記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/9/17
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
CT検査やMRI検査は、体内の様子を画像で描き出す検査方法です。検査を行うとき、より正確な診断をするために、造影剤を使います。造影剤を使わなくても検査自体は行なえますが、病変を発見できないこともありますので、基本的には造影剤を使って検査を行います。
そんなCT検査・MRI検査の概要や、使う造影剤の種類や考えられる副作用、デメリットなどをご紹介します。検査を受けるときのため、知っておくと安心です。
造影剤とは、体内の様子を撮影して診断する「画像診断」を行うとき、画像にコントラスト(白黒の差)をつけたり、特定の臓器を強調するために患者さんに投与される医薬品のことです。画像診断に用いられる画像は一般的に白黒なため、コントラストをつけないと撮影しても臓器などの状態が不明瞭で診断ができないのです。
造影剤には、以下のような種類があります。
このうち、もっとも多く使われるのは「ヨード造影剤」です。多く使われているだけに、副作用の報告も他の造影剤よりは多いのですが、もちろん副作用が起こることはまれで、基本的には安全に使うことができます。軽いものは吐き気・動悸・頭痛・かゆみなど、重いものは呼吸困難・意識障害・血圧低下など(1~2万人に1人程度)で、軽いものは自然に治っていくことが多いですが、重いものは専門医が症状に応じて処置を行います。
また、喘息の既往歴がある場合は、そうでない人に比べて重い副作用にかかる確率が約10倍高いとされています。
CTとは「Computed Tomography(コンピュータ断層撮影)」の略で、X線を使って体内を輪切りにした画像を撮影する検査です。ドーナツ状の機械の中に、対となるようにX線の管球と検出器が配置されていて、それらを回転させて撮影していきます。そして得られたデータを計算・合成し、輪切りの画像を作成するというわけです。
検査はベッドに寝たまま行い、検査部位や方法によって時間は異なるものの、概ね5〜15分程度の短い時間で終了します。冠動脈CTの場合、心臓という比較的細かい部位を観察することになりますので、30分程度かかります。しかし、いずれの場合も非常に短時間で体にメスを入れることなく体内の様子を詳細に観察することができるため、脳内出血など緊急を要するときにも欠かせない検査です。
CT検査で使われる造影剤は「ヨード造影剤(水溶性ヨード造影剤)」というもので、ヨウ素を含む薬剤です。通常、腕の静脈から投与され、血管を通じて全身の臓器へと分布していきます。これにより、疾患や各種臓器の血流の状態、血管の情報などがわかります。造影剤を使わなくてもCT検査自体は実施できるのですが、疾患の存在や血流の状態などがわかりにくくなってしまうため、正確な診断ができないこともあります。
ヨード造影剤が投与されると、体内のバランスを保とうとする働きにより、熱感や疼痛が起こります。とはいえ、これは正常な身体反応で一時的なものですから、副作用ではありませんし、数分程度で自然におさまります。基本的には安全に使える薬剤ですが、副作用が起こる場合は、以下のようなものが起こります。
これらの副作用は使用後すぐに起きる場合と、数時間~数日経過後に起きる場合があります。使用後すぐに起きた場合はもちろんそのまま医療機関で適切な処置を受けますが、帰宅後や数日後に起こった場合も処置を受けられますので、すぐに検査を受けた医療機関を受診しましょう。
医療行為にはメリットの反面、どうしてもデメリットも発生してしまうものです。CT検査の場合はそれが放射線(X線)による被ばくで、即健康被害が出るような線量ではありませんが、他の放射線検査と比べると被ばく線量は高い方です。放射線の影響は「確定的影響」と「確率的影響」に分類され、それぞれ人体に対して以下のような影響を及ぼします。
まず確定的影響ですが、通常、CT検査の臓器線量は20~30mGy程度で、人体でもっとも敏感な時期と言われる、胎児期のうちの器官形成期と呼ばれる時期に奇形が生じる線量である100mGyを超えるものではありません。つまり、出生後の人体に対して即座に臓器などの奇形をもたらすものではないと考えられます。
さらに、確率的影響においても、通常、CT検査の実効線量は10mSv程度です。200mSv以下の被ばくに関しては人体への影響に関する定説はまだなく、20分の1程度の線量では、発がんの確率はあったとしても低いと考えられます。
このように、理論的にはほぼ安全と考えられる範囲の放射線を使用していますが、そうは言ってもむやみやたらとCT検査を乱用したり、常に全身の撮影を行うわけではありません。検査を発注する医師が診療にその検査が本当に必要なのかどうかを判断するとともに、診療放射線技師はより低い線量で質の高い画像を得られるよう、常に意識しています。
CT検査の被ばく線量で基本的に健康被害をもたらすことはないと考えて構いませんが、どうしても不安な場合は検査を受ける予定の医療機関で相談してみましょう。
MRIとは「磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)」の略で、X線は使わず、強い磁石と電磁波を使って体内の水素原子をゆさぶることで、体内の状態を断面像として描き出す検査です。CT検査と比較して、とくに脳や脊椎・四肢、そして子宮・卵巣・前立腺などの骨盤内の病変に対して優れた検出力を発揮します。また、MRI検査の手法としてMRA(血管を描写する)、MRCP(胆のう・胆管・膵管を描写する)などの言葉を使うこともあります。
検査は基本的に撮影ベッドに仰向けに寝て行いますが、検査方法や撮影部位によってはうつ伏せ、横向きに寝て撮影する場合もあります。検査部位には「コイル」という器具を装着し、長いトンネルの中で、工事現場のようなさまざまな機械音を出しながら、断片的に撮影を行います。撮影時に心電図や脈波のセンサーなどを装着することもあります。
正確な画像を得るために、できるだけ体を動かさないようにする必要があること、撮影部位によっては何度か息止めをしてもらうこともあります。検査時間は部位によって異なり、30~60分程度かかります。
MRI検査でも静脈注射で造影剤を注入します。MRIで使われるのは「ガドリニウム」という元素を含む造影剤で、静脈内に注射され、ヨード造影剤と同様に全身の血管や臓器に分布していきます。造影剤を使わなくてもMRI検査自体は実施できますが、疾患や検査部位によっては、より正確な診断を行うために造影剤が必要となることがあります。
造影剤を使うと血管の状態・臓器の血流の状態・疾患の部位の血流の状態や特徴がわかりますので、より正確に診断が行なえます。このため、造影剤を使わないと疾患を発見できない場合もありえます。ガドリニウム造影剤も基本的には安全な造影剤とされていますが、まれに以下のような副作用が起こることがあります。
また、以下のような人は造影剤を使えないことがありますので、MRI検査を受ける前に医師に相談しましょう。
このうち、授乳中の人に関しては、造影剤使用後24時間は授乳を行わず、母乳は搾乳後捨てるということを行う場合は造影剤を用いた検査もできます。24時間が経過した後は、通常通り母乳を授乳して構いません。また、造影剤はほとんどが尿として排出されますので、検査後は排出を促進するために水分をしっかり摂りましょう。食事に制限はありません。
MRI検査のデメリットは主に2つで、1つめは撮影時間がかかること、2つめは体内に金属がある場合は検査できないことです。
CT検査が5~15分、長くても30分程度で終わるのに対し、MRI検査は30~60分程度かかります。加えて、狭い空間で大きな音が聞こえるため、耐え難い苦痛と感じる人もいます。このため、病院によってはヘッドホンを装着し、リラックス効果のある音楽などを流しながら検査を行うなど、工夫しているところもあります。
体内に金属があるとはどういう状態かというと、心臓や脳の血管を広げるためのステントという金属製の管を入れている場合や、人工内耳、一部のペースメーカーなどを利用している場合のことを言います。このように体内に金属があると、MRI機器の強力な磁石に引き寄せられ、体内の金属が動く場合があり、非常に危険なためMRI検査は行なえません。
また、磁気の影響を受ける金属、つまり時計・クレジットカード・アクセサリーなどは撮影の前に体から外しておく必要があります。もちろんこれらは検査の前に必ず説明や確認がありますので、その際は速やかに外しましょう。
CT検査やMRI検査では、体内の状態を画像に描き出します。造影剤はこの画像をより正確に、詳細に描き出せるように補助するもので、造影剤がないと細かい病変を発見できないこともあります。
CT検査は放射線によって行いますので、健康被害が起こる量ではありませんが、放射線被ばくが起こります。MRI検査は放射線は使いませんが、体内に金属がある場合は使えません。どちらの検査も医師の指示で使い分けることが大切です。