記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
過活動膀胱とは、膀胱の働きが過敏になったために、尿がそれほど溜まっているわけでもないのにお手洗いに何度も行ったり、尿意を我慢できずにもらしてしまったりする状態です。この記事では、なぜ過活動膀胱の症状が出てしまうのか、考えられる原因を解説します。
過活動膀胱とは、尿を溜めておく器官である膀胱が過敏になり、尿が充分に溜まっていないのに強い尿意を感じてしまう状態です。通常であれば、尿意は膀胱に溜まるにつれて少しずつ強くなっていき、我慢することもできます。しかし過活動膀胱になると、トイレに行く回数が増えたりり、トイレまで間に合わずに漏らしてしまったりします。特徴的な症状は「尿意切迫感」「頻尿」「夜間頻尿」「切迫性失禁」の4つです。
尿のトラブルは、外出や旅行が怖くなってしまったり、仕事の集中に支障をきたしたりなど、心理的に大きな負担を与えて生活の質を下げることにもつながります。寒いところに行くと尿意を感じやすくなるなど、一時的な頻尿もありえますが、もしも暖かい場所に移動しても頻尿が続いたり、尿トラブルが日常的になっていると感じたりする場合は、過活動膀胱の可能性が考えられるでしょう。
過活動膀胱の原因おおまかにわけると、「神経因性過活動膀胱」と呼ばれる神経のトラブルが原因で発症しているものと、神経トラブルとは無関係に起こる「非神経性過活動膀胱」が考えられています。
脳梗塞やパーキンソン病といった脳障害や、脊髄損傷や多発性硬化症といった脊髄障害の後遺症で、脳と膀胱の筋肉をつなぐ神経の回路に障害が起きてしまうことが原因です。尿の溜まり具合や、尿道を締めるか緩めるかの指令などが神経でうまく伝達されなくなった結果、過活動膀胱の症状があらわれます。
こちらは神経のトラブルはみられません。たとえば男性の場合、前立腺肥大症で尿が出にくい状態になったことが膀胱に負担をかけ、膀胱の筋肉の反応が過敏になってしまったことなどが原因として考えられます。
上記は代表的な原因ですが、複数の原因がからみあっていたり、原因が特定できなかったり、加齢が原因だったりするケースも多くあります。
女性の場合、過活動膀胱をはじめとする泌尿器科系の疾患に、骨盤の底を支える骨盤底筋という筋肉が関係していることが多くあります。加齢や出産が原因で骨盤底筋が弱くなったり傷ついたりすることがあり、これが原因で過活動膀胱が起こります。
女性は妊娠すると羊水、胎盤や成長していく胎児の分、子宮の重さが増します。骨盤底筋はこの重みを受け止め続けるうえ、さらに出産の際も大きなダメージを負うからです。
骨盤底筋のトラブルの場合、骨盤底筋体操で骨盤底筋を鍛えるなどの対策を指導する病院もあります。
過活動膀胱の治療は、主に薬物療法で行われます。膀胱の筋肉の過剰な収縮を抑制したり、膀胱の下流にある尿道を拡げやすくしたりする抗コリン薬やβ3作動薬という2種類の薬を用いることが多いようです。ほかにも、前立腺肥大症がみられる場合にはα1ブロッカーを用いたり、頻尿の症状については漢方薬を用いたりしながら治療します。
また、心理的なストレスや寒さなどが原因になっていることもあるため、運動や食事などを含めた生活習慣の改善や、カウンセリングなどの心理療法が用いられることもあります。
過活動膀胱は、尿が充分に溜まっていないのに強い尿意を感じたり、尿を我慢しきれず漏らしてしまったりする病気です。主な原因としては脳と膀胱の伝達トラブルによるもの、それ以外に、男性の場合や前立腺肥大症や女性の場合は骨盤底筋のトラブルなどが考えられています。しかし、原因が不明のケースも多くあるようです。