メトロニダゾールってどんな抗生物質なの?

2019/7/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

メトロニダゾールとは、抗生物質のひとつで、抗菌作用や抗原虫作用を持っています。この記事では、メトロニダゾールの働きや主な治療薬、副作用について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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メトロニダゾールとは

メトロニダゾールは、抗菌作用および抗原虫作用をもつ薬で、トリコモナスによる感染症のほか、ピロリ菌などの嫌気性細菌の感染症などに用いられます。国内外においては、嫌気性菌感染症に対して、各種ガイドラインや教科書で紹介されている標準的な治療薬です。

嫌気性菌とは生育に酸素を必要としない細菌で、酸素が存在していても生育できる通性嫌気性菌と、大気レベルの濃度の酸素で死滅してしまう偏性嫌気性菌に分かれています。

メトロニダゾールの働きは?

細菌や原虫などが生命活動を行うには、遺伝情報に刻まれたDNAが必要となります。メトロニダゾールは、このDNAを切断することで生命活動を阻害します。メトロニダゾールが病原微生物に取り込まれ、ニトロソ化合物という物質に変換される中で、抗菌作用および抗原虫作用をあらわします。

メトロニダゾールがニトロソ化合物という物質に変換される中で、ヒロドキシラジカルという物質が生成され、この物質がDNAを切断することで細菌や原虫を活動できなくします。作用する主な病気には、以下のようなものがあります。

トリコモナス症(トリコモナス腟炎)

女性の腟や尿道にトリコモナス原虫が寄生し、外陰部の痛みやかゆみ、排尿時の不快感、泡状の悪臭の強い黄色いおりものの増加などを引き起こす病気です。メトロニダゾールは、トリコモナス原虫を殺虫することができます。

嫌気性菌による細菌感染症

嫌気性菌が引き起こす細菌感染症の中でも、一般的な抗生物質が効きにくい病気に効果があります。具体的には、偽膜性大腸炎を含めたクロストリジウム属・ディフィシル菌による感染性腸炎、胃炎や胃潰瘍の原因菌ヘリコバクター・ピロリ菌などに効果があります。

原虫類による感染症

赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫(ジアルジア)、さらには毛包虫(ニキビダニ)などにも有効です。

主なメトロニダゾールの治療薬は?

メトロニダゾールの、代表的な治療薬をいくつかご紹介します。

フラジール®︎

主に、トリコモナス症(腟トリコモナスによる感染症)、嫌気性菌感染症(皮膚科領域、外科・整形外科領域、呼吸器科領域、骨盤内、腹腔内、肝臓内、脳内における感染症)、感染性腸炎、細菌性腟症、アメーバ赤痢、ランブル鞭毛虫感染症の治療に用いられます。
内服薬のほか、トリコモナス症の治療などにも用いれるよう、女性の膣内に入れることができる膣錠もあるのが特徴です。

アネメトロ®︎

主にアメーバ赤痢、外傷の二次感染、化膿性髄膜炎、肝膿瘍、偽膜性大腸炎、骨髄炎、手術創の二次感染、胆嚢炎、熱傷の二次感染膿胸、脳膿瘍、肺炎、敗血症、肺膿瘍、腹膜炎、感染性腸炎、深在性皮膚感染症、腹腔内膿瘍、骨盤内炎症性疾患などに用いられる注射剤です。

メトロニダゾールの副作用は?

メトロニダゾールには、病気の治療につながる効果がありますが、一方で副作用もあります。代表的なものとしては、発疹・かゆみなどの皮膚症状、吐き気・下痢・腹痛などの消化器症状、末梢神経障害などです。頻度はまれですが、手足のしびれや痛み、感覚の欠如などの危険性もあります。異常を感じた場合は、すぐに医師や薬剤師に相談するようにしてください。

また、アルコールを摂取した場合悪酔いを増悪させる可能性や、妊産婦、授乳婦などへの投与の安全性の未確立なども注意が必要です。胎児に対する安全性は確立しておらず、治療上必要と判断させる場合を除き、特に妊娠3カ月以内は経口や注射などによる投与は禁止されています。

おわりに:メトロニダゾールは、抗菌作用・抗原虫作用をもつ治療薬です

メトロニダゾールは、抗菌作用および抗原虫作用をもつ薬で、トリコモナスによる感染症のほか、ピロリ菌などの嫌気性細菌の感染症などに用いられます。細菌や原虫などが生命活動を行うには、遺伝情報に刻まれたDNAが必要となりますが、このDNAを切断することで生命活動を阻害することができるのです。さまざまな病気の治療につながる効果がある一方で副作用もあるため、使用中に異常を感じた場合はすぐに医師や薬剤師に相談してください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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