日中に耐えられないほど眠くなるのは睡眠不足?それとも病気?

2019/6/17

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「ちゃんと寝たはずなのに、なんでこう眠いんだろう…」と悩んだことはありませんか?睡眠時間はしっかりとっているのに眠くて仕方がない場合、考えられるのが過眠症です。この記事では過眠症を招く原因となる病気を中心に、治療法も含めて解説します。

日中の耐えがたい眠気を引き起こす「過眠」とは?

しっかりと睡眠をとっているはずなのに、強い眠気が起こり居眠りをしてしまう場合に病的な「過眠」の可能性があります。

眠気は、健康な人であっても昼食後や午後の時間帯に感じることがあります。しかし、何かの活動をしたり、寝てはいけないと気をまぎらわせたりしていれば起きていることができます。しかし、過眠の疑いがあると、どんなに大事な場面であったり、危険を伴うような場面であっても眠りに落ちてしまうことがあります。面接や会議といった学業や仕事での大切な場面や、なかには運転中に眠ってしまうという人もおり、社会生活に大きな影響を与えることがあります。

ひどい眠気の原因が病気のこともあるって本当?

病気が原因で眠気に襲われることもあります。ひとつは、睡眠中に体に何らかの症状が起こることで十分な睡眠がとれず、慢性の睡眠不足となっている状態です。もうひとつは脳に何らかのトラブルがあり、睡眠をコントロールする機能がうまく働かないことが原因となるものがあります。

前者の代表的なものが睡眠時無呼吸症候群であり、後者の代表的なものがナルコレプシーです。

睡眠時無呼吸症候群の症状・原因は?

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の呼吸が10秒以上止まってしまう症状があることをいいます。

睡眠は、本来は脳とからだを休ませ回復させるためのものです。睡眠中のからだは呼吸数や心拍数を減少させ、体温や血圧も低下した状態です。日中は緊張していた筋肉もゆるめて、からだの回復をうながします。

睡眠時無呼吸症候群になると、眠りに落ちると呼吸が止まって酸欠状態になり、深い眠りに到達する前に覚醒してしまいます。酸素が不足するとからだは心拍数を上げ、脳や身体には負担をかけ続けている状態になります。疲れがとれず、眠気だけではなく疲労感を感じます。

睡眠時無呼吸症候群の原因は、脳や神経、心臓の病気が原因で起こる中枢型や、のどが狭くなることで空気が通りづらくなる閉塞型、中枢型と閉塞型の両方が起こる混合型があります。中枢型では、呼吸そのものが停止してしまいますが、閉塞型は、呼吸しようとするのに空気が通らずに抵抗が生じてしまいます。空気が通過しようとするときに摩擦が起こって音が生じるのが「いびき」です。閉塞型は肥満との関係が深く、最も多くみられるタイプといわれています。

睡眠時無呼吸症候群の治療は、肥満の解消や、眠る前の飲酒を止めることといった生活習慣の改善、マウスピースやCPAPを装着などがあります。CPAPは、睡眠時に鼻にマスクを装着して空気を送り込むことで、喉がふさがらないようにする治療です。現在の時無呼吸症候群の治療で最も有効な治療法とされています。

ナルコレプシーの症状・原因は?

ナルコレプシーは、夜は十分に睡眠をとっているにもかかわらず、日中にまるで発作のように眠くなる病気です。10~20代と若い世代の発症が多いといわれています。ナルコレプシーは、食事中や散歩中など、通常では考えられない状況でも強い眠気を感じます。症状があらわれると、5~15分と短時間眠り続け、目覚めた後も1~2時間程度でまた発作が起こります。中には、眠ったまま歩き続けて記憶を失っていたり、急に脱力して倒れ込んでしまうこともあります。また、眠り始めに、幻覚や身体が動かなくなるといったことも起こります。

近年、ナルコレプシーの原因は脳内にあることがわかってきました。目を覚まし続けるためには、オレキシンという神経伝達物質が十分に作用することが必要です。しかし、何らかの原因でオレキシンが作れなくなったり、脳内に不足してしまったりすると、ナルコレプシーの症状が起こります。治療は生活習慣の改善とともに薬物治療が中心となります。

おわりに:日中の眠気は治療が必要な病気の可能性も。早めに専門医に相談しましょう

過眠はしっかりと睡眠時間は確保しているにもかかわらず、日中に強い眠気が起こり、生活にも支障をきたすような状態です。睡眠中に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群や、脳内の神経伝達物質が不足するナルコレプシーなどがあります。原因に合わせた生活習慣の改善を行ったり、治療を受けたりすることで改善することもあるため医療機関に相談しましょう。

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