常在菌とは?皮膚以外にも生息している場所があるの?

2019/7/21

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「常在菌」と聞くと、なんとなく除菌しないとまずそうなイメージが浮かぶかもしれません。でも、常在菌のおかげで皮膚の清潔さが保たれるなど、よい面もあります。この記事では、常在菌の種類や働きとともに、バランスを崩した場合にあらわれる症状を紹介します。

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常在菌ってどこにいるの?

「常在菌」は、健康なときでも体内や皮膚にすみついている菌のことです。人も動物も、一般的に胎児のときには無菌で過ごしますが、新生児として生まれるとまもなく、産道や外界からきた細菌が消化管や生殖器の粘膜、皮膚で増殖し、すみつくようになります。

そして、外界に接する体の部位、鼻腔や咽頭、口腔、胃、腸管、腟、尿道、皮膚などには、乳児には乳児型の、成人には成人型のそれぞれ部位によって異なるさまざまな細菌が生息する状態になります。

常在菌はどんな働きをしているの?

常在菌は健康を保つために必要なもので、近年は特に腸内細菌が注目されています。腸管にいる常在菌は、ビタミンやタンパク質を合成して食物の消化吸収を助けるとともに、安定したバランスを保つことで外界からの病原菌の増殖を阻止し、感染の防御や免疫力の強化にも重要な役割を果たしています。

またそれ以外にも、たとえば皮膚の常在菌は外的刺激から私たちの肌を守っています。代表的なものとして、皮膚表面や毛穴に存在する表皮ブドウ球菌があり、黄色ブドウ球菌の増殖を防ぎ皮膚のバリア機能を保っているほか、毛穴や皮脂線に存在するアクネ桿菌は、皮膚表面を弱酸性に保ち皮膚に付着する病原性の強い細菌の繁殖を抑えています。

肌の常在菌のバランスが崩れるとどうなる?

肌の代表的な常在菌にはもうひとつ、皮膚表面や毛穴に存在する黄色ブドウ球菌があります。この菌が存在していること自体に問題はありませんが、病原性が高いため、常在菌のバランスが崩れると増殖して皮膚炎などを引き起こします。また、アクネ桿菌も、ストレスなどでバランスを崩して皮脂が増えると、毛穴の中で増殖しニキビをつくります

皮膚表面には数十種類の常在菌が付着しており、安定したバランスのときは病原菌の侵入を抑えてバリア機能を保ち肌を守る役割を担いますが、バランスが崩れると肌の抵抗力が弱まり、通常は無害な菌が炎症や発疹などの皮膚トラブルを起こします。顔や体を過度に洗い過ぎず、また不潔にもせず、菌と上手に付き合っていくことが大切です。

腸内の常在菌のバランスが崩れるとどうなるの?

腸内の常在菌は、不規則な食生活やバランスの悪い食事、老化、ストレス、睡眠不足、過労などさまざまな影響からバランスを崩すことがありますが、特に抗生物質服用の影響は大きいといわれています。

腸内で細菌により作り出されるものは吸収されて体内に取り込まれることから、腸管内だけでなく体の健康に大きな影響を与えています。バランスが崩れると有害な物質が作りだされ、炎症を引き起こしたり、発がん物質を活性化させるなど、さまざまな疾患を引き起こす可能性があります。肥満や糖尿病の原因ともなるほか、自閉症やうつ病などの精神疾患などへの影響も報告されています。

おわりに:常に皮膚や体内に生息している菌で、安定したバランスを保つことで健康を維持します

常に皮膚や体内に生息している菌で、安定したバランスを保つことで健康を維持します。常在菌は、健康なときでも外界に接する体の部位、鼻腔や咽頭、口腔、胃、腸管、腟、尿道、皮膚などにつねに生息している、それぞれの部位によって異なる多数の細菌です。常在菌には、安定したバランスを保つことで健康を維持する働きがあります。

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