記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/9/18 記事改定日: 2020/7/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
造影剤とは、CT検査やMRI検査など、画像診断の際に体内を見やすくするために使われる薬剤です。健康診断のときに胃や腸の状態を見る「バリウム」も造影剤の一種です。体質によっては造影剤でアレルギー反応が出やすいことがあります。造影剤アレルギーが発生すると、どんな症状が起こるのでしょうか。
造影剤とは、画像診断検査において、体内の状態をよりわかりやすくするために使う薬剤のことです。
主にCT検査やMRI検査で使われる造影剤は静脈に注射して全身に分布させますが、血管造影検査ではカテーテルを用いて直接血管内(基本的に動脈、一部静脈)に注入します。また、胃や大腸のバリウム検査、消化管や胆道系の造影検査などの場合、経口・経内視鏡・経肛門などで目的の臓器に対して直接使われることもあります。
使われる造影剤の種類は、大きく分けて以下の3つです。
造影剤投与後にみられるアレルギー症状としては、症状が軽いものから重いものまでさまざまです。
アレルギー症状は個人差が大きく、30年ほど前の造影剤はアレルギーを含めた副作用が出やすかったのですが、年々改良が続けられました。現在、主に使われているヨード造影剤では軽度な副作用で約3%、重篤な副作用で約0.004~0.04%と、頻度は非常に低くなっています。
「苦しくなった」という症状が出た場合でも、アレルギーによって血圧低下や気道の閉塞が起こったのか、造影剤の注入速度が速かったために起こった一時的な症状なのか区別することは難しいです。現在の造影剤ではアレルギーはほとんど出現していない可能性もあります。
しかし、このような症状が起こった場合は、まずアレルギー症状と仮定して対応した方が安全なため、アレルギー症状として対応が行われます。
もともとアレルギー体質の人や、喘息のある人、過去に喘息にかかったことがある人などでは、造影剤に対する重篤なアレルギー反応が起こりやすくなります。
また、造影剤は腎臓から尿として排出されますので、腎機能が低下している人ではさらに腎機能を悪化させる可能性もあります。ですから、これらに該当する患者さんは造影剤を使うかどうか、医師とよく相談しましょう。
アレルギーがあって造影剤のリスクが高いと考えられる場合、まずは造影剤を使わない検査で代用できないかどうか検討されます。例えば、冠動脈の状態を見たい場合、造影剤を注入するCT検査を行うのが一般的ですが、術前検査のように正常な状態かどうかが確認できればよいという場合は、負荷心電図やRI検査などの造影剤を使わない検査で代用できることもあります。
ただし、アレルギーによるリスクよりも、造影剤によって画像診断が見やすくなるなどのメリットが上回ると医師が判断した場合には、造影剤を使う検査を行うこともあります。
例えば、重篤な心筋梗塞で生命の危険がある場合、すぐにでも詳細な画像診断結果が必要です。そこで、ヨードテストを施行したり、ステロイドホルモンの抗アレルギー作用に期待して造影剤の前に注射したりして、造影剤を用いた検査と治療を行う場合があります。
副作用が発生した場合は、その場ですぐに専門スタッフによる適切な緊急処置を行います。その後、症状が落ち着いてから患者さん本人とご家族に対し、担当スタッフから症状と状況の説明を行います。また、極めてまれではありますが、重篤な副作用が起こった場合にも即座に医師と専門スタッフが対応できるようなシステムが準備されています。
これらの検査で正常な状態ではないと診断された場合は、冠動脈の詳細な状態を確認する必要があります。そのため、アレルギーによる副作用のリスクと検査のメリットをよく検討し、造影剤を使うかどうかを患者さんと医師の間で相談してもらうことになります。
造影剤はかつてアレルギー症状を含めた副作用が出やすいものでしたが、日々改良が重ねられ、現在ではアレルギー症状を含めた副作用が起こる確率は非常に少なくなっています。
しかし、もともとアレルギー体質の人では、重篤な副作用が起こるリスクが高いことがわかっています。こうした人は、造影剤を使用するかどうか医師とよく相談し、異変が起きたら速やかに対処してもらうようにしましょう。