スイッチOTCの利用で申請できる「セルフメディケーション税制」とは

2019/5/8

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「セルフメディケーション税制」をご存知ですか?1年間に特定の医薬品を一定額以上購入している場合、所定の条件を満たせば申請することができる制度です。この記事では、この制度を利用するための条件とともに、医療費控除と併用できるかどうかを解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

スイッチOTC医薬品ってどんなもの?

スイッチOTC医薬品は、医師の処方箋がないと手に入れることができない「医療用医薬品」で用いられている成分が、医師の処方箋なしでも手に入る薬品としてスイッチ(転換)された薬品です。代表的なスイッチOTC医薬品として、痛み止めのイブプロフェンや消炎剤のインドメタシンなどがあります。

ちなみに、スイッチOTC医薬品の「OTC」とはOver The Counterの略で、医師の処方箋がなくても、カウンター越しに販売者などの助言を受けた上で購入できる医薬品のことです。

スイッチOTC医薬品の利用で申請できる「セルフメディケーション税制」とは

「セルフメディケーション税制」とは、年間のスイッチOTC医薬品の購入費が高額になったとき、一定の条件を満たせば医療費控除の特例として所得控除を受けられる制度です。医療費控除は、医療費が一定の額を超えると確定申告の際に還付金を受け取ることができる制度ですが、「セルフメディケーション税制」でもこれと同じメリットを受けることができます。

「セルフメディケーション税制」を申請するためには、以下のような条件があります。

  1. スイッチOTC医薬品を1月から12月までの1年間に、に12,000円以上購入していること
    ※医療費控除と同じように、申告する人と扶養している家族、それぞれの購入費用を足すことができます。
  2. 所得税、住民税を納めていること
  3. 下記の健診などのいずれかを受けていて、自身の健康増進や病気の予防に取り組んでいること
    • 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)
    • 予防接種
    • 定期健康診断(事業主健診)
    • 健康診査
    • がん検診

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品は、厚生労働省のホームページで紹介されています。最新情報はこちらで確認できますので、定期的に確認するのがおすすめです。

セルフメディケーション税制と医療費控除は併用できる?

「セルフメディケーション制度」は、そもそも医療費控除の特例の中のひとつであるため、従来の医療費控除制度とは併用できません。そのため、医療費控除を受けるか、「セルフメディケーション税制」で控除を受けるかは、申告者の所得額やかかった医療費を基に、どちらかを選択することになります。

セルフメディケーション税制を申請するために必要な書類は?

「セルフメディケーション税制」の申請には、必要な書類があります。また、どの健診を受けたかによって提出書類が異なることにも注意が必要です。

特定健康診査(メタボ検診)

医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法及び私立学校教職員共済法など)や、健康増進法の規定に基づいて、健康の保持増進のために必要な事業として行われる健康診査です。必要書類は以下のいずれかです。

  • 「特定健康診査」または保険者名の記載がある場合は結果通知表(コピー可)
  • 「定期健康診断」または勤務先名・保険者名の記載がない場合は証明依頼書

厚生労働省のWebサイトにある「証明依頼書」をダウンロードして記入後、保険者に特定健康診査である証明をもらって提出します。

予防接種

「予防接種法に基づき行われる予防接種」や、インフルエンザの予防接種などが該当します。「予防接種法に基づき行われる予防接種」として必要なのは、確定申告をする方の証明です。

必要書類は以下のいずれかです。

  • 領収書(原本)
  • 予防接種済証(原本)

定期健康診断(事業主健診)

年に1度、事業主の責任のもとで雇用する労働者に対して実施しなければならない健康診断です。会社勤めをされている方が申請する場合に必要な書類となります。以下のいずれかを用意してください。

  • 「定期健康診査」または保険者名の記載がある場合は結果通知表(コピー可)
  • 「定期健康診断」または勤務先名・保険者名の記載がない場合は証明依頼書

厚生労働省のWebサイトに掲載の「証明依頼書」をダウンロードし、保険者に特定健康診査である証明をしてもらって提出します。

健康診査

健康診査の種類によって分類されます。

保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)

健康増進法などの規定に基づいて行われる健康診査です。人間ドックなどの健康診査、ほか、保険者が実施する骨粗鬆症検診やがん検診などの健康診査などが該当します。

上記以外にも、特定保健指導を終了した場合や、定期の予防接種(高齢者の肺炎球菌感染症の定期接種)を受けた場合が「一定の取組」に該当します。申請に必要な書類は以下のどちらかです。

  • 保険者名の記載がある場合は結果通知表(コピー可)
  • 勤務先名・保険者名の記載がない場合は証明依頼書

市区町村が健康増進事業として実施する健康診査(生活保護受給者等を対象とする健康診査)

  • 保険者名の記載がある場合は結果通知表(コピー可)
  • 保険者名の記載がない場合は.証明依頼書

どちらの場合も、厚生労働省のWebサイトにある「証明依頼書」に、保険者に特定健康診査である証明をもらったものを提出します。

がん検診

健康増進法の規定に基づく健康増進事業として市町村が実施するがん検診です。
必要書類は以下のいずれかです

  • 領収書(原本)
  • 結果通知表(コピー可)

領収書

対象のスイッチOTC医薬品を購入したことを証明するために、領収書が必要です。領収書がなければ、購入した医薬品の名前と購入金額を記載した明細書を作成する必要があります。明細書を添付すれば領収書の提出は不要になりますが、問い合わせが来たときにそなえて、5年間は手元に保管しておく必要があります。

領収書は、領収書を発行する店舗によって形式が異なることが多いですが、対象商品には★がついていたり、通常の商品と分けて記載されていたりと、明確に区別できるようになっています。もし、手書きの領収書を発行してもらう際は、該当商品すべてを書いてもらうようにしましょう。

おわりに:スイッチOTC医薬品の購入が多いときは、「セルフメディケーション制度」を利用できないか検討を

スイッチOTC医薬品は、本来、医師の処方箋がないと手に入れることができない成分が入った薬が、医師の処方箋なしでも手に入るOTC薬品としてスイッチ(転換)された薬品です。OTC医薬品の購入が多く、年間で費用が高額になったとき、一定の条件を満たせば医療費控除の特例として所得控除の対象となる「セルフメディケーション税制」を利用することができます。ただし、セルフメディケーション税制と医療費控除を一緒に申請することはできないので、申請する際はどちらを選ぶかを選択してください。

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