チアゾリジン薬の特徴は?現在処方されている薬は?

2019/6/4

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

チアゾリジン薬は糖尿病の治療に使われる薬剤の一種です。糖尿病とは、血糖値(血液中の糖分の濃度)が高くなってしまい、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高くなっている状態です。チアゾリジン薬はこの血糖値を下げる役割があります。

チアゾリジン薬はどのように血糖値を下げるのでしょうか?また、現在処方されている薬にはどんなものがあるのでしょうか?

チアゾリジン薬にはどんな特徴があるの?

チアゾリジン薬は糖尿病の治療に使われる薬剤ですが、具体的にはインスリンを効きやすくする作用があります。糖尿病のうち、2型糖尿病という状態にのみ効く薬剤で、インスリンという血糖値を下げる作用のあるホルモンが効きにくくなった細胞に働きかけ、インスリンの効果が十分発揮されるようにします

糖尿病には1型と2型の2つがあり、1型はすい臓にある「β細胞」という、インスリンを産生・分泌する細胞が壊れてしまってインスリンが作られず、高血糖になってしまっている状態です。1型糖尿病の患者さんではそもそも体内にインスリンがないため、チアゾリジン薬で対処することはできません

2型糖尿病はインスリンの分泌が弱まっているタイプ(インスリン分泌低下)とインスリンが効きにくくなっているタイプ(インスリン抵抗性)の2つがあり、チアゾリジン薬はインスリンを効きやすくするための薬剤ですから、主に後者のタイプに対して使われます

チアゾリジン薬は、他の薬剤と併用せず単品で使っている間は低血糖を引き起こすリスクが低く、比較的安全に使用できることも特徴です。

チアゾリジン薬はどうやって血糖値を下げるの?

体の中には、脂肪細胞があります。脂肪細胞は、内部の「細胞質」という部分に「脂肪滴」という脂肪のかたまりを持っていて、単胞性脂肪細胞(白色脂肪細胞)と多胞性脂肪細胞(褐色脂肪細胞)があります。

体内にある脂肪細胞のほとんどが白色脂肪細胞で、脂肪(中性脂肪)を蓄える役割をしています。褐色脂肪細胞は首や肩甲骨の周りなどごく一部に存在し、脂肪を燃焼して熱を出す役割をしています。

チアゾリジン薬が働くのは主に白色脂肪細胞の方で、脂肪を蓄えて肥大化した脂肪細胞を減らし、まだ脂肪を蓄えていない小型の脂肪細胞を新たに分化させ、「大きな脂肪細胞を小さな脂肪細胞に置き換える」という役割をします。これは、肥大化した脂肪細胞がインスリンに対して抵抗性をもたらす「TNF-α、FFA、Resistin」などの因子を出す性質があるからです。

これらの因子を出しにくくさせてインスリンが正常に働きやすくするとともに、ブドウ糖を取り込む余地のある小型の細胞に置き換えて血中を漂っているブドウ糖を細胞内に回収しやすくし、血糖値を下げているのです。

さらに、筋肉組織ではグリコーゲンの合成や解糖作用(ブドウ糖を分解する作用)が行われているため、これらの働きを促進して血糖値の低下を促す効果もあります。また、肝臓では糖の産生と取り込みの両方を行っているため、産生を抑え、取り込みを促して血糖値を低下させる作用もあります。

現時点で処方されているチアゾリジン薬は?

2019年3月現在、日本で処方されているチアゾリジン薬は「ピオグリタゾン塩酸塩(商品名:アクトス)」と、そのジェネリック医薬品のみです。

ピオグリタゾン塩酸塩は、インスリンが効きにくくなってしまった2型糖尿病の人に対して使われ、インスリンが効きやすい状態に改善する作用がメインのため、「インスリン抵抗性改善薬」と呼ばれています。主に以下のような人に対して使われます。

  • 肥満タイプで、インスリンが効きづらくなっている人
  • 食事療法・運動療法はきちんとできているのにインスリン抵抗性の高血糖が続いている人
  • 既にスルホニル尿素(SU)薬などを服用している人(併用薬として)

チアゾリジン薬は肥大化した脂肪細胞を小型の脂肪細胞に置き換える働きがあることから、肥満タイプの人に対して効果的とされていますが、肥満でない人に使用しても効果を発揮できる場合もあります。

また、作用が異なる別の系統の薬剤と併用することもあります。例に挙げたスルホニル尿素(SU)薬のほか、α-グルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド系のメトホルミンなどと併用されることがあります

チアゾリジン薬でみられる副作用は?

チアゾリジン薬を服用中の場合、以下のような副作用に注意しましょう。

むくみ(浮腫)
手足のむくみ、急激な体重増加、息苦しさ、動悸など
女性で約10%、インスリン療法との併用で約30%の人が発症している
もともと心臓が弱い人では、心臓に負担がかかり心不全などを引き起こすこともある
低血糖
震え、寒気、動悸、冷や汗、強い空腹感、脱力感、目のちらつき、イライラなど
単独では稀だが、他の血糖降下薬と併用している場合に注意が必要
すぐに砂糖やブドウ糖を摂取するとほとんどの場合はおさまる
肝機能障害
疲労感、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、黄疸など
頻度はまれ
横紋筋融解症
手足のしびれ・痙攣、筋力低下、筋肉痛、力が入らないなど
頻度はまれ
間質性肺炎
息苦しさ、咳、少しの動作での息切れ、発熱など
頻度はまれ
膀胱がん
血尿、頻尿、排尿痛など
服用期間が2年以上になると、膀胱がんの発生リスクが1.4倍に増えるという報告がある

チアゾリジン薬でよく見られる副作用として、「浮腫(むくみ)」があります。チアゾリジン薬は尿細管でナトリウムと水の再吸収を促進する作用があるため、体内に水が溜まりやすくなるのです。そのため、過去に心不全を発症して治療したことがある人には処方できません。また、心臓が弱まっている高齢者とむくみやすい女性は特に注意が必要です。

また、チアゾリジン薬を単独で使用している場合は低血糖の心配はほとんどありませんが、他の血糖降下薬と併用している場合は、血糖値が下がりすぎる(およそ50mg/dL以下)可能性があります。重篤化すると気が遠くなる、痙攣を起こす、意識がなくなるなどの症状が出る可能性もありますので、すぐに糖分を補給しましょう。

頻度は稀ながら症状の重い副作用としては、「肝機能障害」「横紋筋融解症」「間質性肺炎」などが挙げられます。横紋筋融解症とは、筋肉を構成している骨格筋細胞が融けたり壊死することで血中に筋肉の成分が放出され、腎臓に大きな負担をかけてしまう症状のことです。筋力が低下したり筋肉痛が起こるだけでなく、急性の腎障害を起こすこともありますので注意しましょう。

膀胱がんに関しては、アメリカでの試験によると非服用者で1万人中約7人である膀胱がんの発生リスクが服用者では1万人中約8人に増加するという報告があります。増加の割合が非常にわずかであるため、処方を制限するかどうかについては見解が分かれており、アメリカやヨーロッパ全体では注意喚起のみとされていますが、フランスやドイツなど一部の国では処方が制限されています。

日本では「膀胱がん治療中の服用は避ける」という見解になっています。

おわりに:チアゾリジン薬はインスリンを効きやすくするための薬剤です

チアゾリジン薬は、インスリンそのものの分泌を増やすのではなく、インスリンを効きやすくすることで血糖値を下げる薬剤です。そのため、単独で使用する場合は低血糖の心配がほとんどなく、比較的安全に使えることが特徴です。

しかし、一方でむくみから心不全に至る副作用が起こる可能性もあり、特にむくみやすい女性の場合や心臓の弱まっている高齢者の場合は慎重に服用する必要があります。

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