患者の持病の有無や体質、症状の程度に合わせて処方した薬を服用することですすめていきます。このとき、予防薬は重大な副作用など有害事象が少ない薬剤を少しずつ服用しはじめ、2~3カ月かけて予防効果の有無や程度を判定します。患者本人が十分な効果を実感しているようであれば、そのままさらに2~3カ月を目安に服用を続けます。

その後は医師の指導のもと、片頭痛をコントロールできるよう薬の服用を徐々に減らしていき、薬を使わなくても月に1~2回ま程度の発作におさまっている状態を目指します。なお、もし薬を飲み始めてから2~3カ月経っても十分な予防効果がみられない場合は、他の病気の可能性も疑いつつ、薬剤を変えて治療を続けていきます。

おわりに:頻繁に片頭痛の症状がみられるときは、予防薬を使える可能性があります

片頭痛発作が1カ月に2回以上起こるなど、頻繁に症状がみられる場合、日常生活に支障が出てしまう恐れがあるため、予防療法がとられることがあります。片頭痛の予防療法は、降圧薬や抗てんかん薬、抗うつ薬といった薬を、体調や症状をみながら服用する方法で行われます。頻繁に片頭痛の発作が起きてつらい方は、一度医師に予防薬が仕えないかどうかを相談してみてください。

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