健診と検診は同じ?それとも違うもの?

2019/10/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

同じ「けんしん」という読み方でも、漢字で書くと「健診」と「検診」の違いがあります。一般的に「けんしん」と言うと、より多くの人が受ける「健診」のイメージの方が強く、「検診」の方はあまり意識されないことが多いのですが、実はこの2つにははっきりとした違いがあります。

そこで、この記事では「健診」と「検診」の違いについてご紹介します。どちらの意味も正しく理解し、目的を明確にして受けましょう。

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健診と検診は違う?

「健診」と「検診」は、どちらも同じ「けんしん」と読みますが、「健診」は「健康診断(健康診査)」の略で、「検診」は「検査・診察」の略です。それぞれ、以下のような特徴があります。

健診(健康診断・健康診査)
健康であることを前提に、体全体の状態を総合的に調べ、病気の危険因子を発見する
検診(検査・診察)
がん検診など、特定の疾患があるかどうか調べ、早期発見・早期治療を行う

健診は健康を診断(診査)するものですから、病気があるかどうか、そのリスクがあるかどうかをチェックします。会社で行う定期健診や、学校での健康診断、乳幼児健康診査、年齢による特定健康診査などが含まれます。肥満やメタボリックシンドロームはないか、血圧は正常の範囲内かなど、体の全体的なチェックとともに、生活習慣を見直すことが目的です。

このように、疾患を発症する前に防ぐことを「一次予防」と言います。一次予防には健康増進(生活習慣の改善)と特異的予防(予防接種や職業病対策など)がありますが、健診による一次予防は主に健康増進が目的です。健康診断を受けた後は、結果をもとに食生活や運動、飲酒、喫煙、ストレス解消などの生活習慣を見直しましょう。

一方、検診は特定の疾患または病態があるかどうか調べるもので、主に発症すると重篤化して治療が困難になったり、コストが莫大にかかったりするような疾患について調べます。有名なものでは胃がん・大腸がん・肺がん・子宮がん・乳がんなどのがん検診や歯科検診などがあり、体全体ではなく特定の臓器を検査します。

このように、特定の疾患にかかっているかどうかを早期発見し、早期治療を目指して処置を行うことを「二次予防」と言います。早期発見と早期治療の両方を二次予防と言い、検診は早期発見に当たります。人間ドックは基本的には精密な健康診断とされますが、オプションでスクリーニング検査を行う場合は検診であると言えます。

健診にはどんな種類があるの?

健診(健康診断・健康診査)には主に以下の3種類があります。

定期健康診断
一般的に、会社で年1回(業務内容によっては半年に1回)行われる健康診断
労働安全衛生法で実施が定められていて、事業主が費用を負担し、労働者の健康をチェックするもの
学校での健康診断
学校保健安全法で実施が定められ、毎学年6月30日までに行われる健康診断
身長、体重、栄養状態、視力、聴力、目・耳・皮膚・心臓などの疾患の有無について調べる
生徒とともに、学校職員についても健康診断をすることが定められている
特定健診・特定保健指導
40~74歳のすべての健康保険加入者と扶養者に行われる健康診断
いわゆるメタボリック・シンドローム健診で、平成20年から始まった

多くの方にとってなじみがあるのは学校の健康診断だと思います。幼稚園から大学までどこの学校でも行われていますので、誰でも毎年受診していた記憶があるはずです。しかし、近年では胸囲や座高、背筋力や握力など、健康状態や疾患の危険因子と直接関係のない項目は除外・省略されることも多くなっています。

学校卒業後も、企業で正社員として働いている場合や、パートタイマーであっても労働時間や条件によっては健康診断を行う必要があります。デスクワークなどの一般業務では雇用主が年1回の健康診断を受けさせることが義務づけられていますが、特定業務の従事者には半年に1回健康診断を受けさせることが義務づけられています。

特定健診は、身体測定・血圧測定・血液検査などを行うもので、メタボリックシンドロームの該当者や予備軍を減らすことを目的に始まりました。この健診で該当者または予備軍と診断された人には、自らの健康状態を正しく理解するとともに、生活習慣改善のための目標を自ら設定・実施できるように特定保健指導が行われます。

検診の種類は?

特定の疾患の有無をチェックする検診には、対策型検診と任意型検診の2種類があります。対策型検診は、集団全体(一般的には市区町村などの住民全体)の死亡率を下げるために行われるもので、地方自治体などの公共機関が主体となって行います。そのため、費用は無料か、ごく少額の自己負担のみで済みます。

一方、任意型検診は医療機関などが任意で提供する医療サービスとしての検査です。個人の死亡リスクを下げることを目的としていますので、基本的には全額自己負担で行います。任意型検診ではさまざまな検査方法から好みの検査方法を選べますが、中には有効性が確立されていないものもありますので、医師とよく相談しながら検査項目を決めていくと良いでしょう。

最初にご紹介した人間ドックでは、基本である生活習慣病の予防を中心とした健康問題(心・肝・腎・肺などの働き)に関して精密検査を受けたり、助言・指導を受ける場合は「健診」の延長線上と言えますが、オプションでがんや心臓、脳のスクリーニング検査を選んで行うこともでき、こうしたオプション検査を行う場合は「検診」に含まれると言えます。

がんはかかると重篤化して治療が困難になるほか、かかるコストも膨大になり、死亡率も高い疾患です。そのため、自治体を中心に公的な検査も多く行われていますので、健康診断だけでなく対策型検査や任意型検査を受け、早期発見・早期治療を行うことが大切です。

おわりに:健診は体全体の検査、検診は特定の疾患の検査という違いがあります

大まかに言うと、「健診」は体全体の健康状態を調べるものであるのに対し、「検診」は特定の疾患かどうかを調べるものです。そのため、通常は年に1回行われる「健診」だけで構いませんが、年齢や健康状態によっては「検診」を受けた方が良いこともあります。

「検診」の代表的なものはがん検診で、特定の臓器にがんがあるかどうかを調べます。自治体などが実施している対策型検診がたくさんありますので、ぜひ受けておきましょう。

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