腎性尿崩症ってどんな病気?症状・原因・治療法を解説!

2020/3/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓は、血中を流れてくる体内の老廃物をフィルターのような作用でこし取り、尿として排出するという大切な役割を持っています。この腎臓の機能が何らかの原因で低下すると、さまざまな疾患につながります。
そのうちの一つが腎性尿崩症で、尿の量が一般的な腎機能の人と比べて非常に多くなるという特徴があります。腎性尿崩症の症状・原因・治療法について、詳しく見ていきましょう。

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腎性尿崩症とは

「腎性尿崩症(じんせいにょうほうしょう)」とは、尿細管がバソプレシンという抗利尿ホルモンに反応せず、ろ過された水分を体に再吸収できないため、薄い尿が大量に作られてしまう疾患のことです。この疾患の多くは遺伝によって生まれつき起こりますが、腎臓に影響する薬剤やほかの疾患によって合併症として引き起こされる場合もあります。

尿崩症には腎性と中枢性の2種類があり、腎性尿崩症よりも中枢性尿崩症の方が一般的に多く見られます。中枢性尿崩症は脳の下垂体という部分からのバソプレシン分泌に障害があり、バソプレシンが十分に分泌されないことが原因で起こります。

症状は多尿とそれに伴う強烈なのどの渇き、多飲などです。とくに先天性の場合、新生児期や乳児期からも尿の量が明らかに多く、水分を大量に摂取する傾向があります。また、大量に排尿することで体内の水分が減って血中のナトリウム濃度が上がり、高ナトリウム血症によるけいれんを引き起こすこともあります。

腎性尿崩症の原因は?

腎性尿崩症の直接的な原因として、バソプレシンに対する反応性が悪いことを紹介しました。腎性尿崩症には、遺伝性(生まれつき)と後天性(薬剤やほかの疾患によって引き起こされる)の2種類に分けられますが、それぞれ以下のような理由によります。

遺伝性腎性尿崩症では、性染色体の一つであるX染色体上の遺伝子がこの疾患を引き起こします。ただしこの疾患遺伝子は劣性遺伝であり、X染色体を2本持つ女性では、片方のX染色体上に疾患を引き起こす遺伝子があっても、もう片方のX染色体上にはない場合、疾患を発症しません。男性の場合はX染色体を1本しか持たないため、そのX染色体上に疾患を引き起こす遺伝子があった場合、疾患を発症します。このような特徴から、この疾患は女性よりも男性の発症が圧倒的に多いです。

女性がこの遺伝子を片方のX染色体上だけ持つ「保因者」であった場合、その女性の息子が発症する可能性は高くなります。ごくまれに、この遺伝子以外の遺伝子異常によって男女ともに遺伝性腎性尿崩症が引き起こされる場合もあります。

後天性腎性尿崩症では、主にリチウムなどの薬剤がバソプレシンの作用を阻害すること、また、多発性嚢胞腎・鎌状赤血球貧血・髄質海綿腎・重度の腎盂腎炎・アミロイドーシス・シェーグレン症候群・肉腫または骨髄腫などのがん、などの疾患によって腎臓が侵食された場合に腎性尿崩症を発症します。

そのほか、血中のカルシウム濃度が高い場合、カリウム濃度が低い場合、とくにこれらの状態が長期にわたって続いている場合などにバソプレシンの作用が一時的に阻害されることがあります。また、腎性尿崩症の一部はこれらのいずれにも当てはまらず、原因不明という場合もあります。

腎性尿崩症になるとどんな症状がみられる?

腎性尿崩症になると、多尿・多飲など以下のような症状がみられます。

  • 尿の量が大量である(とくに1日3,000mL以上)
  • 強いのどの渇き
  • 水分をたくさん摂る、またはそれによる食欲の低下
  • 食欲低下による体重の現象

このほか、夜間のトイレが1~2時間おきと非常に頻繁であったり、それに伴って夜間にも頻繁に水を飲むなどの症状がみられることもあります。こうなると生活していく上で大きな障害となりやすいので、患者さんやご家族自身が自覚症状として気づきやすく、医療機関にも早い段階で訪れやすいです。飲む水は常温や温かいものよりも、冷水を好む傾向にあります。

また、薬の副作用として腎性尿崩症が起こるものとして、以下のようなものが挙げられます。これらの医薬品を「指定原因医薬品」と呼ぶこともあります。

  • 躁状態治療薬(炭酸リチウム)
  • 抗リウマチ薬(ロベンザリット二ナトリウム)
  • 抗HIV薬(フマル酸テノホビル ジソプロキシル)
  • 抗菌薬(イミペネム・シラスタチンナトリウム)
  • 抗ウイルス薬(ホスカルネットナトリウム水和物)

代表的な薬剤は以上のようなものですが、他の医薬品によって発症した例も報告されています。これらの医薬品を服用したあと、数日から1年程度で発症することが多いですが、中には数年以上経過してから発症する人もいます。

さらに、これらの医薬品を飲んだ人にランダムに副作用が発現するわけではなく、以下のようなリスク因子を抱えている人に比較的副作用が発現しやすい傾向があります。

  • そもそも腎機能の障害や低下がある
  • 高齢者
  • 利尿薬の作用などで脱水状態となっている
  • うっ血性心不全
  • 高カルシウム血症、低カリウム血症

どうやって治療するの?

腎性尿崩症の治療は、食事療法と投薬治療の両面から行います。まずは、脱水予防のためにのどの渇きを感じたらすぐに十分な量の水分補給を行います。乳幼児や高齢者など、とくに腎機能が未熟や低下している場合にはこまめに水分補給を行う必要があります。水分を摂取しない時間が数時間続くと重度の脱水に陥ることもありますので、水分補給には十分に注意が必要です。

また、尿によって排出しなくてはならない老廃物の量を減らすことで尿量を減らすため、塩分やタンパク質を控えた食事が有効になることもあります。とくに、食事中のナトリウムを非常に制限することは、後述の治療薬(サイアザイド)の効果を高めるという報告もあります。しかし、タンパク質の極端な制限は栄養不良やそれに伴う幼少期・学童期の発育不良を招く可能性もありますので、タンパク質は摂取し過ぎを防ぐにとどめ、ナトリウムのみを制限するのが理想的です。

投薬治療にはサイアザイド系利尿薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)が使われます。それぞれ別のメカニズムで働きますが、いずれも腎臓で再吸収されるナトリウムと水分の量を増加させ、尿の排出量を減らします。

おわりに:腎性尿崩症は、多尿と多飲が特徴的な腎疾患です

腎性尿崩症は、本来なら腎臓で老廃物をこし取ったあと、体内に再吸収されるべき水分を再吸収できず、薄い尿を大量に排出してしまうという疾患です。このため、多尿とそれに伴う多飲が非常に特徴的な疾患です。

遺伝性・後天性の2種類があり、遺伝性の場合はとくに乳幼児期から多尿・多飲の症状が見られ、早めに医療機関に訪れやすいとされています。尿量を減らすための投薬と、塩分などを制限する食事療法で治療を行います。

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