アルキル化剤の特徴と予想される副作用について

2019/6/26

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

アルキル化剤とは、有効成分が分子構造の一部に「アルキル基」という部分を持っている薬剤の総称です。これらアルキル化剤はいずれも抗がん剤の一種で、がん細胞の増殖を抑える作用があります。

アルキル化剤の詳しい働きとは?そして、代表的なアルキル化剤とその副作用にはどのようなものがあるのでしょうか?

アルキル化剤の働きは?

アルキル化剤とは、抗がん剤の一種で、分子の作りに「アルキル基」という部位を持っている薬剤です。細胞は増殖するためにDNAを複製する必要がありますが、アルキル基はこのDNAに作用し、がん細胞がDNAを複製しようとするのを阻害したり、DNA本体を破壊したりして抗がん作用をもたらします

私たちの体の細胞は、成長が必要な時や怪我から回復するためには増えますが、必要以上には増えないように調節されています。しかし、がん細胞では、普通の細胞に何らかの異常が起こり、この調節機能が壊れてどんどん増殖を続けます。すると、増えすぎたがん細胞のかたまりが周囲の正常な細胞を圧迫したり傷つけたり、最終的に破壊したりします。

さらに、がん細胞が体液や血流に乗って他の場所に移動することを転移と言い、転移先で増殖を始めることもあります。

がん細胞だけでなく、すべての細胞が増殖するためにはDNAを複製する必要があります。アルキル基はがん細胞のDNAに結合して2本鎖の間を結びつけてしまい、DNAを複製するのを阻害します。さらに、アルキル基が結合した状態で細胞が分裂、増殖しようとするとDNAが破壊され、細胞が死に至ります。このような抗腫瘍効果によって、アルキル化剤は「殺細胞性抗がん剤」と呼ばれています。

アルキル化剤は化学構造や作用の違いから「ナイトロジェンマスタード類(シクロホスファミドなど)」や「ニトロソウレア類(ニムスチンなど)」に分けられます。

代表的なアルキル化剤にはどんなものがある?

代表的なアルキル化剤には、以下のようなものがあります。

シクロホスファミド製剤(商品名:エンドキサン®︎)
  • 乳がんのAC療法、悪性リンパ腫のR-CHOP療法など、多くのがんにおける化学療法で使われる
  • DNAの合成を阻害し免疫細胞の働きを抑えるため、免疫抑制剤として使われることも
  • 錠剤、注射剤など病態によって使い分けられる
ダカルバジン製剤(商品名:ダカルバジン®︎)
  • 悪性黒色腫(メラノーマ)、ホジキンリンパ腫などの治療に使われる
  • 吐き気・嘔吐が顕著なため、制吐薬としてNK1受容体拮抗薬などを併用することが多い
テモゾロミド製剤(商品名:テモダール®︎)
  • 悪性神経膠腫、ユーイング肉腫などの治療に使われる
  • がん細胞のDNAを損傷し、自滅を誘導することによって細胞増殖抑制作用をもたらす
  • 内服薬、注射剤があり病態や嚥下能力によって使い分けられる
  • 食事が高脂肪食であると効果が発揮しづらくなることがあるため、空腹時の服用が望ましい

AC療法やR-CHOP療法は、がんに対する化学療法のことで、使用する抗がん剤の頭文字を取って「AC」や「R-CHOP」などと呼ばれており、「C」が「シクロホスファミド=Cyclophosphamide」を表します。シクロホスファミドは乳がんや悪性リンパ腫のほか、多発性骨髄腫、急性白血病など各種のがんの化学療法に使われます。また、治療抵抗性のリウマチ性疾患に対し免疫抑制剤として使われることもあります。

メラノーマとは、皮膚の色に関係するメラニンという色素を作る細胞「メラノサイト」ががん化した腫瘍と考えられています。がん細胞が大量にメラニン色素を発生させるため、ほくろのように黒くなることが多く、黒色腫と呼ばれます。ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫の一種で、リンパ節が腫れたりしこりができたりします。

これらのがんを治療するダカルバジンはシクロホスファミドと同様、DNAに強く結合して複製を阻害する薬剤です。使用成績調査によると副作用の発現率は80%にも及び、そのうち8割近くが吐き気や嘔吐で非常に起こりやすいと考えられるため、吐き気を抑える「NK1受容体拮抗薬」などを併用することが推奨されています。

ユーイング肉腫とは、小児や若年者の骨や軟部組織に発生する悪性腫瘍のことで、発症年齢の半数が10〜20歳であり、70%は20歳までに発症し、30歳以上で発症することはごく稀である、というように非常に若年層に偏った発症が見られます。DNAを傷つけてがん細胞を自滅させるテモゾロミドと、DNAの合成を妨げるイリノテカンという薬剤を併用して治療します

想定される副作用と、使用中の注意点

アルキル化剤を投与中に考えられる副作用は以下のようになっています。

消化器症状
吐き気・嘔吐・口内炎・腹痛
皮膚症状
脱毛・発疹・痒み
精神神経系症状
頭痛など
肝機能に関する症状
倦怠感・食欲不振・発熱・黄疸など
骨髄の抑制による症状
突然の高熱・寒気・喉の痛み・手足に点状の出血・青あざができやすい・出血しやすいなど

まず、ダカルバジン製剤では先にもご紹介した通り、吐き気・嘔吐の症状が非常に現れやすいという特徴があります。そのため、制吐剤を併用することが推奨されています。もし、制吐剤なしでダカルバジン製剤を始めて吐き気や嘔吐が続く場合はすぐに医師に相談しましょう。

また、肝機能障害など、肝機能に関する症状も見過ごせません。倦怠感や食欲不振、発熱や黄疸などの症状が続いた場合は放置しないようにしましょう。

骨髄の抑制とは、骨髄で産生される白血球や好中球、血小板などが減少する副作用のことです。白血球や好中球が減少すると免疫機能が低下しますから、ウイルスや細菌に感染しやすくなり、突然高熱や寒気に襲われることがあります。また、血小板が減少すると手足に点状の出血が現れたり、出血しやすく止まりにくくなることがあります。

これらの症状が続く場合も、なるべく早く主治医に連絡しましょう。

おわりに:アルキル化剤はがん細胞のDNAに作用して増殖を抑える

アルキル化剤は、がん細胞のDNAに作用することで増殖を抑える働きをする薬剤です。薬剤によって「2本のDNA鎖をつないで複製を阻害する」「DNAそのものを傷つけ自滅させる」の2つの働きがあります。

副作用はダカルバジンの吐き気・嘔吐の他、骨髄抑制による免疫力の低下や出血などが考えられます。これらの副作用が現れた場合はすぐに主治医に相談しましょう。

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