クエン酸摂取で得られる効果は?クエン酸回路ってどんなもの?

2019/7/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

クエン酸は、レモンをはじめとするさまざまな果物などに含まれる疲労回復物質としてよく知られています。しかし、近年の研究によって、クエン酸の効果はそれだけではなく、美容や健康面でも多くの効果が期待できることがわかってきました。

クエン酸を摂取することで得られる効果にはどんなものがあるのか、そして、クエン酸回路という体の仕組みについてご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

クエン酸ってどんな栄養素?

クエン酸とは、みかんやレモンなどの柑橘系の果物、梅干しなどに含まれる「酸味成分」です。白色または無色で水に溶けやすく、熱にも強いという性質を持っているため、清涼飲料水やお菓子、ジャムなどの酸味料としても幅広く使われます。

私たちの体には、摂取した食べ物を分解し、エネルギーや臓器を作る材料として使う仕組みがありますが、この「食べ物からエネルギーを取り出す仕組み」のことを「クエン酸回路」と言います。名前にもなっているとおり、この仕組みにクエン酸は欠かせません。

クエン酸回路って?

クエン酸回路(クエン酸サイクル)は、摂取した食べ物からエネルギーを取り出す仕組み(代謝回路)のことです。1937年にイギリスのハンス・クレブス博士によって解明され、この功績によって博士は1953年にノーベル賞を受賞しました。

食事によって摂取された炭水化物・タンパク質・脂質は、アセチルCoAという物質になり、クエン酸回路に取り込まれます。クエン酸回路は、以下のようにぐるぐると循環する回路です。

  1. オキサロ酢酸+アセチルCoA→クエン酸
  2. クエン酸→cis-アコニット酸
  3. cis-アコニット酸→イソクエン酸
  4. イソクエン酸→α-ケトグルタル酸
  5. α-ケトグルタル酸→スクシニルCoA
  6. スクシニルCoA→コハク酸
  7. コハク酸→フマル酸
  8. フマル酸→リンゴ酸
  9. リンゴ酸→オキサロ酢酸

このように変化していくにつれ、クエン酸を始めとしてだんだんと量が減っていき、エネルギーとともに二酸化炭素や水などの不要物が吐く息や尿・汗として排出されます。人間が生きるために必要なエネルギーである「ATP」は、4、5、7、9の反応過程で合成されます。

炭水化物はブドウ糖に分解された後、ジヒドロキシアセトンリン酸を経てピルビン酸からアセチルCoAに変化します。このとき、酸素が足りない状態だとピルビン酸がアセチルCoAに変化できず、乳酸が作られます。激しい無酸素運動などによって乳酸ができるのはこの状態です。逆に、十分に酸素がある状態では、アセチルCoAからクエン酸回路に入り、エネルギーを取り出すことができます。

酸素が十分にある状態でクエン酸回路をどんどん回すためには、クエン酸を摂取することが大切です。ピルビン酸から乳酸が作られても、乳酸からピルビン酸に戻ることもできますので、クエン酸回路がどんどん回っている状態なら乳酸からピルビン酸に戻り、クエン酸回路に入り込んでどんどんエネルギーが作られます。クエン酸が健康に良いとして注目されるのは、このクエン酸回路によって余分なエネルギーがどんどん消費されていき、老廃物が体内に残りにくくなるからです。

クエン酸を摂るとどんな効果が得られるの?

クエン酸は、疲れたときに摂取すると疲れがとれる、疲労回復が早まる物質として知られていますが、そのほかにもさまざまな作用があります。とくに大きく期待されているのは、果実に含まれるクエン酸とビタミンCの相乗効果によって強い抗酸化作用が得られるところです。酸化を抑えると細胞のダメージが抑えられますので、美容にはもちろん、血液をサラサラにするなど、老化を軽減できると考えられます。

また、レモンなどに含まれるクエン酸は「キレート作用」という作用を持っています。キレートとはギリシャ語で「カニのはさみ」という意味で、名前通りクエン酸がミネラルをはさみのように包み込み、ミネラルの腸からの吸収を助けます。とくに、カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラルは腸から吸収されにくく、日本人に不足しがちなミネラルですから、クエン酸のキレート作用は重要な役割です。骨粗鬆症の予防になるとも言われています。

さらに、痛風の方には健康効果も期待できます。痛風の原因は代謝異常による尿酸の蓄積と考えられていますが、尿酸は尿が通常の強酸性でなく、弱酸性になると尿に溶け込みやすくなるため、体外への排出がスムーズになります。クエン酸は、この強酸性の尿を弱酸性に変える効果が期待できることから、尿酸を排出しやすくなり、血中の尿酸濃度が低くなります

そのほか、クエン酸回路を回すことで体内の脂肪をどんどんエネルギーとして燃焼するダイエット効果や、酸味によって唾液や胃液の分泌が促され、消化を助ける働きなどがあります。

クエン酸が豊富な食べ物は?

クエン酸と言えば、有名なのはレモンをはじめとした柑橘類ですが、そのほかにも梅干しやお酢などにも含まれています。果実中のクエン酸量は以下のようになっています。

  • レモン…約6~7%
  • 梅…約1.6~4%
  • キウイ…約1%
  • 夏みかん…約0.9~1.2%
  • グレープフルーツ…約0.9%
  • 温州みかん…約0.7~1.1%
  • バレンシアオレンジ…約0.6~1.1%
  • パインアップル…約0.5~0.9%

クエン酸は、一度に大量に摂取しても使える量が限られています。そこで、長時間クエン酸回路を回し続けるためには、1日1回大量に摂取するのではなく、1日3回の食事で摂ったり、おやつや飲み物として摂ったりするなど、こまめに摂取するのが効果的です。

また、ビタミンB群と一緒に摂取すると、さらに相乗効果が期待できます。なぜなら、クエン酸回路の多くの場所でビタミンB1・B2・B6などが使われているからです。これらのビタミンと一緒にクエン酸を摂取すれば、効率的にクエン酸回路をぐるぐると回すことができます。

おわりに:クエン酸はエネルギー代謝を活性化し、美容や健康に役立つ

クエン酸は、体内のエネルギー代謝回路である「クエン酸回路」を活性化する役割があります。クエン酸回路は、その名前通りクエン酸を始めとして回転するようにぐるぐると酸が変化しながらエネルギーを取り出す回路で、クエン酸を摂ることで効率よく反応を進められます。

クエン酸が豊富な食べ物は、レモンやみかん、梅干し、お酢などです。フルーツを中心に、普段の食事や飲み物などでこまめに摂取していきましょう。

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