イレウスの兆候になる症状って?悪化させないためにできることは?

2019/8/27

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

イレウスとは、腸の動きが麻痺したり、小腸や大腸の一部が狭くなることなどによって腸の内容物が留まり、腹痛や嘔吐などがみられる病気です。今回はイレウスの症状や原因などをご紹介します。

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イレウスの症状の特徴は?

イレウスの主な症状として、腹痛、嘔吐、腹満、排ガス・排便の停止などが挙げられます。

腹痛には、腸の中にある内容物を体外へ出すために肛門の方へ送り出すことで起きるものと、腸が締めつけられることで起きるものとがあります。前者は周期的に痛みが強くなったり、弱くなったりすることを繰り返し、後者は急激に腹痛が起こり、継続して痛みが続くことが特徴です。

また、イレウスによって狭くなった部分よりも口側の腸に内容物が溜まり、腹部膨満が引き起こされることもあります。長時間にわたってこの状態が続いた場合、小腸、十二指腸、胃へ逆流が起こり、胃液の嘔吐がみられるようになります。

一方で、狭くなっている部分よりも肛門側へは内容物がいかないため、排便や排ガスがみられなくなります。基本的に熱は微熱程度、またはみられないといわれています。

ただし高熱が出た場合、腹膜炎や腸炎などが炎症を起こしている可能性があります。症状が進行した場合、腹部が張って呼吸がしにくくなる、脈が速くなる、繰り返される嘔吐などによって皮膚が乾燥する、また脱水症状などもみられることがあります。また腸への血流障害がみられると、腸壁がダメージを受けて腹膜炎、敗血症、さらにはショック状態へ進行し、命が危険にさらされる場合もあります。

急に高熱が出る、呼吸が荒くなる、脈が速くなる、意識がもうろうとするなどの症状がみられる場合にはすぐに手術を行うなどの処置が必要となることがあります。腹痛、嘔吐、吐き気、腹部膨満感に加えて、排便や排ガスが止まるなどの症状がみられた場合にはイレウスである可能性があります。また、嘔吐したものに便の臭いが混ざっている場合、イレウスが進行している可能性がありますし、急に発症して強い痛みがある場合には「絞扼性イレウス」という血流障害を伴うものである恐れがあります。

ただし、排便や排ガスの症状が特に強くみられない場合には、軽症またはイレウスでない可能性があります。このような症状がみられたら、すぐに病院を受診しましょう。

 

イレウスの兆候が出る原因は?

イレウスの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。

折れ曲がる、ねじれる

なんらかの影響により、腸が他の腹壁や腸にくっついて、その部分がねじれたり折れ曲がったりすることで腸の中が狭くなった場合が考えられます。イレウスの原因では最も多く、過去に腹膜炎を起こしたことのある人、手術を受けたことのある人などに起こりやすいといわれています。

腫瘍などで狭くなる

腫瘍があって腸が狭くなる、腸結核などの感染症による後遺症などによって起きることがあります。中高齢者に多くみられるといわれています。

食べものなどが詰まる

便秘の人の場合、糞石や胆石、消化の悪い食べものなどが詰まった場合に小腸と大腸の間で起きることがあります。

周囲から圧迫される

腸のまわりにある血管に圧迫されたり、腸以外のがんがある場合に、腸が周囲から圧迫されて引き起こされることがあります。

腸が入り込む

狭い穴に腸が入り込んでしまい、抜けなくなった場合に起きることがあります。

腸捻転が起きている

腸が自然にねじれる腸捻転を起こした場合にみられることがあります。S状結腸など、腸が長い人によくみられます。

腸重積がみられる

ポリープなどがあると、腸の一部が腸の中へ入り込むことでみられることがあります。小腸と大腸の境目でよくみられ、腸重積と呼ばれています。

神経障害などがある

脳梗塞や脊髄損傷などの神経障害がある場合、腸の動きが麻痺することで内容物が流れずに起きることがあります。また、高体温、腹膜炎などでも腸の動きが麻痺する場合があります。

イレウスの兆候かどうかを見極める方法は?

まずはじめに、問診を行います。便秘の有無や、嘔吐している場合には嘔吐後に症状が軽くなるかなどを尋ねるといわれています。また、腸閉塞や腹部手術の既往歴についても確認します。

次に腹部を診察します。腹膜炎がみられないか、腸が弛緩と収縮を繰り返す腸蠕動などを確認し、腹膜炎の症状がないか、腸蠕動のはたらきが安定しているかなどをみます。血流障害のみられる絞扼性イレウスの場合、軽く腹部を押すことで痛みを伴う腹膜炎の症状がみられるため、特に注意して観察します。

また検査では、血液検査や画像検査などを行います。イレウスになると嘔吐をする、体液などが排出されることで脱水症状を起こしやすい状態です。脱水があった場合、血液中のクレアチニンや尿素窒素が高くなるといわれています。そのため、血液検査により、脱水の有無やその程度などを確認するといわれています。また、絞扼性イレウスの場合、CPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)やLDH(尿酸脱水素酵素)などの上昇もみられます。画像検査では、腸管の拡張や腸管のガス像に異常がないかなどを確認するために、腹部のレントゲン撮影を行います。また造影CT検査で腸管部分の血流障害がないかなども確認していきます。

イレウスの症状を最小限にとどめるには

イレウスは通院による治療では治らないか、悪化する恐れもあります。そのため、診断がついた時点で入院し、腸管の減圧を行う治療を始めると考えられています。また、飲食を止め、輸液も行います。場合によっては電解質バランスの補正などが必要となることもあります。

血行障害によって腸管が強いダメージを受けている場合には、緊急手術をすることもあります。小腸に異変がある場合には、長いチューブを鼻から消化管に挿し、ゆっくりと内容物を吸引する治療が行われます。ほとんどの場合、この治療で改善がみられるといわれています。ただし、5日程度続けても効果がみられない場合には、手術が行われることもあります。また大腸に異変がある場合には、大腸内視鏡などで処置をすることもあります。

おわりに:腹痛や嘔吐、排ガス・排便の停止などがみられたらイレウスの可能性があります

イレウスはなんらかの影響で腸が折れ曲がる、異物などが腸に詰まるなど、さまざまな原因により起きる可能性のある病気です。気になる症状がみられたら病院を受診し、早めの対処を心がけましょう。

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