糖分不足で頭痛になる?解消するにはどんなことをすればいいの?
2019/8/22
近年は「糖質制限ダイエット」などの流行もあり、糖質は悪いものという偏ったイメージが蔓延しています。糖質は確かに摂取しすぎると肥満や生活習慣病の原因になることもありますが、逆に極端に不足しても体調不良を引き起こす原因となるのです。
そこで、糖分不足が体調不良を引き起こすメカニズムと症状、解消するにはどんなことに気をつければいいのかについてご紹介します。
糖分不足で頭痛になるって本当?
糖分不足が体に異常を引き起こす状態を「低血糖症」と言います。必要以上に血糖値(血中の糖分濃度)が下がってしまうことで、日常的に甘いものや炭水化物を摂りすぎたことで血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が過剰に分泌されて血糖値が下がりすぎたり、逆に極端に炭水化物の摂取量が少なくて血糖値が下がったりというように、血糖値を調節する体の機能が正常に働かなくなってしまった状態です。
具体的には、以下のような症状が現れます。
- 頭痛、ふらつき、めまい、日中の眠気、動悸、手足のふるえ、異常な発汗、冷や汗
- 慢性的な疲労感、湿疹やアレルギー症状、関節炎、目のかすみ、筋肉痛
- 思考力や判断力の低下、攻撃的衝動の増加(キレやすくなる)
- 抑うつ傾向、怒りや苛立ちをコントロールできない、無気力
体をめぐる糖分全体のうち、約20~30%は脳で消費されます。ですから、血糖値が下がると真っ先に脳機能の低下、特に理性を司る大脳皮質の働きの低下によって感情や精神面に不調が現れます。上記の「思考力や判断力の低下」「キレやすくなる」「無気力になる」といった症状がそれに当たります。
また、一方でなんとか血糖値を上げようと食欲を刺激したり、アドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経を興奮させるホルモンを分泌したりします。これらの興奮系のホルモンによって、怒り・敵意・焦燥感・落ち込みなどの感情が増幅されてしまいます。
糖分不足で頭痛を引き起こすのはどうして?
上記のような糖分不足が起こる理由として、これまでは糖尿病の治療薬など、血糖値を下げる薬による副作用が指摘されてきました。しかし、近年では糖質の過剰摂取や、極端な摂取制限による影響がよくみられるようになっています。極端すぎる「糖質制限ダイエット」などは、まさに低血糖症を引き起こす原因のひとつです。
そのほか、炭水化物に砂糖で甘味をつけた「ケーキ」「菓子パン」などを一度に大量に食べることも、糖分摂りすぎの原因となります。血糖値を下げて一定に保つホルモン「インスリン」は膵臓で作られて分泌されますが、このように大量に糖質を摂取する食生活を続けていると、膵臓が疲れきってインスリンの分泌量をコントロールできなくなり、大量分泌されるようになった結果、必要以上に血糖値が下がってしまうのです。
さらに、アレルギー・胃下垂・貧血・甲状腺機能障害などの疾患や体質を抱えている人は低血糖症を引き起こしやすいことも指摘されており、注意が必要です。食事量は人と同じように摂っていても、胃腸が弱いと必要量を消化できなかったり、栄養分を体内に取り込めていてもビタミンやミネラルの不足によって体内でエネルギーにならなかったりするのです。すると、結局のところ「エネルギーの材料=糖質が足りない」という状態になってしまいます。
糖分不足の頭痛を解消するには?
こうした低血糖症が原因の頭痛の場合、頭痛薬を飲むことにはあまり意味がありません。もし、極端な摂取制限のために低血糖症になっていると考えられる場合は、まず糖分を摂取して糖分不足を解消しましょう。とはいえ、精製された砂糖を大量に摂取しては結局、逆に糖質を摂りすぎたことによる低血糖症を招くため、急激に糖分を大量に摂取するのは危険です。
そこで、まずはハチミツや天然のメープルシロップなどをごく少量ずつ補給しましょう。これらの糖質は精製されていないため、血糖値の上昇が緩やかで体(主にインスリンを分泌する膵臓や、食物を消化する胃腸)に負担がかからないだけでなく、ミネラルを多く含んでいるため、体に不足しがちな栄養素も一緒に摂取できます。
精製されている糖分とは、グラニュー糖やザラメ、上白糖などのことを指します。これらの糖分は体に吸収されやすいのですが、そのぶん急激に血糖値が上昇するため、インスリンの大量分泌による低血糖症を引き起こしてしまうのです。さらには、酸化による細胞の老化を促進してしまい、肌荒れの原因にもなってしまうため、普段から食べ過ぎには十分注意しましょう。
可能なら、普段から甘いものを食べるときにはハチミツや天然のメープルシロップ、黒砂糖、きび砂糖などを摂取するのがおすすめです。また、食事を規則正しい時間に摂取し、空腹の時間を長く空けすぎないことも重要です。
ただし、低血糖症が起こったときにこうした精製されていない糖分がいつでも手元にあるとは限りません。そんなときには、応急処置としてチョコレートなど、精製されている砂糖から作られたもので補給しても大丈夫です。とはいえ、これも大量摂取は禁物ですから、くれぐれも一時的に頭痛を抑えるための少量にとどめましょう。
1日に食べていい糖分量の目安は?
1日の必要カロリーの約60%は、糖質から摂取すると良いとされています。例えば、1日に2,000カロリーを必要摂取量とされている人なら、1,200カロリー程度を糖質で摂取すると良いでしょう。成人男性と女性の目安を以下に具体例として記載します。
- 成人男性…約1,560kcal(必要カロリー:約2,600kcal)
- 成人女性…約1,150kcal(必要カロリー:約1,900kcal)
これはあくまでも、通勤や通学などの動き回る活動があり、適度な運動習慣がある人の値ですから、デスクワークが中心であまりスポーツなどの習慣がないという人はこれより減らす必要があります。また、肉体労働が多かったりスポーツが趣味という人はこれよりも多くても構いません。
糖質が多く含まれるのは、炭水化物と呼ばれるご飯・パン・麺類・イモ類のほか、甘みを感じる砂糖・果物・ハチミツなどです。糖質は摂取しすぎると肥満や糖尿病などの生活習慣病を招きますが、極端な不足が続くと前述のような体調不良や、体力の低下・疲れやすくなるといった症状を引き起こします。あくまでも、適度な摂取を心がけましょう。
おわりに:糖質は摂取しすぎも極端な摂取制限も体に悪影響を及ぼします
糖質は「太る」などのイメージから、どうしても悪いものとして認識されてしまいがちですが、それはあくまでも過剰摂取した場合で、極端な摂取制限も体に悪影響なのです。頭痛やめまいなどの身体的な影響だけでなく、攻撃性や思考力・判断力の低下、抑うつ状態などの精神的症状も引き起こします。
糖質は、1日の摂取カロリーのうち約60%程度を摂取するのが望ましいとされています。適度な量を摂取するようにしましょう。