記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/1/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脚気(かっけ)は末梢神経や中枢神経に異常が起こる病気で、膝の下を叩いても反応を示さないのが特徴です。脚気は大昔の病気と考えられてきましたが、近年、食生活の偏りなどが原因で発症する人がいるといわれています。この記事では、脚気の症状や予防法を紹介します。
脚気は、末梢神経や中枢神経に異常が起こる病気で、足元がおぼつかなくなる、むくみ、しびれ、食欲不振、などの症状が表れます。通常、人の膝の下をたたくと、膝蓋腱反射という反応で、脚が跳ね上がります。しかし、反応せずに脚が動かない場合、脚気の可能性があります。重症化すると心不全を起こし、死に至ることもあります。病気です。
脚気は、明治3年(1870年)以降、都市部や港町から流行し始めた病気です。統計によれば、毎年1万人~3万人もの人が亡くなったともいわれています。明治10年(1877年)の西南戦争のときにも患者が増え、原因や対策の研究が始まり病院も作られましたが、結局解明はできませんでした。
当時から、経験上、食事によって脚気の症状が改善することは知られていました。しかし、どの食べ物をどれくらいとったらいいのかなど、明確な対策は明らかにされていないままだったのです。明治時代、鎖国を解いた日本政府は、諸外国に負けないよう「富国強兵」を掲げ、軍隊を作りました。彼らは政府から支給された同じ食事をとっているため、被害が一層大きくなってしまったのです。「江戸わずらい」と呼ばれていたように、発症者ははじめ都市部に多かったのですが、やがて全国に広がっていってしまいます。
この頃の兵士たちは貧しい農家の若者などが多く、白米をお腹いっぱい食べさせてもらえることを魅力に感じて、軍隊に入っていました。しかし、この白米が大部分を占める食事こそが脚気の原因であり、国民病とまで言われるほどの大きな脅威となった理由でもあるのです。
脚気の原因について、現代では、ビタミンB1の不足であることが明らかになっています。ビタミンの大切さがよく知られている今では、もはや心配はないようにも思えますが、実はそうとも言えません。
ビタミンB1は、糖質を分解するのに必要不可欠な成分のため、清涼飲料水やインスタント食品、アルコールなど、糖質を多く含む食品を大量に食べてしまうと、糖質の分解によってビタミンB1不足になり、脚気になってしまうことがあります。さらに、水に溶けやすいという性質をもつため、摂取したとしても体に吸収されにくく、吸収された後、排出されやすくもあります。実際には元の食品の半分ほどしか摂取できないともいわれており、食生活が偏れば、不足する可能性もあるのです。
そのため、日ごろ、食事をインスタントラーメンや菓子パンなどの糖質に頼りがちな人、アルコールの摂取が習慣になっている人などは十分気を付ける必要があります。
脚気にならないためには、もちろんビタミンB1を摂取することが大切です。ビタミンB1が多く含まれている主な食品として、玄米などで摂れる穀類のはい芽、豚肉、レバー、豆類などです。とくに豚肉はビタミンB1が豊富だといわれています。これらに、ビタミンB1の体内への吸収を助ける、アリシンという成分が豊富な食材を加えるとよいでしょう。具体的には、玉ねぎ、ニラ、にんにく、ねぎなどがおすすめです。
これらの食材を日常的に摂るのがどうしても難しい場合、ビタミンB1を含むサプリメントやドリンク剤などの選択も考えてみましょう。吸収を助けるよう、あらかじめビタミン誘導体が配合された医薬品なども、販売されています。
脚気は、末梢神経や中枢神経に異常が起こる病気で、足元がおぼつかなくなる、むくみ、しびれ、食欲不振、などの症状が表れます。原因はビタミンB1の不足が、このことがまだ明らかになっていなかった時代、国民病といわれるほどの大きな被害をもたらしました。水に溶けやすく吸収されにくいという特徴をもつため、豚肉や豆類などの食事やサプリメント等で意識して補いましょう。