記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
動脈硬化は加齢とともに気をつけなくてはならない疾患の一つとして良く知られていますが、動脈硬化が進行すると、腎臓にも異常が発生することをご存知ですか?脳卒中や大動脈瘤などのよく知られた疾患の他にも、腎臓にも疾患が起こるのです。
動脈硬化の原因や兆候、そして動脈硬化によって腎臓にどんな異変が起こるのかについてご紹介します。
動脈とは、酸素や栄養素を豊富に含んだ新鮮な血液を「心臓から送り出す」ための血管です。血液が全身に流れるよう、勢いよく流れるため、この勢いで破れたり傷つくことがないよう、血管には弾力性があります。また、血管の内側も非常になめらかで、動脈の内側をスムーズに流れることができます。
この動脈の内側にコレステロールなどが溜まり、血管の壁そのものも硬くなってしまい、血液の流れが悪くなってしまった状態が動脈硬化です。動脈硬化が進んでいくと、ますます血管の弾力性は失われ、最終的には血管が傷ついて破れたり、動脈瘤ができて血液の流れが悪くなったりします。その結果、動脈瘤が破裂して命に危険が及んだり、脳卒中や大動脈瘤、腎不全、心筋梗塞などを発症する恐れがあります。
こうした動脈硬化が起こる原因はまだ完全に特定されていませんが、血中のコレステロールや中性脂肪の増加「脂質異常症」や、高血圧・糖尿病などの「生活習慣病」、肥満(メタボリックシンドローム)や喫煙などが動脈硬化を進行させる一因になっているとわかってきています。
動脈硬化になると、まず脳・心臓・足に以下のような兆候があらわれます。
これらの兆候が現れ、一向に回復しないようなら、動脈硬化の兆候の可能性があります。
こうした動脈硬化が腎臓で起こると、「腎動脈狭窄症」という疾患を引き起こします。これは腎臓の動脈が狭くなる疾患で、いくつかの原因がありますが、近年よく発見されるようになっているのが動脈硬化によるものです。全身の動脈の中でも特に首や心臓、腎臓などの血管で動脈硬化が起こりやすいことが知られていますが、これまでは高血圧や腎機能障害につながりにくかったことから、発見することが難しかったのです。
しかし、近年の超音波検査やCT検査などの技術の進歩によって、腎動脈の状態が簡単に詳細に調べられるようになりました。こうして、この疾患が従来考えられていたよりも多く存在していることがわかってきたのです。腎動脈狭窄症による難治性高血圧症だと判明すれば、血圧や腎機能を改善することにも役立ちます。実際、こうした原因の解明により、それまで内服していた降圧剤を中止できるほど改善できた例も報告されています。
腎動脈狭窄症の症状としては、以下のようなものがあります。
これらの症状は単独で出ることもあれば、複数出ることもあり、複数の症状が当てはまるようなら、より腎動脈狭窄症の可能性は高くなります。複数の症状が出ている場合、ぜひ専門医の診察を受けましょう。
腎動脈狭窄症のうち、動脈硬化が原因である場合、治療法は「内服薬によるもの」「血管内を治療する」という2つの方法があります。
内服薬の場合、腎臓の血管が詰まらないよう血液をスムーズに流す「抗血小板剤」が使われます。同時に、動脈硬化のリスクを減らすため、コレステロール値を下げたり、糖尿病の治療を行ったりという治療も行います。また、喫煙している場合はこれも動脈硬化を進行させる要因になりますので、禁煙してもらいます。
血管内を治療する方法としては、狭くなった血管を拡張する「ステント」という金属の筒を挿入して血管内に置き、元のように血管を広くするものがあります。ステントは足のつけ根などの太い血管からカテーテルによって挿入し、カテーテルの先端についた風船を膨らませて血管を広げた状態でそこに留置します。
動脈硬化によって引き起こされる疾患として、脳卒中や大動脈瘤、心筋梗塞などは有名ですが、その他にも腎不全を引き起こすことがありました。この腎不全を引き起こす疾患として、動脈硬化による「腎動脈狭窄症」が近年よく発見されるようになってきたのです。
腎動脈狭窄症は内服薬またはステントによる血管拡張の治療が行われます。重篤な状態に進行する前に、兆候が見られたらぜひ専門医に相談してみましょう。