健胃薬には苦味や香りが効能になっているものがあるの?

2019/4/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

胃の調子が悪いときに利用する胃薬のひとつに健胃薬があります。健胃薬の特徴は、胃の調子を整えるために生薬の苦味や香りを活かしているところです。この記事では、健胃薬の種類を中心に解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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健胃薬とは

健胃薬は、健胃剤とも呼ばれる胃腸薬のひとつです。香りや苦味で人間の嗅覚や味覚を刺激して反射的に胃液や唾液を分泌させ、胃の運動や消化を高めることが期待されます。食欲不振や消化不良の症状があるときに使うことが多い薬です。

健胃薬の成分は、主に植物や動物などからとられた健胃生薬(けんいしょうやく)です。成分として使われる健胃生薬の特徴から、香りを利用する芳香性(ほうこうせい)健胃薬と、苦味を利用する苦味(くみ)健胃薬の2種類に分類されます。

苦味健胃薬とは

苦味健胃薬は、苦味のある健胃生薬を主成分としています。健胃生薬の代表的なものとして、以下のようなものがあります。

ゲンチアナ
ゲンチアナはリンドウ科の多年草の植物です。生薬として使われるのは、ゲンチアナの根と根茎を乾燥させたものです。特徴的なにおいがあり、味は甘みのあとに苦味が生じます。胃液や胆汁液といった消化液の分泌を促進します。
センブリ
センブリはリンドウ科の植物です。生薬として使われるのは、開花している時期の花、葉、茎、根のすべてを乾燥させたものです。苦味が特徴的で、当薬(とうやく)とも呼ばれています。胃の調子を良くするほか、下痢や腹痛の改善も期待されます。
オウバク(黄柏)
オウバクは、ミカン科キハダ属の落葉高木樹であるキハダの樹皮です。ベルベリンという成分が健胃に良いとされており、苦味が強くあります。
オウレン
オウレンは、キンポウゲ科オウレン属に属する植物です。生薬に使われるのは、細かな根を除いた根茎を乾燥させたものです。においは弱いですが、極めて苦いという特徴があります。

芳香性健胃薬とは

香りを利用する芳香性健胃薬は、薬として配合されているほか、料理や化粧品など、身近な生活の中で取り入れられているものも多くあります。代表的なものとして、以下のようなものがあります。

ケイヒ
ケイヒは、クスノキ科トンキニッケイやその他同族の植物の樹皮を乾燥したものです。一般ではニッキ、シナモンとも呼ばれ、洋菓子、和菓子で用いられることがあります。
ハッカ
ハッカは、ミントとしても知られる植物です。スーッとする清涼感のある香りが特徴で、薬だけではなく、生のままや乾燥させた葉を使ったハーブティや、食品や化粧品、入浴剤などにも利用されます。
サンショウ
生薬としては、サンショウ(山椒)の実から種をできるだけ除いたものを使います。舌がしびれるような辛味があります。
ウイキョウ
セリ科の多年草で、フェンネルとしても知られます。生薬としては果実を乾燥させて使います。独特の香りがあります。
チョウジ
熱帯地域に育つ常緑樹であるフトモモ科チョウジノキから、開花直前のつぼみを乾燥させて使います。クローブとしても知られます。
チンピ
ウンシュウミカン(温州みかん)の果皮を乾燥させたものです。
ウコン
生姜の仲間であるウコンの根茎を乾燥させます。ターメリックとも呼ばれ、カレーや、黄色いたくあん漬けを作るときの着色に使うこともあります。

おわりに:健胃薬は、生薬の苦味や香りを活かした薬です

健胃薬は、主成分として生薬を含むもので、香りを特徴とする芳香性健胃薬と、苦味を特徴とする苦味性健胃薬があります。苦味や香りといった人間の感覚への刺激が胃腸のはたらきを高め、健やかに過ごせることが期待されます。特に芳香性生薬は、料理や化粧品などで使われているものもあり、身近な生活にも取り入れられている成分が含まれています。

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