免疫刺激薬「インターロイキン-2(IL-2)製剤」の特徴は?

2019/5/30

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

インターロイキン-2(IL-2)製剤は、「免疫刺激薬」と呼ばれている通り、免疫に関係している細胞を活性化して免疫機能を高める働きのある薬剤です。主に肉腫やがんなどの治療に使われます。
インターロイキン-2(IL-2)製剤は、体内でどのように働くのでしょうか?また、一般的に使われるインターロイキン-2(IL-2)製剤や、使用中に起こりうる副作用についてもご紹介します。

インターロイキン-2(IL-2)製剤とは

インターロイキン-2(IL-2)とは、サイトカインと呼ばれる物質の一種です。サイトカインは細胞から分泌されるタンパク質で、ある細胞がある細胞に対して何らかの作用を及ぼす際に産生されます。インターロイキン-2(IL-2)は、主にウイルスや細菌などの異物が体内に入ってきたときに免疫細胞の「T細胞」が反応して産生されるサイトカインです。

分泌されたインターロイキン-2(IL-2)は、キラーT細胞(異物を積極的に排除する)の分化を促進したり、B細胞での抗体産生を誘導したり、NK細胞を活性化したり、と多くの免疫機能の調節に関わっています。実際に、免疫疾患や骨髄増殖性疾患の患者さんではインターロイキン-2(IL-2)をうまく作れないなどの症状が出ていることがわかっています。

これらT細胞やNK細胞は、抗腫瘍効果という腫瘍を小さくする、排除するという作用にも大きく関わっています。肉腫やがんでは必要以上に増殖した細胞が悪性腫瘍となり、正常な細胞を圧迫したり破壊したりしながら転移を繰り返して病状を悪化させていきます。そこで、インターロイキン-2(IL-2)の作用によって、細胞に対する攻撃力が高いキラーT細胞やNK細胞(ナチュラルキラー細胞)などを活性化することで、悪性腫瘍の増殖を抑えたり排除することができます。

さらに、リンパ球のうちB細胞やマクロファージにも働きかけ、これらの免疫細胞の活動を活発にして免疫機能を強化します。これらの作用から「免疫療法」とも呼ばれていて、インターフェロンやインターロイキンなど、サイトカイン系の製剤はその開発・適応時期から、免疫療法の第2世代とも分類されることがあります。

インターロイキン-2(IL-2)製剤にはどんなものがある?

一般的によく使われているインターロイキン-2(IL-2)製剤は、「テセロイキン(商品名:イムネース®︎)」です。遺伝子組換えの注射剤で、血管肉腫・腎細胞がんに適応となります。ここで言う遺伝子組換え製剤とは、ヒトの脾臓のリンパ球から抽出したインターロイキン-2を原料に、大腸菌内で工業的に産生した成分のことを指します。

治療の内容や全身の病状によっては、前述の肉腫やがんであっても適応とならない場合や、がん以外の治療にも使われる場合があります。一般的にインターロイキン-2(IL-2)製剤は治療のメインとなる薬剤(第一選択の薬剤)として使われるよりも、メインの薬剤で効果がなかった際に第二選択の薬剤として使われることが多いです。

以前使われていた薬剤「セルモロイキン(商品名:セロイク®︎)」って?

インターロイキン-2(IL-2)製剤には、少し前まで「セルモロイキン(商品名:セロイク®︎)」という薬剤も使われていました。こちらもテセロイキン(商品名:イムネース®︎)と同様、大腸菌内で遺伝子組み換えによって産生される成分で、血管肉腫に対して適応となる薬剤です。注射剤の一種のみが販売されていましたが、2017年から販売が中止されています

2019年3月に添付文書が改定され、「遺伝性果糖不耐症の患者に対する慎重投与」の項目が追加されています。セロイクに添加されている「D-ソルビトール」という糖アルコールの一種が体内で代謝された際、できた果糖が正常に代謝されず、低血糖や肝機能障害・腎不全などを引き起こす可能性があるという項目です。

これは2017年10月に欧州医薬品庁がガイドラインを変更したことを受けて変更されたもので、ソルビトールまたは果糖を含む静脈注射タイプの製剤全てにこの改訂を行うようにとの厚生労働省の指示によります。セルモロイキン自身に対する副作用ではありません。

使用中に起こりうる副作用は?

インターロイキン-2製剤を使用中に起こりうる副作用には、以下のようなものがあります。

精神神経系症状
抑うつ状態、めまい、ふらつきなど
全身症状
発熱、悪寒、倦怠感、頭痛など
消化器症状
食欲不振、吐き気、嘔吐など
体液貯留
むくみ(浮腫)、肺水腫、胸水、腹水など
心不全
体液の貯留によるうっ血性心不全など
動くと息苦しい、疲れやすくなった、足がむくむ、急激な体重増加などの症状が見られる
感染症
好中球機能抑制などにより、感染症を引き起こしやすくなる

全体として副作用が起こる確率は7〜8割と非常に高いですが、頻繁に起こる副作用は発熱や悪寒・戦慄、倦怠感、食欲不振などであり、悪心・嘔吐で2割程度、頭痛や下痢、むくみや水分貯留などはわずか0.8%程度であることがわかっています。血液検査によれば、白血球の一つで免疫機を持つ好中球が減少する副作用も0.8%で認められており、好中球が減少すると免疫力が低下することから感染症にかかりやすくなります。

免疫細胞の増殖を促進し、働きを強めるという作用から、投与量を増やすほどがんに対しても効果が得られる特性があります。しかし、投与量を多くすればそれだけ副作用のリスクも強さも増加するため、実際に高用量で使われることはあまりなく、低用量による治療法も行われているほどです。腎細胞がんにおいては、低用量でも高用量に匹敵するほどの抗腫瘍効果が認められた症例が報告されています。

おわりに:インターロイキン-2(IL-2)製剤は免疫機能を活性化する

インターロイキン-2(IL-2)とは、細胞どうしの連絡を担うサイトカインと呼ばれる物質の一つで、免疫機能を活性化する作用があります。主に免疫機能の要であるT細胞やB細胞、NK細胞などを活性化し、腫瘍細胞を攻撃するのを助ける働きをする成分です。

しかし、一方で体内に侵入した細菌などを最初に攻撃する「好中球」を減少させる副作用が出ることもありますので、感染症には十分注意して使わなくてはなりません。

この記事に含まれるキーワード

自己免疫疾患(26) 免疫抑制薬(6) インターロイキン(2)