記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
アスピリンは「非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)」の一種で、さまざまな痛みの緩和に使われている薬です。現在は解熱鎮静薬としてだけでなく、血栓防止薬としても使用されています。今回はそんなアスピリンの概要、効能、副作用などをご紹介します。
アスピリンは代表的な解熱鎮静薬として知られ、1899年にドイツのバイエル社から販売されて以来、100年以上にわたって使われてきました。現在は発熱や痛みを抑える薬としてだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞、川崎病などの治療薬としても使用されています。
アスピリンは薬名に「ピリン」と付きますが、化学構造的にはピリン系ではなく、サリチル酸の系統に分類されています。なお、日本薬局方では「アスピリン」を正式名称としていますが、実際は「アセチルサリチル酸」という本来の医薬品名を使用している場合もあります。
アスピリンの主な効能には、抗炎症作用、解熱鎮痛作用があり、風邪、関節炎、筋肉痛、頭痛、歯痛、神経痛などの緩和に使用されています。また、抗血小板作用も確認されており、現在は心筋梗塞や脳梗塞の治療・予防のために使われるケースが増えています。
人は感染症などにかかると、炎症や発熱を引き起こす「プロスタグランジン(PG)」を合成しますが、これには「シクロオキシゲナーゼ(COX)」という酵素が必要です。アスピリンはCOXをアセチル化して阻害する働きがあるため、結果として、抗炎症作用や解熱鎮痛作用などが得られます。
アスピリンを配合している処方薬には、ジェネリック医薬品(後発医薬品)を含め多くの種類があります。このジェネリック医薬品とは「新薬(先発医薬品)」の特許期間が切れた後に、新薬と同じ有効成分を使って製造された薬のことです。例えば、同じアスピリンの薬でも「マリキナ®︎配合顆粒」や「ピーエイ®︎配合錠」などはジェネリック医薬品となっています。
また、アスピリンは処方薬だけでなく、市販薬にも含まれています。たとえば、「バイエルアスピリン®︎」や「バファリン®︎A」などにはアスピリンが配合されています。このように、アスピリンは処方薬・市販薬を問わず、さまざまな薬に配合されている身近な薬となっています。
他の内服薬と同じで、アスピリンを服用する場合も用法・用量などを誤るとかえって症状を悪化させたり、副作用が起きたりするリスクがあります。そこで、診察時に医師に伝えるべきポイントやアスピリンを使用する際の注意点を確認しておきましょう。
診察では、アレルギーや喘息といった持病の有無、現在の服薬状況などを医師に伝えるようにしてください。また、出産や手術の予定などがある場合も相談しておきましょう。これらをきちんと伝えておかないと、副作用や他の薬との相互作用のリスクが高まります。
アスピリンは副作用が少ない薬ではあるものの、まれに重篤な副作用を起こす可能性があります。以下に当てはまる場合は、使用禁止または慎重投与なので注意してください。
すでに何らかの薬を服用している場合、相互作用(薬の効果を増強・減弱させること)を起こす危険性があります。アスピリンの場合は、抗血栓薬、尿酸排泄促進薬、抗リウマチ薬、気分安定薬、抗うつ薬、糖尿病治療薬といった薬と相互作用を起こす可能性があるので注意が必要です。また、市販薬であっても相互作用のリスクはあるので注意してください。
アスピリンの主な副作用には、胃痛、食欲不振、悪心といった胃腸症状があります。これはアスピリンによって「プロスタグランジン(PG)」という消化管粘膜を保護している物質の合成を抑制され、消化管の粘膜障害を起こしてしまうからです。自覚症状は乏しく、重症化するケースは少ないですが、進行すると胃潰瘍などを起こす可能性があります。特に、ご高齢の方や長期にわたって服薬している方は、副作用に注意する必要があります。
アスピリンの主な副作用は胃腸症状ですが、この他にも発疹や喘息発作、腎機能や肝機能の低下、貧血なども報告されています。また、稀ではありますが、重篤な副作用として、ショック・アナフィラキシー、脳出血、皮膚・粘膜障害、血液異常(血小板減少や白血球減少)、消化管潰瘍・胃腸出血などの可能性もあります。アスピリンを服用してみて、何らかの違和感を覚えた際は中止し、すぐに医師や薬剤師に相談してください。
アスピリンは炎症や発熱の緩和に役立つため、処方薬だけでなく市販薬にも含まれていることが多いです。ただし、稀ではあるものの副作用の心配もあるので、使用する際は医師や薬剤師などの指示に従い、用法・用量を守って正しく使いましょう。