速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)ってどんな薬?

2019/6/12

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)とは、名前の通り速効でインスリンの分泌を促す薬剤です。インスリンとは血液中の糖分濃度(血糖値)を下げる働きをするホルモンですから、主に血糖値を下げる目的で使われる薬剤です。

グリニド薬とは、体内でどのようにインスリンの分泌を促すのでしょうか?また、副作用や、服用する上での注意点にはどのようなものがあるのでしょうか?

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)とは

グリニド薬は、糖尿病の患者さんに使われる薬剤の1つです。糖尿病は血液中の糖分濃度(血糖値)が異常に高い状態が続いてしまう疾患で、インスリンというホルモンの分泌が少ない(インスリン分泌低下)か、ホルモンが効きにくくなってしまっている(インスリン抵抗性)状態のどちらかであると考えられています。

また、糖尿病には大きく分けて「自己免疫疾患の一種である1型」と「遺伝要因または環境要因による2型」の2種類があり、インスリン分泌低下または抵抗性は「2型糖尿病」の特徴です。1型糖尿病では、インスリンが産生・分泌される膵臓の「β細胞」という細胞が自分の免疫機能によって破壊されてしまうため、インスリンを作ることも放出することもできなくなってしまうのです(※原因不明のこともあります)。

日本では、糖尿病全体のうち1型糖尿病の患者さんは約5%、2型糖尿病の患者さんは約95%と、圧倒的に2型の糖尿病の発症率が高くなっています。グリニド薬はインスリンの分泌を増やす働きをする薬剤であるため、そもそもインスリンが産生・分泌できない1型糖尿病の人には効きません。また、2型糖尿病のうちでも、インスリン分泌低下タイプの人に効果があります

日本語名にもあるように、グリニド薬はその速効性が大きな特徴です。服用してからすぐに効果が現れるため、食後高血糖の改善に用いられます。このため、食事の直前、一般的にはおよそ10分前に服用します。

食後に血糖値が上がるのは当然の体の仕組みですが、食後高血糖の方の場合、血糖値が上がったあと、なかなか下がらなくなります。高血糖の状態が長く続くと、動脈硬化などの合併症を引き起こすため、グリニド薬で糖尿病を発症していない方と同じように食後の高血糖をすばやく下げることが大切です。

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)はどうやって血糖値を下げるの?

インスリンは、膵臓のβ細胞という部位で産生・分泌されています。つまり、グリニド薬は服用すると速やかにこの細胞に働きかけ、インスリンの分泌を促し、食後の高血糖をすばやく下げるのです。

同じような仕組みで膵臓のβ細胞に働きかける薬剤に「スルホニル尿素(SU)薬」がありますが、グリニド薬はスルホニル尿素薬よりもすばやく作用し、すばやく効果が消えるという特徴があります。これは、グリニド薬の方がスルホニル尿素薬よりも速く体内に吸収され、速く体内から消えるという特性によるものです。

主な速効型インスリン分泌薬(グリニド薬)の治療薬は?

グリニド薬には、有効成分ごとに大きく分けて以下の3種類があります。

ナテグリニド(商品名:ファスティック、スターシス)
食後2時間の血糖値、HbA1c値も低下させる作用がある
症状に合わせ、服用量を1回30mg~1回120mgまで調節できる
ミチグリニドカルシウム水和物(商品名:グルファスト)
ナテグリニドよりも効果が強く、レパグリニドよりもマイルド
α-グルコシダーゼ阻害薬との配合剤(グルベス配合錠)がある
レパグリニド(商品名:シュアポスト)
食後の血糖値だけでなく、HbA1c値も低下させる作用がある
胆汁排泄のため、腎障害のある患者さんでも使える
他のグリニド薬よりも作用時間が長い

ナテグリニドは最も効果が穏やかなタイプで、症状に合わせて服用量も大きく変更できる点がメリットですが、反面、腎臓から排出されるため、透析を受けている人など、腎機能に重篤な障害がある場合は低血糖を引き起こすため服用できません。

ミチグリニドカルシウム水和物もナテグリニドと同様に腎臓からの排出ですが、ナテグリニドほど腎機能の低下によって低血糖になるリスクは少なく、慢性腎不全などの腎機能障害がある場合、他の薬剤と同様に慎重投与とすれば使用できます

レパグリニドは、唯一、胆汁中に排出されるタイプであるため、腎機能に関係なく使用できます。また、他のグリニド薬と比較して作用時間が長く、そのため食後だけでなく数時間にわたって低血糖状態が続く可能性があります。食後しばらく経ってから低血糖の症状が現れた時は、砂糖やブドウ糖などの糖分を摂取しましょう。

服用中にみられる副作用や、服用時の注意点は?

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)を服用する際の副作用や注意点は以下の通りです。

低血糖
冷や汗、悪心、手足の震え、ふらつき、脱力感など
高所の作業、自動車の運転などの精密かつ危険性の高い作業を行う際は充分に注意する
吸収の速い砂糖、ブドウ糖などを摂取しても症状が改善しない場合は医師や薬剤師に相談する
肝機能障害
倦怠感、食欲不振、黄疸など
頻度は非常に稀

グリニド薬は、その速効性が大きなメリットですが、反面、食事よりも30分以上前に先に服用してしまった場合、食事を始める前に効果が発揮されてしまい、低血糖状態になってしまうことがあります。そのため、必ず食事の直前に飲むように気をつけましょう。

また、グリニド薬とスルホニル尿素(SU)薬はほとんど同じ仕組みで作用するため、2つの薬剤を同時に服用した場合の相乗効果や安全性が確立されておらず、原則として併用することはありません。

おわりに:速効型インスリン分泌薬(グリニド薬)はすばやくインスリンの分泌を促します

速攻型インスリン分泌薬(グリニド薬)は、その名称通りすばやく作用し、すばやく体内から消えることが特徴です。膵臓のβ細胞に働きかけてインスリンの分泌を促し、血糖値を下げる働きを持っています。食事の10分程度前に服用すれば食後の高血糖をすばやく低下させる働きがありますが、この速効性によって、食事の30分以上前に摂取すると食事前に低血糖になる可能性があります。服用のタイミングには十分注意しましょう。

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