潜在的ビタミン欠乏症ってどんな病気?

2019/8/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ビタミンは体の機能を正常に保つ働きを持つ栄養素です。ビタミンが不足すると体の不調を引き起こしてしまいます。潜在的ビタミン欠乏症と呼ばれる病気は、ビタミンが体に足りないためにさまざまな不調を招きます。この記事ではビタミン不足の原因や症状について紹介します。

潜在的ビタミン欠乏症とは

潜在的ビタミン欠乏症とは、ビタミンの摂取不足、吸収障害などで体内のビタミン不足が引き起こされた結果、日常的にさまざまな不調を招く病気です。

ビタミンは人の体に不可欠な栄養素ですが、体内ではビタミンをつくることがほとんどできません。そのため食事などでビタミンを摂取して吸収することが必要です。しかし、栄養バランスが極端に偏った食事や病気による食欲不振などが起こると、ビタミンの摂取量や吸収量に影響を及ぼすことがあります。

ビタミン不足によって発症する病気は、不足しているビタミンの種類で変わります。

ビタミン欠乏症が引き起こす病気の一例

  • ビタミンA 夜盲症
  • ビタミンB1不足 脚気
  • ビタミンC不足 壊血病
  • ビタミンD くる病、骨軟化症

上記はビタミン欠乏症を原因とする代表的な病気ですが、はっきりとした病名はつかないものの、何らかの不調があらわれる場合に、潜在的ビタミン欠乏症を発症しているケースもあります

日本をはじめとする先進国で、ビタミン欠乏症を発症する割合は多くありません。ただ、過度のダイエットや不規則で偏った食生活、加齢による食生活の変化、病気などによって潜在的ビタミン欠乏症を発症する場合があります。

ビタミンA不足でみられる病気:夜盲症

ビタミンAが不足すると、夜盲症を発症することがあります。夜盲症とは、夜間に視力が著しく低下する病気です。

症状

明るい場所から暗い場所へ移動すると周囲が真っ暗に感じられますが、次第に暗さに慣れてきて周囲を視覚的に認識することができるようになります。これを「暗順応」といいます。網膜細胞に異常が生じ、暗順応が正しく機能しなくなった状態を夜盲症と呼びます。夜盲症は先天性と後天性に分かれますが、ビタミンA不足は後天性の夜盲症を引き起こすおそれがあります。

治療法

後天性夜盲症の治療法はビタミンA投与を行います。夕方や夜間に突然視力が低下したと感じたら、すぐに眼科を受診してください。

ビタミンB1不足でみられる病気:脚気

ビタミンB1が不足すると、脚気を発症することがあります。

症状

初期症状として疲れやすい、倦怠感、食欲不振などがあらわれます。次に、神経や心臓に関わる症状などがあらわれます。

神経の症状
手足に力が入らない、手足の感覚が鈍くなる、足がつりやすい、筋力低下、焼けるような痛み、言葉をうまく発せられない、意識が変容しやすい
心臓の症状
心拍数増加、動悸、足のむくみ、心不全など

治療法

ビタミンB1の補充を行います。治療方法は、内服薬による補充と点滴による補充があります。妊娠中、栄養バランスの偏った食生活、アルコール依存症の方は脚気発症のリスクが高まりますので、ビタミンB1を多く含む食事を積極的に摂取してください。

ビタミンC不足でみられる病気:壊血病

ビタミンCが長期的かつ重度に不足した状態が続くと、壊血病を発症することがあります。壊血病とは、アミノ酸のヒドロキシプロリンの合成が低下し、コラーゲンや象牙質、骨などの健康維持に影響を与える病気です。

症状

脱力、体重減少、鈍痛、傷の回復が遅い、皮膚の出血、粘膜の出血、歯肉の出血、歯が抜ける、停止基礎貧血、感染症に罹りやすい、など

治療法

ビタミンCの投与で改善がみられます。

ビタミンD不足でみられる病気:くる病・骨軟化症

くる病

ビタミンDが不足すると、骨に悪影響を及ぼすくる病を引き起こすおそれがあります。

症状

骨の石灰化を妨げて子供の骨の成長を妨げます。すると低身長などになる場合があります。骨が石灰化せずに柔らかくなることで、骨が変形しO脚やX脚、肋骨変形がみられます。

治療法

ビタミンDの補充を行います。

骨軟化症

ビタミンDが不足すると、くる病のように骨に悪影響を及ぼす骨軟化症発症の可能性があります。

症状

骨に圧力がかかり亀裂が入る偽骨折や骨が折れる骨折を招きます。健康な状態であれば骨折するような強い圧力ではないのに骨に異常をきたす点が特徴的です。

骨に痛みを感じる骨痛が起こることがあり、動くのが辛いほど強い痛みがあらわれる場合もあります。そのほか骨痛に伴う筋力低下、関節症、靭帯の石灰化、歯の石灰化が妨げられたことによって歯が抜ける、虫歯などがあらわれます。

治療法

ビタミンDの補充で偽骨折や骨痛などの症状改善が期待できます。骨折の場合は患部の固定などの治療を行います。しかし長期化した骨軟化症によって靭帯の石灰化や関節症が引き起こされた場合、元の状態に治すことはできません。痛みを緩和する鎮痛薬や症状の程度を考慮して外科的治療が検討されます。

おわりに:ビタミン不足の要望は普段から気をつけて。意識的にビタミン摂取を!

ビタミン不足は不足しているビタミンの種類によって不調や病気を引き起こします。治療法は基本的には不足しているビタミンの補充を行います。しかし大切なのは潜在的ビタミン欠乏症を予防するために、日常的にビタミンをしっかり摂取することです。栄養バランスのいい食事をとるなど、普段の食生活から気をつけていきましょう。

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