記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/25
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ストーマとは、いわゆる人工肛門や人工膀胱などのことですが、中でも多いのは人工肛門のタイプです。一般的に人の目に触れるような場所に造られないため、家族などの身近な人がストーマを利用していないとあまり馴染みがないかもしれません。
人工肛門タイプのストーマには2種類あり、場所によって名称やケア方法が異なります。2つのタイプについて、詳しく見ていきましょう。
ストーマとは、手術によって腹部に作られた人工肛門・人工膀胱などの排泄器官のことです。消化器疾患や泌尿器疾患によってできた病巣を切除した後、便や尿の排泄経路を確保するため、消化管や尿路を手術によって体外に誘導して造った開放孔で、便を排出するために消化管を誘導したものを「消化管ストーマ」、尿を排出するために尿路を誘導したものを「尿路ストーマ」と言います。
いずれも腹部に造られ、肛門や膀胱のように排泄をとどめておける(排便・排尿をコントロールできる)ような機能を持っていません。そのため、ストーマ造設の手術を受けた患者さんは、排泄に関して特別なセルフケアの方法を習得する必要があります。
大腸の大部分を占める「結腸」は長いため、どの部分にストーマを造設するかによって4つに分類されます。結腸ストーマは、まとめて「コロストミー」と呼ばれることもあります。
さらに、ストーマには永久的に造設されるものと、一時的に造設されるものの2種類があります。
つまり、位置と器官の長さによって「永久上行結腸ストーマ」などと分類されます。コロストミーの多くはS状結腸ストーマだとされています。
回腸(小腸の一部)に作るストーマを「回腸ストーマ」と言います。別名は「イレオストミー」とも呼ばれ、大腸・直腸・肛門などの切除術を受けることで作られる回腸ストーマ(イレオストミー)は永久的ストーマで、大腸をすべて摘出しても肛門を残すことができ、小腸で作った袋を肛門に縫いつける手術ができれば一時的ストーマとなります。一時的回腸ストーマも、結腸ストーマと同じように数ヶ月後には閉鎖術を受けて通常の排泄に戻ります。
イレオストミーはさまざまな原因によって、直腸や結腸を使わないようにしなくてはならない場合に造設されます。一般的に右腹部に造られ、水様便を排出します。ストーマは回腸内部の粘膜により赤く見え、術後6~8週間程度でむくみが取れて一定の大きさになります。回腸ストーマは大腸ではなく小腸から直接排出を行うため、小腸で分泌される消化酵素も一緒に排出されます。
小腸では食物が消化酵素によってアミノ酸・糖分・脂質・ビタミン・ミネラルなどに分解されるため、この消化酵素が皮膚につくと皮膚のただれの原因となります。回腸ストーマの場合、結腸ストーマよりもしっかりと装具を貼りつけ、皮膚に排出物が接触しないよう気をつけなくてはなりません。
回腸ストーマの場合も、永久のものと一時的なものの2種類があります。
回腸ストーマは部位による名称の違いがありませんので、永久的か一時的かによる分類となります。
イレオストミーとコロストミーは、それぞれのストーマによって排便の性質や回数などが異なるため、それぞれ注意点も異なります。
項目 | コロストミー | イレオストミー |
---|---|---|
位置 | 上行・横行・下行・S字のそれぞれによる
(※最も多いS字は左下腹部) |
右下腹部 |
便の形状 | 軟便〜有形便 | 水様便 |
弁のpH | 7.5~8.9 | 7.8~8 |
排便の回数 | 日に1回〜数回 | 頻回 |
ストーマの理想的な高さ | 0.5~1.0cm | 1.5~2.0cm |
面板の条件 | 皮膚を保護する | 皮膚保護剤と耐久性 |
ストーマ袋の形状 | 下部開放型、閉鎖型 | キャップ式、下部開放型 |
排液パックへの接続 | 基本的に使用しない | 手術直後や、排便量が多い場合は使用 |
凝固剤 | 使用しない | 場合によっては使用 |
食事指導 | 臭気・ガス・便秘・下痢などへの注意 | フードブロッケージ(食物繊維がストーマ開口部にひっかかって詰まる)・脱水への注意 |
入浴時の取扱い | 自宅なら外してもOK | 場所に関わらず、貼付のままを推奨 |
コロストミーとイレオストミーの大きな違いは、コロストミーは大腸につながっていること、イレオストミーは小腸につながっていることです。つまり、コロストミーの場合はある程度水分や消化酵素が抜けている状態なので、便がある程度形になっていて、皮膚への刺激も少ないのですが、イレオストミーの場合は消化酵素が混ざったままどろどろと流れ出すため、水様便で皮膚への刺激も強く、排便していない時間を確保するのも難しいのです。このことを意識してケアをしていく必要があります。
例えば、コロストミーの面板よりもイレオストミーの面板の方が皮膚保護剤が必要で、さらに耐久性を持たせておくことが必要です。ストーマの近接部に「用手成形皮膚保護剤(手で容易に変形でき、アルコールが含まれず微調整できる)」を用いて密着・耐久性を上げるという方法もあります。
また、ストーマ袋の交換についても皮膚保護剤が保持できる間隔で設定する必要があります。早すぎてももったいないですし、溜まりすぎても漏れる危険性があります。また、交換中に汚染されるのを防ぐため、食後3~4時間は交換を避けること、ストーマの下に不織布やビニール袋を置くことに気をつけると良いでしょう。
永久的ストーマと一時的ストーマに関しては、基本的にケア内容の違いはありません。ただし、永久的ストーマが身体障害者手帳の交付対象であるのに対し、一時的ストーマは身体障害者手帳の交付対象外なため、ストーマ装具などが全額自己負担である点に注意が必要です。また、患者さん本人の気持ちの面での違いは大きいと言えます。
結腸ストーマは、消化酵素があまり含まれないため、汚染に気をつける必要はありますが、皮膚への刺激はそれほど強くないこと、排便の回数もある程度パターン的に決まってくることなどから、回腸ストーマほどの注意はいらないことが多いです。
一方、回腸ストーマの場合は消化酵素が含まれ、皮膚につくとただれなどが起こることから、皮膚に付着しないよう細心の注意が必要です。医療機関での指導をきちんと受けておきましょう。