腎臓が弱っている人は夏の過ごし方に気をつけよう!

2019/8/14

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

腎臓とは、体のさまざまな器官や臓器が代謝して生じた老廃物を集め、尿として排出することが主な役割です。そのほかさまざまな面で体内環境を調整する役割を持っていて、急激な環境の変化は腎臓の調整機能に大きなダメージを与えることがわかっています。
夏はとくに体内外の環境変化が激しい季節です。夏に腎臓への負担が大きくなる理由とは?夏の水分補給の注意点とは?これらの仕組みを知り、夏の過ごし方に気をつけましょう。

腎臓はどんな働きをしているの?

腎臓の主な役割は、血液をろ過して体中のさまざまな組織の活動で生じた老廃物をこし取り、尿を作ることです。また、そのほかにも以下のような役割があります。

  • 体内の水分や電解質(ナトリウムなど)の調節
  • 血液が極度に酸性やアルカリ性に傾かないよう調節
  • 血圧を調節するホルモンや、赤血球を造るホルモンの分泌
  • タンパク質代謝物の排泄、骨を造るホルモンの分泌

このように、腎臓は老廃物をこし取って尿を作るフィルターとしての役割だけでなく、血液や水分、電解質、ホルモンなどの調節を行い、体内環境の全体を調整する役割を果たしているのです。

夏は腎臓に過酷な季節…。その理由は?

前章でご紹介したとおり、腎臓は水分・電解質・ホルモンなどによって体内環境を調整しています。このため、大量の発汗とアルコールなどの摂取機会が増えることによって、脱水症状を引き起こしやすい夏は腎臓に負担がかかりやすいと言われています。

まず、アルコールには利尿作用があり、体内の水分をどんどん排出してしまう傾向があります。すると、体内の水分量が減り、体内を流れる血液の水分量も減ります。その結果、腎臓に流れる血液の量が減るとともに、老廃物を排出するための尿量も減ってしまうため、溜まってしまった老廃物が腎臓にダメージを与えるリスクが高くなるというわけです。

さらに、アルコールを大量に摂取すると尿酸値が高まり、利尿作用との相互作用によって尿酸が腎臓内で結晶化し、「尿酸結石」という尿路結石の一種ができてしまうこともあります。

大量に汗をかくことが脱水症状の原因となることはよく知られていますが、これもアルコールと同じように尿の量が減ってしまうため、尿の濃度が濃くなってしまい、老廃物が腎臓にダメージを与えるリスクが高くなります。さらに、腎臓内で「シュウ酸」と「カルシウム」が結合し、尿路結石ができやすくなるというリスクもあります。いずれの場合も、こまめな水分補給を行い、尿が濃くなりすぎないように注意することが大切です。

また、腎臓がこのようなダメージを長期にわたって受け続けると、体内の老廃物や毒素をろ過して排出する能力が低下していき、最終的に慢性腎臓病に陥ることもあります。慢性腎臓病は初期からある程度進行するまでは自覚症状がほとんどないため、症状が出て気づいた頃、あるいは健康診断などで指摘される頃には既に腎機能が回復不可能で、透析や腎移植が必要な状態にまでなってしまっていることも少なくありません。

腎臓の負担に気づく方法はある?

このように、初期の慢性腎臓病には自覚症状がほとんどないとされていますが、腎臓の機能低下の兆候として見られる症状はいくつかあります。以下のような症状が複数見られるようなら、腎機能が低下していると考えられますので、早めに病院で検査を受けておくと良いでしょう。

  • 疲れやすく、立ちくらみがよく起こる
  • 二日酔いになるほどアルコールを摂取することがしばしばある
  • 塩分の多い食事が好きで、よく食べる
  • 足がよくつる
  • 夜間によくトイレに行く

アルコールの大量摂取は前述のとおり、利尿作用と尿酸値の上昇の相互作用によって腎臓に大きなダメージを与えます。また、塩分を過剰に摂取すると余分なぶんを排出しなくてはならないほか、血圧が上がって腎臓の負担が大きくなりますので、塩分の多い食事が好きな人はそうでない人と比べ、長年のダメージが蓄積している可能性が高いと言えるのです。

さらに、足がつりやすいこと、夜間のトイレ回数が増えることは腎機能の低下によって見られる典型的な症状です。体の水分バランスが崩れて常に脱水状態であると足がつりやすくなり、腎機能の低下によって濃い尿を作ることができなくなると、老廃物を排出しようと薄い尿を作り続けるため、トイレが近くなります。

腎機能が低下している人の、水分補給の注意点は?

腎機能の低下のみが指摘されていて、人工透析や移植などが必要なレベルまで進行していないという状態なら、真水の水分補給についてとくに制限は必要ありません。しかし、経口補水液などの塩分を含む飲料水などについては、医師の指示を仰ぎましょう。また、食事などから塩分を過剰に摂取しすぎないよう、食生活についての指導を受ける必要があります。

ただし、心不全や肺水腫などを合併発症している場合については、水分制限が必要となることもあります。心配な場合は、必ず主治医に相談しましょう。

透析を受けている人の場合、水分量も厳格に制限する必要があります。排尿の量にもよりますが、人工透析を受けるレベルの人は自ら排出できる尿量が非常に少ないため、飲んだ分の水がどんどん体内に溜まってしまうことが大きな問題です。そこで、透析から透析の間までの体重増加(飲んだ水分によって増えた体重)がドライウェイトの3~5%以内におさまるようにするのが目安です。例えば、ドライウェイトが50kgの人であれば、1.5kg~2.5kg程度の体重増加なら許容範囲となります。

人工透析を受けている人の場合、汗をかいたからとどんどん水分や塩分を摂取してしまうと心臓に負担をかけてしまうため、非常に危険です。もちろん、全く水分補給をしないのも熱中症の危険性がありますので、体重増加をこまめにチェックしながら、少しずつ水分を補給するようにしましょう。

おわりに:夏の大量発汗やアルコール摂取機会の増加は腎臓へのダメージを増やします

夏になると大量に汗をかくほか、アルコールなどの摂取機会も増えます。アルコールには利尿作用があるだけでなく、尿酸値を増やしてしまうリスクもあり、これらによって腎臓内の老廃物の量が増えてダメージが増えるほか、尿路結石ができる危険性もあります。

そこで、腎機能が弱る前に真水で水分補給を心がけましょう。また、人工透析を受けている人は、逆に水分量を制限する必要があります。主治医の指示に従いましょう。

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