止血薬として使われるビタミンK製剤の特徴は?

2019/5/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「ケガをしたら、血が止まらない……」といった場合に使用されるのが止血薬です。止血薬としてビタミンKを用いた薬がよく使用されているため、使ったことがある人もいるかもしれません。この記事では、止血薬としてのビタミンK製剤の特徴や、その副作用などをご紹介します。

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止血薬としてのビタミンK製剤の働きは

ビタミンKは脂溶性ビタミンです。脂に溶けやすい性質を持ち、血液凝固作用(血液を固める作用)や骨の代謝などに関わる成分です。また、ビタミンKは特に血液を固めるための血液凝固因子(第II、第VII、第IX、第X因子)の生産に必要なビタミンでもあります。そのため、ビタミンKを摂取すると血液凝固因子の生産が促され、血が止まらない状態が改善することがあります。このことから、ビタミンK製剤は乳児ビタミンK欠乏性出血症(新生児などがビタミンKの不足により出血しやすくなる病気)や骨粗しょう症などの治療に用いられます。

ビタミンK製剤にはいくつか種類があり、症状や疾患によって使い分けるのが基本です。

止血薬で使われる主なビタミンK製剤は?

ビタミンK製剤の中でも、止血薬としてよく使われているのはメナテトレノン(商品名:ケイツー®︎)とフィトナジオン(商品名:ケーワン®︎)です。

メナテトレノン(商品名:ケイツー®︎)

乳児ビタミンK欠乏性出血症や分娩時出血などに使われます。

フィトナジオン(商品名:ケーワン®︎)

ビタミンK欠乏性出血や肝障害に伴う低プロトロンビン血症などに使われます。

どちらの薬も、ビタミンK不足による出血を防止します。ビタミンKが不足した場合、血液を固めるのに必要な「プロトロンビン」という蛋白質が生成できなくなります。結果的に血が止まりにくく、出血しやすくなります。特に、肝臓や腸などに病気がある方や、ビタミンKの吸収・代謝が弱い生後直後の赤ちゃんがビタミンK不足を起こしやすいです。赤ちゃんはビタミンK不足を起こすと、出血を起こしやすく、血便が出ることもあるので注意が必要です。

ビタミンK製剤である「ケイツー®︎」と「ケーワン®︎」は、このような場合の治療や予防のために使用される薬です。シロップ剤、カプセル剤、注射剤があり、状況に合わせて使い分けます。

また、他の薬の副作用による出血にも用いることがあります。抗凝血薬であるワーファリンが効きすぎた場合も出血しやすくなるため、ビタミンK製剤を用いて止血します。

強い抗生物質を長期使用するのも注意が必要です。抗生物質によりビタミンKが不足することがあり、その結果ビタミンKが関わる腸内細菌が減り、出血を起こすケースが見られます。この場合も、症状の改善のためビタミンK製剤が用いられることが多いです。

止血薬を服用中に起こる可能性がある副作用は?

ビタミンKを用いた止血薬を服用していると、まれに以下のような副作用が起こる場合があります。

消化器の症状

下痢や吐き気など、消化器に関する症状がみられることがあります。

注意すべき点

ワルファリンカリウム(商品名は主にワーファリン®︎)との併用を避けます。ワルファリンカリウムはビタミンKとは真逆の効果があるからです。ただし、ワルファリンカリウム製剤の投与中に「低トロンビン血症」が起きた場合などは併用することもあります

おわりに:止血薬として使われるビタミンK製剤は血液凝固作用があります

ビタミンK製剤はケガによる出血や、新生児の出血が抑制できない状態などを改善してくれます。切り傷などで血が止まらなくなった場合は、すみやかに病院に行き、診察を受けましょう。

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