記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
2019/9/4
記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
5月の大型連休後、うつ病や精神疾患、寝不足などの心当たりはないのに、なんとなくだるくて気分が重いという状態は、日本ではよく5月病・6月病などと呼ばれたりします。これとよく似た状態に「9月病」というものがあるそうです。
「9月病」の由来や症状、実際に9月病になったらどうすればよいのかなど、原因と対策の両方を知っておきましょう。
「9月病」とは、もともとは欧米を中心に起こっていた不調のことで、名前のとおり9月頃に起こる症状です。日本でも「5月病」という似たような不調が起こりますが、同じように欧米では夏前に年度が終わり、夏期の長いバケーションを挟んで9月から新学年・新年度がスタートすることから、休み明けにうまく仕事や学校に復帰できない人が多いのです。
日本でも、明治以降に欧米の学校制度を真似て始まった学校教育は、長い夏休みを取るのが一般的です。7月中旬から8月いっぱいの夏休みは、遊びやイベントに精を出す人はもちろんのこと、近年の記録的な猛暑などによって体力を消耗する人が非常に増えています。すると、環境の変化についていけずに心身の調子を崩してしまい、9月に仕事や学校が始まっても体がだるい、気分が重いといった症状が出てしまうのです。
また、9月は季節の変わり目でもあるため、日照時間が短くなったり、気温が下がったり、台風が多くなったりといった急激な気候の変化も心身に影響を与えているのではないかと言われています。とくに、朝晩が冷え込み始めることも多い9月の後半からは、うつ病の人や気分の波が激しい人などの状態が1年でもっとも悪化しやすく、精神科の医師でも警戒する時期なのだそうです。
うつ病に関係しているとされるセロトニンや、睡眠を司るメラトニンなどのホルモンは太陽の光を浴びると分泌量が変化するので、日照時間が明らかに減ってくるこの時期はこれらのホルモンが必要量分泌されず、情緒や睡眠のリズムが崩れやすくなると考えられています。
つまり、単に仕事や学校が始まるストレスを感じる時期というだけでなく、脳機能としても抑うつ的な状態になりやすい時期なのです。夏休み中の遊びはほどほどに、9月で仕事や学校が始まってからも無理をしすぎないように過ごしましょう。
9月病を発症する仕組みは5月病と似ているため、症状も心身ともに5月病と似ています。具体的には、以下のような症状が現れます。
5月病では比較的見られにくく、9月病に見られやすい症状が「不眠・過眠」などの睡眠障害です。それまで何も問題がなかったのに、急に睡眠リズムが崩れた、寝つけなくなった、朝早く目が覚めてしまうなどの症状が現れた場合は注意しましょう。寝不足やリズムの崩れが長引くようであれば、念のため医療機関を受診しておくと安心です。
9月病を乗り切るためには、以下のようなポイントに気をつけて過ごしましょう。
9月病は睡眠障害の症状が多いため、睡眠時間の確保はなかなか難しい課題ですが、夜更かしせず意識的に早めに布団に入る、寝る直前にはパソコンやスマートフォンを使わない、などの工夫でも睡眠に入りやすくなります。できるだけ6~7時間の睡眠を、毎日同じ時間にとれるようにしましょう。
食生活では、バランスの良い食事を3食きちんと食べることはもちろん、うつ病を改善してくれるセロトニンの分泌量を増やせるよう、原料であるトリプトファンを含む食品を多く摂取することも大切です。トリプトファンは必須アミノ酸で、体内で合成できないため、食品から摂取しないとセロトニンを作れないのです。
また、暑い夏の名残でなにかと冷たい飲み物を取りたくなりますが、内臓を冷やしすぎると血流が悪くなり、冷え症を引き起こす可能性がありますので注意しましょう。同じように、体がだるいからと動かずにいると血流が悪くなり、首や肩がこったり、腰が痛くなったりすることがあります。デスクワークの合間のストレッチや、駅でエレベーターの代わりに階段を使うなど、ちょっとした工夫で運動量を増やしましょう。
このような工夫をしていても、どうしてもだるさが抜けない場合は、昼休みにデスクで10~15分程度の仮眠をとるのもおすすめです。ただし、30分以上眠ってしまうと逆効果になります。15分程度できちんと目覚めるようにしましょう。
9月病は、有名な「5月病」と同じように、夏の長い休みのあとに仕事や学校が始まり、環境が大きく変わったことでのストレスや変化に体がついていけず、心身の不調が出てしまった状態のことを言います。
5月病とほとんど同じですが、特徴的なのが睡眠障害です。5月病と違い、日照時間が減ってくる9月頃は睡眠を司るメラトニンの分泌が減りますので、睡眠時間は意識的に確保しましょう。