記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/10/16
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腎臓は、体から余分な水分や老廃物を排出する上で大事な働きをする臓器です。腎臓の機能が低下するとむくみや高血圧、抗カリウム血漿といったトラブルがみられるようになり、悪化すると人工透析を受けなければならなくなります。この記事では、人工透析をやめることはできるのかや、透析に至らないようにするにはどうすればいいのかなどを解説します。
「透析」とは、腎臓の働きの一部を人工的に補う治療法で、腎臓のもっとも重要な働きである「余分な水分、電解質、様々な老廃物の排泄」を代行します。
腎臓には、飲食することで体に溜まった余分な水分や塩分、老廃物を尿として体外に排出するほか、赤血球をつくるホルモンを作って貧血を防いだり、カルシウムの吸収をうながすビタミンDを作って骨を丈夫にするなどの役割があります。
しかし、慢性腎臓病(CKD)になると、これらがうまく働かなくなります。進行して慢性腎不全になると、さらにその働きが低下してむくみ、高血圧、肺水種、体に酸が溜まるアシドーシス、高カリウム血症、高リン血症、尿毒症、貧血、低カルシウム血症や骨の量・質の低下など、体にさまざまな異常があらわれます。この状態になると命の危機につながることから、もとの腎臓の働きを補う治療が必要となります。
透析は腎臓の機能を回復させるものではありませんので、さまざまな薬の助けや食事の自己管理などとともに生涯わたって続ける必要があります。したがって、透析が必要な段階まで症状が進むと、透析以外の治療法は「腎移植」しかありません。
腎移植には生体腎移植と献腎移植があり、生体腎移植は年間1,500件ほど、献腎移植は年間200件ほど行われています。ただし、献腎移植の場合の待機期間は成人で平均約16年となっています。
腎移植も透析も受けず、緩和ケアのみ受けるという選択肢もないわけではありません。ただその場合、患者自身が残された時間をどのように過ごしたいのかをよく考え、家族はもちろん、主治医や福祉担当者と相談して本人にとっても家族にとっても「もっとも良い選択」ができるように慎重に検討してください。
定期的に腎機能をチェックし、かかりつけ医から症状やステージに合わせた治療や生活指導を受けるようにしましょう。糖尿病の人は定期的な採血でHbAlcを7未満に維持してアルブミン(タンパク)尿がでないようにし、すでに出ている人は自宅血圧でBP125/75未満を目指して高血圧をコントロールします。
食事では塩分摂取量が重要で、高血圧なら1日6g以下を目標とします。また、内服薬やサプリメントにも注意が必要です。造影剤、消炎鎮痛剤は腎臓に負担をかけ、頭痛・生理痛や発熱などで使う一般の市販薬も腎臓機能を悪化させます。
アルミニウムを含む胃腸薬、マグネシウムを含む便秘薬の大量長期服用なども副作用が出やすくなります。1週間ほど服用して症状が改善しなければかかりつけ医に相談しましょう。サプリメントや健康茶などの長期利用も避けた方が良いでしょう。
腎不全に起こしてしまうと、生涯にわたって透析で腎臓の働きの一部を人工的に補うか、腎移植するしかありません。人工透析まで至らないよう、定期的な腎機能チェックと並行してかかりつけ医を見つけ、必要な治療や生活指導を受けるようにしましょう。高血圧、塩分摂取量に気をつけ、必要以上の薬やサプリメントの常用を避けるようにしてください。