SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の特徴は?

2019/4/11

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

セロトニンという神経伝達物質は、近年ニュースやインターネットなどでもよく聞かれるようになってきました。セロトニンを増やすと抑うつ状態が改善される、という作用は比較的よく知られていますが、実際に抑うつ状態を改善するための薬剤であるSSRIもその作用を利用しているのです。

この記事では、SSRIの具体的な作用機序や代表的な薬剤の種類、副作用などについて詳しくご紹介します。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とは

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とは、「Selective Serotonin Reuptake Inhibitor」のことで、それぞれの単語の頭文字を取って「SSRI」と呼ばれています。名前の通り、抑うつ状態の原因となるセロトニン系の神経回路にのみ選択的に作用し、神経伝達物質である「セロトニン」の血中濃度を増やすことで抑うつ状態を改善すると言われています。

抑うつ状態(うつ病)になると脳内にあるセロトニンの量が少なくなるため、不安や気分の落ち込み、無気力といった症状があらわれます。そこで、SSRIによってセロトニンが細胞内に回収(再取り込み)されるのを阻害します。すると、セロトニンは放出されるが再取り込みされにくなるため、脳内のセロトニン量が増えます

セロトニンの量が増えると脳内の神経伝達が改善されるため、憂鬱な気分を和らげ、無気力状態が改善されて意欲にあふれた状態に戻すことができます。また、セロトニンは脳内で別の神経伝達物質である「ノルアドレナリン」の作用を抑える働きがあり、このノルアドレナリンによって引き起こされると考えられているパニック障害(神経の異常興奮による)などを改善する効果があるSSRIもあります。

SSRIはセロトニン系にのみ選択的に作用するため、他の部位には影響を及ぼさず、副作用も少ない点で安全に使用することができる薬なのです。

代表的なSSRIの薬にはどんなものがある?

代表的なSSRIの薬には、以下のようなものがあります。

セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト®︎)
OD錠(口に入れると唾液ですぐに溶ける)があり、嚥下機能が低下した人でも飲みやすい
作用・副作用のいずれも穏やかで、初めての処方でも使いやすい
他のSSRIと比べて太りにくい傾向があり、女性でも中断することが少ない
うつ病のほか、パニック障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などにも使用される
フルボキサミン(商品名:デプロメール®︎、ルボックス®︎)
うつ病のほか、社会不安障害や強迫性障害などにも使用される
パロキセチン(商品名:パキシル®︎)
現行のSSRIの中では最も効果が強力とされている
錠剤の種類が豊富で、5mgなどの低用量から使えるため調節しやすい
パニック障害や強迫性障害などにも使用される
徐放性製剤(CR)剤もあり、普通の錠剤と比べて体内でゆるやかに吸収されるため、飲み初めの副作用が軽減されやすい
エスシタロプラム(商品名:レクサプロ®︎)
SSRIの中で最も新しく、2011年に承認された
他のSSRIと比較して副作用が少ない傾向がある
一般的に継続性と有効性が高いとされており、臨床試験でも長期にわたって寛解状態が続くことが確認されている

日本で最初に発売開始されたSSRIは、1999年のデプロメール®︎・ルボックス®︎です。その後、2000年にパキシル®︎が、2006年にジェイゾロフト®︎が販売開始され、最も新しいレクサプロ®︎は2011年から販売・使用開始されています。

このうち、最も効果が高く、副作用のリスクも高いのがパキシル®︎で、特に突然の断薬で中断症候群を引き起こすとめまいや知覚障害、不安や吐き気、体の震え、発汗や耳鳴りなどの危険な症状が現れることがあります。減薬・断薬は必ず医師の指示のもとでゆっくりと行う必要があります。

レクサプロ®︎は最も新しいこともあり、比較的副作用も少なく、増量・減量を強く意識する必要がないため使いやすいという意見が多いです。

SSRI服用中に副作用が起こるとしたら?

SSRI服用中に起こりうる副作用には、以下のようなものがあります。

消化器症状
吐き気・嘔吐・便秘・下痢・食欲不振・口が渇くなど
たいてい飲み始めに起こり、2~3週間で軽減・消失する
精神神経系症状
めまい・ふらつき・眠気・頭痛・不随意運動など
自動車の運転など、危険性のある機械の作業はできるだけ控える
性機能障害
性欲低下・勃起障害・射精障害など
頻度は稀
セロトニン症候群
不安、イライラ、混乱など
頻度は非常に稀

どのSSRIにも共通してみられる副作用は、消化器症状や精神神経系症状です。これらの症状はたいてい飲み始めに起こり、数週間程度で消えていくことが多いため、軽度の場合は様子を見る必要があります。しかし、重度の症状が現れて辛い場合は我慢せず医師に相談しましょう。また、少なくとも副作用が落ち着くまでの期間は、車の運転や機械操作といった作業はできるだけ控えてください。

また、頻度はまれですが、長期間の服用で脳のドーパミンに対する活性が低下することなどから、性機能に関する障害が現れることがあります。ジェイゾロフト®︎は弱いドーパミン再取り込み阻害作用も持っているため、この副作用は起こりにくいと言われていますが、個人差がありますのでジェイゾロフト®︎であれば絶対に起こらない、というわけではありません

SSRIの服用でセロトニンが増えることにより、非常に稀ですが「セロトニン症候群」という症状が現れることがあります。これは脳内のセロトニン濃度が過剰になることで起こる症状であり、通常はそもそもセロトニン濃度が一般的な人と比べて少ないうつ病の人で起こることはありません。ところが、例えばSSRIと他の薬剤との飲み合わせによる相互作用でセロトニンが過剰になってしまうことがありえます。薬剤の飲み合わせには充分に注意しましょう。

しかし、多くの人でSSRIによる副作用は現れにくいです。これは、「選択的」つまり、SSRIがセロトニン系の神経回路にしか働きかけないことが大きく、他の神経伝達物質の受容体には影響しないためです。抗うつ薬は長期にわたって服用を続ける必要がある薬剤ですから、SSRIのように副作用が少ない薬剤は続けやすいと言えます。

飲み合わせに注意する薬は?

前述のセロトニン症候群などを防ぐためにも、SSRIなどのセロトニンを増やすタイプの薬剤を服用している間は、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含む健康食品を併用してはいけません。これは、セントジョーンズワートが抗うつ作用を持つ、という報告があるためです。詳しい作用機序は解明されていませんが、おそらくSSRIと同様の機序を持つのではないかと考えられています。

そのほか、それぞれの薬剤によって飲み合わせに注意する薬剤が異なります。ほかに飲んでいる薬があれば、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。また、ジェイゾロフト®︎は、グレープフルーツ(ジュースも含む)を食べると薬の効果が強く出すぎてしまうため、こちらも注意が必要です

おわりに:SSRIは副作用が少なく使用しやすい、比較的新しい抗うつ薬です

SSRIは、「選択的」すなわち、セロトニン系の神経回路にだけ働きかける、という点で画期的な医薬品です。これによって副作用が非常に少なくなり、長期にわたって抗うつ薬を服用しやすくなったため、うつ病治療に大きな貢献を果たしました。

とは言え、副作用が全く起こらないというわけではありません。また、飲み合わせには充分注意し、体調がおかしいと感じたらすぐに医師や薬剤師に相談しましょう。

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