PM2.5の発生源は?体への悪影響を抑えることはできる?

2019/9/1

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

近年、大気汚染物質の名前としてよく聞かれる「PM2.5」ですが、「なんとなく怖いもの」というイメージが先行している人は少なくないのではないでしょうか。PM2.5は確かに大量に吸い込むと肺がんなどの健康被害を及ぼす可能性が高い物質ですが、具体的な対策を立てるためにはまずその物質について知る必要があります。

PM2.5とはどんな物質なのか、体に与える影響や予防について、正しく知っておきましょう。

PM2.5ってどんな物資なの?

「PM」とは「Particulate Matter(粒子状物質)」の頭文字を取って略したもので、工場や自動車・船舶・航空機などから排出された煤煙や粉塵、硫黄酸化物(SOx)など、大気汚染の原因となる粒子状の物質を指します。「2.5」は大きさを表し、直径2.5μm以下の非常に小さな粒子であることを示しています。

1μmは1mmの1000分の1で、人間の髪の毛の直径が約70μm程度ですから、PM2.5は髪の毛の直径に約28個も並ぶと考えると、非常に小さい粒子であることが想像しやすいでしょう。そして、この小ささが非常に問題で、小さいゆえに肺の奥深くまで入り込み、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患などのリスクを高めます

一般的に、ヒトの上部気道(鼻腔・咽頭・喉頭、すなわち鼻から喉まで)には10μmよりも大きい粒子でも入り込めます。しかし、それよりも下の気管や気管支には10μmよりも小さい粒子しか入れません。さらにその先の肺や肺胞には、2.5μmよりも小さい粒子しか入れないのです。つまり、PM2.5ほど小さい粒子の場合、肺や肺胞にまで入り込む確率が非常に高いと言えます。

特に、もともと呼吸器系や循環器系の疾患を持っていた人や、高齢者・子供など免疫力の弱い人はこれらの粒子の影響を受けやすいと考えられますので、より注意が必要です。

PM2.5はどこから発生しているの?

このような粒子状物質は、主に「直接的な発生」「大気中での化学反応」の2つの経路で発生すると考えられます。以下がそれぞれの具体的な発生経路の例です。

物の燃焼など、直接的な発生
  • ボイラーや焼却炉など、煤煙で発生する
  • 鉱物の堆積場など、粉塵で発生する
  • 自動車・船舶・航空機などが排出する
  • 土壌・海洋・火山の噴煙など、自然由来
  • 喫煙・調理・ストーブの使用など、家庭で発生する
大気中での化学反応による発生
  • 火力発電所、工場や事業所、自動車・船舶・航空機などの燃料の燃焼で排出される硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)
  • 溶剤や塗料の使用時・石油取扱施設からの蒸発・森林などから排出される揮発性有機化合物
※上記のガス状物質が大気中で光・オゾンと反応し、PM2.5が発生する

PM2.5が体に与える影響って?

PM2.5はその小ささから、肺の奥深くまで入り込み、呼吸器系や循環器系の疾患を引き起こします。具体的には、以下のような疾患です。

呼吸器疾患
慢性閉塞性肺疾患
慢性気管支炎
肺気腫
循環器疾患
高血圧
虚血性心疾患
不整脈
心不全(動脈硬化・血栓)
アレルギー
既存疾患(症状)の悪化
がん
肺がんなど

2013年10月、世界保健機関(WHO)の研究機関IARCは、屋外の大気汚染と、その主要物質であるPM2.5がヒトに対して発がん性を持つ「グループ1」の物質に分類されたと発表しました。つまり、PM2.5はがんの原因になると国際的にも分類されているのです。環境省が定める「健康を維持するのに望ましい濃度」は1日の平均が35μg/㎥であり、70μg/㎥を超えると健康に被害を及ぼす可能性が高くなるとされています。

PM2.5に気をつけるべき時期は?

日本国内でのPM2.5に関する取り組みは2009年の基準設定に始まり、それ以前から取り組んでいたSPM(PM6.5-7.0相当の浮遊粒子状物質)を減らすための工場・事業所からの煤煙発生施設の規制や自動車排出ガス規制などの努力も含めて、徐々に減少傾向にあります。

環境省が発表している、国内全測定局のSPM濃度の年平均によれば、1974年には0.16mg/㎥を超えていましたが、翌年には0.09mg/㎥以下に減少し、移行も緩やかに減少を続け、2001~2008年までは0.04mg/㎥以下を維持しています。

日本国内ではこれだけ減らす取り組みが進んでいたPM2.5がにわかに取り沙汰され始めたのは、2013年の1~2月にかけて中国(北京)で発生した大規模な大気汚染により、PM2.5の値が記録的に悪化したことによります。中国は日本からみて西側に位置することから、偏西風の影響によって、日本にも越境汚染という形でPM2.5が飛散してきたためです。

とはいえ、このときの越境汚染に関しても日本国内の多くの都市では前年・前々年と比較して非常に高い値というわけではありませんでしたが、九州北部で一時的に濃度が約105μg/㎥程度(基準値の約3倍)を観測する事態になったことで、大きな話題となりました。

その後は大きく基準値を超える濃度を記録していませんが、例年、3~5月にかけてはその他の時期と比べてPM2.5の濃度が上昇する傾向にあります。また、飛散量は地域差もありますので、住んでいる地域の濃度を調べるためには、環境庁の公開している大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」(PM2.5をはじめ、二酸化硫黄やSPMなどの速報値を公開)や、各都道府県のPM2.5関連情報サイトなどをチェックしてみましょう。

なお、都道府県などの自治体は1日の平均値が70μg/㎥を超える(健康に被害を及ぼす可能性が高くなる)と判断した場合、住民に注意喚起を呼びかけることが環境省によって定められています。これは、午前5~7時の1時間値が85μg/㎥を超えた場合、または午前5~12時の1時間値が80μg/㎥を超えた場合は1日の平均値が基準値を超えるとして判断されます。

PM2.5による影響には個人差があるため、この濃度を超えたからといってすべての人にただちに影響が生じるとは限りませんが、リスクを避けるためにも呼びかけがあった場合は不要不急の外出を控えましょう。とくに、子供や高齢者、循環器や呼吸器系の疾患を抱える人は影響を受けやすいと考えられますので、注意が必要です。

PM2.5から身を守るためにできることは?

PM2.5の注意喚起を呼びかけられた場合、不要不急の外出は避け、どうしても外出の必要がある場合はマスクを着用するなどの対策を行いましょう。PM2.5を大量に吸い込まないよう、屋外での長時間の激しい運動はできるだけ避ける必要があります。換気や窓の開閉も、できる限り最小限に抑えましょう。

また、マスクはインフルエンザや花粉症対策で使用する一般的な不織布マスクでも構いませんが、PM2.5の吸い込みを防止する効果はマスクによって異なります。近年では、パッケージにPM2.5に対する効果を記載しているマスクも多くなりましたので、これらの記載をよく確認して購入すると良いでしょう。

医療用・産業用の高性能な防塵マスク(日本の国内基準DS1以上、米国規格N95以上)の場合は微粒子の捕集効率が高いフィルターを使っているため、微粒子の吸い込みを減らす効果が高いとされていますが、長時間の使用には向かないほか、日本の国家検定に合格した「DS1」以上のものは一般的なマスクと比較すると高価というデメリットがあります。

空気清浄機の性能もフィルターの有無をはじめ、機種やメーカーによってさまざまですので、詳細は製品の表示を確認したり、販売店やメーカーに確認してみましょう。

おわりに:PM2.5は物の燃焼や化学反応によって生じる。マスクなどで対策を

PM2.5は、物の燃焼や化学反応によって生じます。髪の毛の直径に約28個も並ぶほどのごく小さい粒子なため、吸い込むと肺や肺胞の奥深くに入り込み、呼吸器系や循環器系の疾患を引き起こす可能性があります。

例年3〜5月には濃度が高くなる傾向があり、花粉とともにマスクで対策を行う人が多いです。近年は一般的なマスクでもPM2.5の吸入防止効果がうたわれていますので、パッケージなどをよく確認しましょう。

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