記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日本呼吸器学会が2017年に発表したガイドラインでは、65歳以上の高齢者に対し肺炎の予防接種を受けることを強く推奨しています。今回は高齢者をはじめ、成人が肺炎の予防接種を積極的に受けるべきとされる理由を解説していきます。
肺炎を引き起こす原因菌・ウイルスには複数の種類がありますが、このうち肺炎球菌によって起こる肺炎の予防には、肺炎球菌ワクチンの接種が効果的であることがわかっています。
代表的な肺炎の原因菌として知られる肺炎球菌は90以上もの種類を持ち、肺炎以外にも髄膜炎や中耳炎、副鼻腔炎などの感染症・炎症も引き起こします。普段は主に子供の喉や鼻の粘膜に棲みつき、くしゃみや咳で感染を拡大しますが、健康で免疫力の高い大人であれば肺炎を発症・重症化させる可能性は低いです。
しかし一方で、肺炎球菌は莢膜(きょうまく)と呼ばれる厚い膜に覆われているため人体の免疫で退治することが難しく、かつ、抗生物質に耐性を持つものも確認されています。
肺炎球菌による肺炎は、「日常生活のなかでかかりやすく、一度発症すると重症化しやすい恐ろしい感染症」です。高齢者をはじめ、成人に対し肺炎球菌ワクチンの接種と肺炎の予防が、強く推奨されているのはこのためです。
成人の中でも、以下の条件に1つでも当てはまる人は、肺炎の予防接種を受けることが非常に強く推奨されています。
特に65歳以上の高齢者は、年齢とともに確実に体の免疫力が低下しています。若い世代に比べ、何らかの生活習慣病や持病がある可能性も高いでしょう。
本人がまだまだ元気なつもりでいても、ちょっとした体調の変化から肺炎を発症しやすく、さらに急激に重症化することも少なくありません。体力と免疫力の弱った高齢者にとって、肺炎は死に至る可能性もある重篤な病気なのです。
健康であり、過去5年以内に肺炎球菌ワクチンを接種していないなら、季節に関係なく、年間を通して肺炎球菌ワクチンを接種できます。上記条件に当てはまるなら、早めに日程を調整して予防接種を受けましょう。
ただし、病気の治療中や治療直後は、人体が本来もつ免疫機能が低下した状態であるため、ワクチンを接種しても肺炎球菌への十分な免疫を獲得できない可能性があります。病気の治療中、または治療直後で肺炎球菌ワクチンの接種を考えている場合は、必ず主治医に相談のうえタイミングを決めてください。
また過去に肺炎球菌ワクチンを接種していても、以下いずれかの条件に当てはまる場合は再接種が必要になります。
医師に病歴や、過去のワクチン接種について伝えたうえで再接種しましょう。
肺炎球菌ワクチンは、予防接種法に基づき自治体が実施する「定期接種」という制度の対象となっています。このため、2019年現在、過去に成人用肺炎球菌ワクチンを接種したことがない人に限り、公費助成を受けてワクチンを受けることが可能になっています。
定期接種の対象となるのは、その年度に以下の年齢になる高齢者です。
なお、受けられる公費助成の内容や、定期接種の実施時期は自治体により異なります。詳しくはお住まいの自治体に確認してください。
肺炎のなかでも、肺炎球菌による肺炎は日常のなかで感染しやすく、かつ、重症化しやすいと言われています。このため年齢とともに免疫力・体力の両方が低下する高齢者をはじめ、すべての成人に肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されているのです。特に65歳以上の高齢者、持病を持つ人にはワクチン接種が強く推奨されています。自身や家族の年齢・体調・病歴に合わせて、適切なタイミングでのワクチン接種を行いましょう。