神経障害性疼痛の治療法は?薬以外にも治療法があるって本当?

2019/6/10

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

痛みは、誰にとっても嫌な感覚です。特に、一般的に痛みと言えば怪我や病気を想起させるもので、外傷のない神経障害性疼痛では原因がはっきりとわからず、もやもやと嫌な感覚だけが続くということもあります。

そこで、痛みは我慢せず、治療で軽減しながら身体と付き合っていくことが大切です。主な治療法は薬物療法ですが、その他にも治療法はたくさんあります。今回は、主な薬物療法とその他の治療法について、ご紹介します。

セルフケアで神経障害性疼痛に対処できる?

セルフケアで神経障害性疼痛に対処しようとするなら、まずは生活を見直すことが大切です。痛みを感じるとどうしても体を動かすのが辛く、外出するのが億劫になってしまうものですが、全く外出しない、体を動かさない、というのもストレスが溜まってしまい、体調不良もますます悪化してしまいます。

そこで、無理のない程度に散歩などで外出したり、1日5分程度のウォーキングで体を動かしたりと、運動そのもので体調不良を改善するというよりは、心理的な面でストレスを解消する、気分転換をするといった意味で体を動かすと良いでしょう。気持ちが明るくなり、症状も軽くなっていくことがあります。

また、市販の鎮痛薬でも神経障害性疼痛を抑えることができる場合もあります。しかし、効果は人によってさまざまですから、むやみに乱用したり飲みすぎたりするのではなく、薬剤師などの専門家に相談しながら、自分に合った鎮痛剤を適切な量で使用し、痛みと上手に付き合いながら治療を行っていくことが大切です。市販の鎮痛薬には、以下のようなものがあります。

NSAIDs(サリチル酸系)
アスピリン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム
NSAIDs(プロピオン酸系)
イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム
NSAIDs(サリチル酸アミド系)
エテンザミド
非ピリン系(アニリン系)
アセトアミノフェン
ピリン系(ピラゾロン系)
イソプロピルアンチピリン

現在、鎮痛解熱薬の主流はNSAIDsと呼ばれる非ステロイド系の薬剤です。アスピリンやイブプロフェンはもちろんのこと、頭痛薬として有名な「ロキソニン®︎」も「ロキソプロフェンナトリウム」という成分のNSAIDsの一種です。また、非ピリン系の「アセトアミノフェン」は、NSAIDsと違い、7歳以上15歳未満の小児でも使用できるため、小児用の鎮痛解熱薬としてよく使われます。

市販薬では改善しないとき、どこに行けば診てもらえる?

市販薬では改善しないとき、また、原因がわからない場合には痛みを我慢することなく、痛みの専門家であるペインクリニック、痛みセンターなどで相談してみると良いでしょう。痛みはシグナルでもありますから、放置していると重大な疾患を見落とす可能性があります。また、痛いという不快な感覚が続くと、脳に不快な記憶としてストレスになっていきます。

さらに、痛みの記憶が残ることで、痛みの原因がなくなっても痛い感覚が続いてしまうこともあるのです。そのため、痛みの時間をできるだけ少なくし、痛いという記憶を早めになくしておくことが大切です。できるだけ病院で早めに適切な指導を受け、痛みを我慢しすぎることのないようにしましょう。

病院に行くと、どんな治療を受けられる?

病院では、まず薬物療法を行います。市販の鎮痛剤にも含まれるNSAIDs、アセトアミノフェンをはじめ、神経障害性疼痛治療薬として認められている処方薬などを使うこともあります。

NSAIDs
アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウムなど
非ピリン系鎮痛薬
アセトアミノフェン
神経障害性疼痛治療薬
プレガバリン、デュロキセチン

NSAIDsや非ピリン系鎮痛薬は、市販薬と同じ成分です。NSAIDsは、シクロオキシゲナーゼという酵素を抑制し、痛みの原因を引き起こす「プロスタグランジン」という成分の産生を抑えることで痛みを軽減します。アセトアミノフェンは小児に利用できるだけでなく、世界的にも広く使われている解熱鎮痛薬であり、市販の風邪薬の主成分としても配合されています。

神経障害性疼痛治療薬として使われているのは、プレガバリン(商品名:リリカ®︎)またはデュロキセチン(商品名:サインバルタ®︎)です。プレガバリンは神経伝達回路をブロックするため、日本では神経障害性疼痛や線維筋痛症などの治療に、欧州ではてんかんや全般性不安障害などにも使われています。

また、デュロキセチンはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)と呼ばれ、日本では当初、うつ病やうつ状態の治療薬として販売が開始されましたが、その後、糖尿病神経障害に伴う疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛にも適応が追加され、現在ではこれらの疾患に伴う痛みの治療にも使われています。

これらの薬剤のほか、医療用の麻酔薬(オピオイドなど)、鎮痛補助薬、ステロイドなど、さまざまな薬剤を病態や症状に合わせて使い分け、治療や痛みの軽減を行います。

薬以外の治療法にはどんなものがあるの?

薬物療法以外では、「神経ブロック療法」「理学療法」「認知行動療法」「リエゾン療法」などの治療を行います。それぞれの特徴は以下の通りです。

神経ブロック療法
神経やその周辺に局所麻酔を注射し、痛みをなくす
理学療法
運動・温熱・電気刺激などのリハビリテーションを行う
認知行動療法
痛みについて誤った認識を修正するとともに、日常生活でできることを増やしていく
リエゾン療法
整形外科・心療内科・精神科など、複数の専門家がリエゾン=連携して治療する

神経ブロック療法は、痛いという神経の伝達をブロックすることで、痛みの感覚を感じないようにする方法です。理学療法はいわゆるリハビリテーションで、認知行動療法はどちらかというと心理的なアプローチ方法です。リエゾン療法では、患者さんの病態や症状によって、複数の医師や専門家が薬物療法とその他の治療法を組み合わせ、心と体の両面から治療を行います。

手術で痛みを改善する「脊髄電気刺激術」とは?

また、これらの治療法によっても症状が改善できない慢性疼痛(6カ月以上続く痛み)の場合、脊髄電気刺激術という手術療法を行う場合があります。日本ではまだ事例が少なく累積で3,000人という程度ではありますが、海外では毎年2万人が行っている治療で、年々機器の進歩によって有効性・安全性が高まっています。

治療の手順は2回に分けて行います。1回目では「脊髄刺激電極挿入術」という、局所麻酔下で腰部を穿刺し刺激電極を挿入する手術、2回目では「バッテリー留置術」という、刺激用のバッテリーを腹部または胸部へ留置して刺激電極と接続する手術を行います。

1回目の手術の後には一般病棟で約1週間テスト刺激を行い、除痛効果をが正しく機能することを判定してから2回目の手術を行います。もしここで正しく機能することが確認できなければ、1回目の手術で挿入した刺激電極を取り除いて終了します。

おわりに:神経障害性疼痛の治療のメインは投薬だが、リハビリや手術をすることも

神経障害性疼痛は、基本的には薬物療法からスタートします。NSAIDsや非ピリン系など、市販薬と同様の鎮痛作用を持つ薬剤のほか、神経障害性疼痛治療薬として認可されている処方薬を使うこともあります。

薬物療法で効果が見られない場合、神経ブロック療法や理学療法、さらには手術療法を行うこともあります。いずれの場合も専門家とよく相談し、痛みや身体と上手に付き合っていきましょう。

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