気管支喘息の長期管理薬と発作治療薬にはどんな違いがあるの?

2019/6/4

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

気管支喘息などの治療に使われる薬には、大きく分けて長期管理薬と発作治療薬の2種類があります。この記事では、この2種類の違いとともに、それぞれの薬についてご紹介します。

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長期管理薬と発作治療薬の違いは?

長期管理薬は、慢性的な気道の炎症を抑えて発作が起こらないようにする薬で、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などがあります。長期管理薬は、長期にわたって使うことでより効果が得られる薬のため、使用後すぐに症状が治まったとしても、医師の指示通りに使い続けることが必要です。

吸入ステロイド薬
気管支喘息の原因である気道の炎症を抑えて発作を予防する薬です。
気管支拡張薬
発作が起きたときに使われる薬です。長時間作用性抗コリン薬や長時間作用性β刺激薬などがありますが、症状に応じて選択されます。

一方、発作治療薬は発作が起きたときに気管支を拡げるために使われるもので、即効性があります。吸入薬や飲み薬など剤形はさまざまですが、比較的早く効果が期待できるのが吸入薬といわれています。ただし、気道の炎症を抑えるはたらきはないため、根本的に喘息を治療することはできないと言われています。そのため、炎症が治まらない限り、再度発作が起こると考えられます。

また、発作治療薬だけ使っていると喘息が悪化する恐れがあります。長期管理薬で炎症を抑え、毎日の積み重ねで症状を改善に導きましょう。

長期管理薬にはどんなものがあるの?

主な長期管理薬として、以下のようなものが挙げられます。

副腎皮質ステロイド薬

吸入ステロイド薬と経口ステロイド薬に大別できます。前者は喘息治療の中心となる薬で、吸入し、肺に直接薬を行きわたらせることによって炎症を抑える効果が期待できます。後者は全身にはたらき、炎症を抑えるはたらきがありますが、副作用に気をつける必要があります。

長時間作用性抗コリン薬(吸入薬)

アセチルコリンという気管支の収縮に関係している物質を阻害し、気管支の収縮を抑える効果が期待できます。

長時間作用性β2刺激薬(吸入薬、貼り薬など)

気管支の拡張や収縮に関わっている「β2受容体」を刺激し、気管支を拡張させる働きがあります。基本的に、吸入ステロイド薬と併用する薬です。長時間作用性β2刺激薬配合剤の吸入ステロイド薬(吸入薬)

気管支を拡張させ、炎症を抑える効果が期待できます。

ロイコトリエン受容体拮抗薬(飲み薬)

気管支を収縮させるロイコトリエンという物質を阻害する働きがあります。

テオフィリン徐放製剤(飲み薬)

ゆっくりと時間をかけて溶け、気管支を拡張させる働きがあります。また、炎症を抑える効果も期待できます。

発作治療薬にはどんなものがある?

主な発作治療薬には、以下のようなものがあります。

短時間作用性β2刺激薬(飲み薬、吸入薬)

交感神経を刺激することによって、気管支を拡張させる働きがあります。

長期管理薬と発作治療薬を適切に使おう

誤って使う例として、テオフィリン製剤を発作治療薬として服用する場合があります。気管支を拡張させ、炎症を抑えるはたらきをもつテオフィリン製剤は、服用後に気管支を拡張させる効果はすぐには得られないといわれています。ちなみに、ガイドラインでは、テオフィリン製剤は長期管理薬と位置付けられています。

また、β2刺激薬の貼付薬を発作治療薬として使用する場合もあります。「内服」「吸入」「貼付」の3種類あるβ2刺激薬のうち、発作治療薬として使われているのは、内服薬と吸入薬です。貼付薬は使用開始から効果を発揮するまで4~5時間程度かかるといわれるため、ガイドラインでも長期管理薬の一つとして扱われています。

おわりに:長期管理薬と発作治療薬は、それぞれの用途に応じて正しく使おう

長期管理薬と発作治療薬は、それぞれ使用目的が異なるものです。似たような名前の薬でも、剤形によって違うタイプの薬である場合もあります。医師の指導にしたがって正しく薬を使用し、症状を改善させましょう。

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