過食の原因はストレス?どうすれば食べすぎを防げる?

2019/5/31

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

ついつい食べすぎてしまう「過食」ですが、心身ともに健康な人でもたまの食べ過ぎぐらいはよくあることです。しかし、本人が食べたくないと思っているのに食べてしまったり、過食の後で激しい罪悪感に襲われてしまったりするようなら、ストレスが原因の過食である可能性があります。

なぜストレスが原因で過食が起こるのでしょうか?そして、どうすれば過食を防げるのでしょうか?

つい過食に走ってしまうのはストレスのせい?

過食とは文字通り食べ過ぎのことですが、ダメだとわかっていてもつい過食してしまう原因として以下の2つが考えられます。

無理なダイエットのリバウンド

1日1食、○○しか食べない、などの極端な食事制限を行った結果、途中で挫折し、リバウンドで食欲が抑えられなくなってしまうという現象です。さらに、食欲を抑えられなかったことに罪悪感を感じ、また極端なダイエットを再開し、ストレスが溜まると挫折してリバウンドで暴食を繰り返す、という悪循環に陥ってしまうのです。

精神的なストレス

ストレスは食欲不振になることもありますが、異常に食欲を亢進することもあります。一度に大量の食事を食べたり、一日中食べ続けたりしてしまうのがこの症状です。「ストレス食い」「気晴らし食い」などとも呼ばれ、大量に食べることでストレスを解消しようとしているのです。

食べることでストレスが解消される理由の一つに、甘いものや炭水化物などの糖質が「β-エンドルフィン」という快楽物質(脳内麻薬)の分泌を促進することが挙げられます。すると、糖質を食べると一時的に幸せになれる、という図式がインプットされ、ストレスが溜まるたびに炭水化物や甘いものを食べたくなってしまうのです。

もちろん、甘いものや炭水化物を全く食べてはいけないということではありません。しかし、ストレスが溜まったからとこうしたものをドカ食いするのは根本的な解決になりません。しかも、食べたそのときは一時的に幸せな気分になれますが、その後、ついつい過食してしまったという罪悪感で余計にストレスを感じてしまうことにもつながるのです。

ストレスによる過食は脳の働きが関係するってホント?

ストレスによる過食は、甘いものや炭水化物だけとは限りません。こうした過食には、ストレスに対する脳の働きが関係している場合があります。

まず、ストレスが脳に溜まっていくと、「大脳辺縁系」という部分が興奮し、「ドーパミン」というホルモンが多く分泌されます。ドーパミンは「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」など交感神経を活性化させるホルモンになる前の物質でもあり、「気分が良い」「心地良い」という快感を感じるときに出るとされています。

ドーパミンは、快楽の他に意欲や食欲・性欲、探究心などを司るホルモンでもあります。つまり、ストレスによってドーパミンが放出されると摂食中枢を刺激し、食欲を高めてしまうのです。この作用のため、例えばうつ病で食欲が低下している人などには、ドーパミンを増やす薬剤を投与することもあります。

また、ストレスを感じると体は対抗して「コルチゾール」というホルモンを分泌します。コルチゾールは、ストレスによって低下してしまう代謝作用を促進し、炎症を抑える働きがあるため身体機能を維持するために大切なホルモンでもありますが、同時に脂肪を蓄積しやすくし、食欲を抑制する「レプチン」というホルモンの働きを抑制してしまうのです。

すると、レプチンが正常に満腹中枢を刺激できなくなります。つまり、脳から「もう満腹なので食べるのをやめなさい」という信号が送られなくなり、気が済むまで食べ続けてしまうのです。

ストレスによる過食を防ぐには?

ストレスによる過食を防ぐには、過食だけを抑えようとするのではなく、根本的な原因であるストレスそのものを取り除くことが大切です。ストレスを溜め込まないために、まずは日常生活で以下のようなことに気をつけましょう。

食事以外のストレス解消法を探す
趣味に没頭する、軽い運動を習慣づける、など食事以外のストレス解消を行う
悩みや不安があるときは一人で抱え込まず、身近な人や専門家に相談する
気分転換や質の良い睡眠を心がける
無理なダイエットをしない
極端なダイエットは結局過食を招いてしまうことがある
ダイエットは時間をかけて少しずつ行うことを心がける
健康的な食生活を送る
がつがつと大量に食べず、少量ずつよく噛んで食べる
1日2食など不規則にならないよう、1日3食をできるだけ規則正しく摂る

まず、食事以外にも楽しめることやリラックスできることを探し、食事以外のストレス解消法を見つけましょう。ストレスにつながる悩みや不安があるときは一人で抱え込もうとせず、身近な人やカウンセラーなどに相談するのもおすすめです。

また、極端なダイエットを避けることも大切です。食べる量を異常に減らす、1種類しか食べない、といった極端なダイエットは栄養が偏り、ストレスも溜まります。すると、結局リバウンドで過食してしまう原因になります。

リバウンドを起こさないためには、1カ月あたり減量して良いのは体重の5%までと言われています。つまり、体重が50kgの人で2.5kgまでが1つの目安です。このように、ダイエットは少しずつ、こつこつと時間をかけて行うことを心がけましょう。

さらに、健康的な食生活は全ての基本です。1日3食を規則正しく、栄養のバランスを考えて摂取できるのが理想ですが、時間を揃えるのは難しいこともあります。不規則になりがちな場合でも、がつがつと食べず、食事はよく噛んで少しずつゆっくりと食べるのがポイントです。よく噛むと満腹中枢が十分に刺激され、少ない量でも満腹感を得られるのです。

ストレス解消には寝て忘れるのも効果的!

食事以外のストレス解消法として、おすすめなのは睡眠です。睡眠は体も脳も休ませることができるだけでなく、脳の中でその日に受け取った情報の整理をする時間でもあります。必要な情報は記憶として定着させ、不要と判断した情報は捨てる=忘れるのです。この「忘れる」ことこそ、ストレスの原因となる嫌な感情やイライラを打ち消す最も効果的な方法です。

また、逆に睡眠不足になると、食欲を抑制する「レプチン」の分泌量が減り、さらに食欲を増加させる「グレリン」の分泌量が増えてしまいます。するともちろん食欲が刺激され、過剰に食べすぎてしまう原因になります。ストレス解消のためにも、過食そのものを抑えるためにも、睡眠は重要なのです。

逆に食べられなくなったらどうする?

ストレスが長期間続くと、逆に食欲がなくなってしまうこともあります。食欲がないと十分な栄養やエネルギーを補給できなくなりますから、気力や体力も衰えていってしまいます。こうしたときには、「泣くこと」がおすすめのストレス解消法です。感動的なストーリーの映画や読書などでたっぷり涙を流すと、不思議と心の中がすっきりします。

注意するべきなのは、このとき悲劇やバッドエンドのものを選んでしまうと余計にストレスが溜まってしまうこともあるため、必ずハッピーエンドの温かなものを選ぶということです。

ストレスがある程度解消され、気持ちが軽くなってきたら、さらにお笑いなどで活力を得るのも大切です。気分的に乗り気でなくても、作り笑いをすることで笑顔と同じように体に良い効果をもたらすことがわかっています。笑顔を作るのも大変なときは、「は・ひ・ふ・へ・ほ」を少し大きめに口を開けて発音するだけでも、笑顔に近い顔の動きになります

これらのことを組み合わせ、上手にストレスを解消していきましょう。

過食の原因が病気のことも…。

病気から過食を引き起こしていることもあります。病名は「神経性過食症」で、食欲のコントロールができなくなり、頻繁に過食を繰り返してしまうというものです。過食の後には無理に吐いたり下剤を使ったりという、体重を増やさないための行動もセットで見られます。しかし、これらの症状はいずれも人前では現れにくいため、周囲の人もなかなか気づきにくい病気です。

本人も病気だとは思っておらず、助けを求めないことも多いです。しかし、治療を受けずに長く放置していると体にさまざまな悪影響が生じるほか、精神面でも抑うつや不安などの症状が悪化することがあります。

神経性過食症になるとどんな症状が出るの?

神経性過食症は、一見「やけ食い」と似ていることもあり、はっきりと区別するのが難しい病気です。しかし、神経性過食症では大量の食べ物をまるで体に詰め込むように一気に食べることから、やけ食いよりもより激しい食べ方になるのが特徴です。英語を直訳して「むちゃ食い」などと呼ばれることもあります。

食べたいという衝動なら、意志の力でコントロールできるのでは?とも思われがちですが、神経性過食症の場合、自分でもどうにもできない強い衝動が襲ってきます。しかも、本人は食べたくて食べているわけではないため、過食の後には無理矢理吐いたり下剤を使ったりする、過食時間以外は絶食するなど、体重を増やさないための強迫観念のような行動も見られます。

しかし、食べた後に吐くことを繰り返し続けると、唾液腺が腫れたり、逆流してきた胃酸で歯の表面が溶けたりすることがあります。さらに、嘔吐と下剤でカリウムがどんどん流出してしまうと、不整脈のリスクが高まります。体重は正常の範囲でも、血液検査や心電図検査では異常が現れることもあるのです。

神経性過食症は、体重を極端に気にすることから始まることも少なくありません。そのため、過食と嘔吐を繰り返しながらも、100gでも体重が増えれば生きていたくないと思ったり、ダイエットに失敗したと思い込んでしまったりという激しい気分の浮き沈みを繰り返すことがあります。アメリカ医学会の診断基準によれば、週に1回でも過食があれば治療が必要と判断されます

おわりに:過食はストレスや病気が原因なことも!食事以外でストレス解消を

単なる食べ過ぎではなく、衝動的に過食してしまう場合はストレスや病気が原因なこともあります。まずは、ストレスを溜め込まないよう、食事以外のストレス解消法を見つけることが大切です。

また、食生活の改善や、睡眠を十分に取ることでもストレスを解消し、過食を防ぐことができます。極端なダイエットも過食とストレスの悪循環に陥りやすいため、ダイエットは気長にこつこつと行いましょう。

この記事に含まれるキーワード

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