アミノ酸が肝臓の働きを助けるって本当?

2019/8/4

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

アミノ酸は、スポーツの際の飲料や健康食品などに多く使われている栄養素の1つです。体の中でもタンパク質の材料となるほか、体の状態を調節するホルモンを作ったり、臓器の機能を助けたりする働きを持っています。

そんなアミノ酸ですが、肝臓の働きを助けることもあると言われているのです。アミノ酸を摂取すると期待できる良い効果とは?肝臓の働きを助ける仕組みとは?など、アミノ酸の効果についてお話します。

アミノ酸の効果とは

最近の研究で、アミノ酸には人間の身体機能を支えるさまざまな役割を担っていることがわかってきました。代表的なものとして、以下の5つがあります。

スタミナアップ
バリン・ロイシン・イソロイシン(まとめてBCAAと呼ばれる)、アルギニン
激しい運動をした際のエネルギー源となる
運動で体を酷使した際の、筋肉・腱・靭帯・骨などの障害を予防する
アルギニンは強靭な筋肉を作るための成長ホルモンの分泌を促す
おすすめ食品:大豆・そら豆・鶏肉・豚肉・牛肉・卵黄・タイ・カツオ・シシャモ
ダイエット
アルギニン・プロリン・リジン・アラニン
脂肪分解酵素「リパーゼ」を活性化し、体脂肪の蓄積を防ぐ役割がある
体脂肪の分解と燃焼を促し、体に溜まった余分な水分を排出する
体脂肪が燃焼すると、気分が活き活きするという効果も
おすすめ食品:小麦胚芽・干し海苔・カシューナッツ・ごま・ブリ・フグ・油揚げ
スキンケア
アスパラギン・チロシン・セリン
肌の材料になるとともに、細胞分裂に必要な酵素のもとになる
細胞の新陳代謝を活性化し、肌の老化を防ぐ
くすみを取り、うるおいを保ち、肌荒れやシミ・ソバカスを防ぐ
おすすめ食品:落花生・ピスタチオ・マグロ・車海老・豚レバー・牛乳
健脳
イソロイシン・チロシン・アルギニン・フェニルアラニン・グルタミン酸
イソロイシン・チロシン・アルギニン・グルタミン酸は脳内の伝達物質になる
これらを摂取すると脳が刺激されて興奮し、短時間で大量の情報を記憶できる
フェニルアラニンは不足すると気分が落ち込んだり、記憶力が低下したりする
おすすめ食品:小麦胚芽・粉末状大豆タンパク・エンドウ豆・サケ・サバ・ヒラメ
免疫力アップ
グルタミン・アルギニン・ヒスチジン
崩れやすい免疫機構を正常な状態に修復する
アミノ酸全体として、免疫細胞の産生を高めたり、働きを強める効果がある
バランスのとれたアミノ酸接種が重要。病気を未然に防ぐとともに、進行を食い止める
おすすめ食品:クルミ・ひまわりの種・小豆・シラス干し・カツオ節・干し湯葉・凍り豆腐

このように、体内のタンパク質を増やして臓器や細胞を修復したり、細胞分裂を促すだけでなく、体調を整えたり美容や記憶などにも良い効果が期待できます

アミノ酸は肝臓の働きも改善するの?

肝臓の働きが弱まった代表的な状態が、アルコールの過剰摂取による飲み過ぎや二日酔いです。しかし、アミノ酸を摂取することでこうした体調不良の状態を改善できることがあります。

そもそも二日酔いの原因は、体内に取り込まれたアルコールや、アルコールが肝臓で分解されてできた「アセトアルデヒド」という物質です。肝臓の働きが十分な状態なら、アセトアルデヒドはその後さらに分解され、無害な炭酸ガスと水になって排出されます。

しかし、肝臓の働きが十分でないと、このアセトアルデヒドが溜まっていき、二日酔いの症状を引き起こします。というのも、アセトアルデヒドそのものは、吐き気や呼吸促迫、心拍数を異常に増やすなど、アルコールよりも数倍強い作用のある有害物質だからです。また、アルコールやアセトアルデヒドを分解すると、肝臓には「NADH」という物質が溜まるため、分解の効率が徐々に落ちていきます

このNADHを分解してくれるのが、「アラニン」と「グルタミン」という2種類のアミノ酸です。これらは、体内でエネルギー源となる「糖」を新たに作り出す「糖原性アミノ酸」です。糖を作り出す過程でNADHを消費し、肝臓内のNADHを減らすことができるため、分解の効率を再び上げられると考えられています。

ある研究報告によれば、アルコール飲料を飲んですぐにアラニンとグルタミンを摂取してもらった場合、そうでない場合と比べて呼気中のアルコール量が素早く低下したという結果も出ています。このことからも、アラニンとグルタミンが肝臓のアルコール分解を助けたのではないかと考えられます。

ですから、二日酔いに悩まされやすい人は、ぜひアルコールを飲んだ後や、二日酔いの朝にはアラニンとグルタミンを意識して摂取すると良いかもしれません。

肝硬変の症状改善にもアミノ酸が使われる

肝硬変とは、肝臓の慢性的な障害が進行し、最終的に肝臓が硬くなって機能が低下してしまった状態です。病状の特徴としては、安静にしていてもエネルギーの消費量が多く、常に肝臓がエネルギー不足の状態であること、そして肝臓のエネルギー源である「糖質」を利用しにくくなっていることです。

さらに、肝硬変の患者さんの血中アミノ酸濃度を調べてみると、「BCAA(分岐鎖アミノ酸=バリン・ロイシン・イソロイシン)」と「AAA(芳香族アミノ酸=フェニルアラニン・チロシン)」の比率が低下しています。この比率をフィッシャー比と言い、BCAA/AAAで表されます。健康な人のフィッシャー比は3~4ですが、肝硬変の患者さんではBCAAの量が減り、AAAの量が増えているため、1や2のような低値を示します。1.8を下回ると、治療が必要と判断されます。

このように、体内のアミノ酸バランスが崩れた状態を「アミノ酸インバランス」と呼びます。この状態を解消するためには、BCAAを多く摂取し、AAAを少なく摂取するしかありません。しかし、ピンポイントでBCAAが多く、AAAが少ない食品というのが存在しないため、BCAAを多く含む栄養剤と低タンパク食を組み合わせ、相対的にBCAAの量を引き上げるという形でアミノ酸インバランスを改善します。

BCAAは筋肉で代謝され、アンモニアを解毒するだけでなく、肝臓のエネルギー源になるアミノ酸です。肝臓のエネルギー不足を補うと、肝臓でアルブミンが多く作られ、肝硬変による低アルブミン血症と、それによる胸水や腹水などの症状を防ぐことができます。

また、最近の研究では、肝硬変の患者さんの一部で「カルニチン」が不足していることがわかってきました。カルニチンはアミノ酸から合成される「誘導体」という物質で、脂質を代謝してエネルギーに換える作用を持っています。食品から摂取されるほか、腎臓や肝臓でアミノ酸から合成されることもあるため、肝硬変や慢性腎不全などで食事制限や透析治療を行っていると、カルニチンが不足しやすくなります。

カルニチンが不足すると、筋肉で十分にエネルギーを産生できないため、筋力低下・筋肉痛・こむら返りといった筋肉の症状が出てきます。さらに欠乏状態が続き、重篤になると肝臓・脳・心臓・腎臓など各種の臓器に障害をもたらし、低血糖から来る昏睡、高アンモニア血症による脳症、心筋症、腎性貧血などを引き起こすこともあるのです。このような状態にまでなると、生命を脅かす危険性があります。

そのため、カルニチンを食品から補い、体内の慢性的なカルニチン不足を改善していくことも、肝硬変や腎不全の治療や予後を良くするためには大切なことなのです。

おわりに:アミノ酸で二日酔いや肝硬変の症状を改善する効果が期待できます

一口にアミノ酸と言っても、その種類は20種類もあり、体にもたらす効果もさまざまです。今回は、二日酔いの症状を和らげる「アラニン」「グルタミン」と、肝硬変の症状を改善する「BCAA」についてご紹介しました。

このように、アミノ酸は肝臓に良い効果をもたらすことが期待できます。二日酔いのときには、アラニン・グルタミンを意識して摂取すると、つらい症状が早くおさまるかもしれません。

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