クラリス®︎が処方されるのはどんなとき?考えられる副作用は?

2019/10/3

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

私たちの体が疾患を発症する原因はさまざまですが、とくに感染症と呼ばれる一連の疾患は、体内に病原体となる微生物が侵入することによって起こります。そのため、感染症を治療するには主に入り込んだ病原体微生物を薬剤で殺菌することになります。

クラリス®︎はそうした「抗生物質」と呼ばれる薬の一種です。では、クラリス®︎はどんな疾患に効果を発揮するのでしょうか?また、どんな副作用が考えられるのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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クラリス®︎ってどんな薬?

クラリス®︎は、マクロライド系抗生物質と呼ばれる薬で、細菌が増殖するのを抑えて抗菌作用を表します。そのため、細菌が原因のさまざまな感染症に対する治療薬として使われます。病原となる微生物には細菌やウイルス、真菌(カビ)などの種類がありますが、クラリス®︎は「細菌」のうち、「グラム陽性菌や一部の陰性菌、マイコプラズマ、クラミジアなど」に有効な抗生物質です。

細菌に感染して起こる疾患(感染症)では皮膚に腫れや発赤・かゆみを生じたり、ときに化膿したり、痛みや発熱などの比較的重い症状が出ることもあります。これらの症状は、主に体内に侵入した細菌を追い出そうとする免疫反応によるものですから、ほとんどは細菌が死滅すればおさまります。

クラリス®︎はさまざまな細菌に対して有効なため、呼吸器や耳鼻科の領域を中心に、各診療科で広く使われています。のどの痛みや発赤などを伴う「風邪」にも処方されることもあります。本来はインフルエンザなどを含め、一般的なウイルス性の風邪に対しては無効ですが、細菌による二次感染と判断されるときや、その予防のために使われるのです。

クラリス®︎はどんな病気に処方される?

クラリス®︎には、200mgと50mgの錠剤、そしてドライシロップの3種類があります。200mgのクラリス®︎錠の適応と、50mgのクラリス®︎錠・ドライシロップの適応は少し異なります。

200mg錠の場合

クラリス®︎200mg錠は、以下のような菌種と感染症に効果・効能を発揮します。

一般感染症
適応菌種:クラリス®︎に感性のあるブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、クラミジア属、マイコプラズマ属など
適応症:表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷および手術創などの二次感染
肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
尿道炎、子宮頸管炎、感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎など
マイコバクテリウム属
適応菌種:クラリス®︎に感性のあるマイコバクテリウム属
適応症:マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症
ヘリコバクター・ピロリ
適応菌種:クラリス®︎に感性のあるヘリコバクター・ピロリ
ヘリコバクター・ピロリ感染性胃炎
適応症:胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病
早期胃がんの内視鏡治療後の胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症

50mg錠、あるいはドライシロップの場合

クラリス®︎50mg錠またはドライシロップの場合、以下のような菌種と感染症に効果・効能を発揮します。

一般感染症
適応菌種:クラリス®︎に感性のあるブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、レジオネラ属、百日咳菌、カンピロバクター属、クラミジア属、マイコプラズマ属など
適応症:表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷および手術創などの二次感染
咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎、猩紅熱、百日咳など
マイコバクテリウム属
適応菌種:クラリス®︎に感性のあるマイコバクテリウム・アビウムコンプレックス
適応症:後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症

50mg錠やドライシロップは、200mgで効能のあったヘリコバクター・ピロリ菌に関する適応がないほか、マイコバクテリウム属もMACのみの適応となっています。逆に、子どもの罹患者が多い猩紅熱や百日咳にも適応となっていますので、子どもでも安全に使える量の薬剤ということになります。

クラリス®︎服用時に起こる副作用は?

クラリス®︎は、比較的副作用の少ない薬ですが、ときどき吐き気や胃痛・下痢などの消化器症状や、発疹・じんましんなどの皮膚症状が現れることがあります。軽い場合はとくに心配いりませんが、ひどい症状が続くような場合は早めに医療機関を受診しましょう。

また、重い副作用はめったにありませんが、以下のような症状が現れることがあります。念のため、初期症状などに注意して観察しておきましょう。

アナフィラキシー・ショック
じんましん、全身発赤、顔やのどの腫れ、ゼーゼーとした息苦しさ、冷や汗、顔が白くなる
手足がしびれる、脈が弱い、血圧の低下、目の前が暗くなって意識が薄れる
重い不整脈
動悸、毎分120回以上の頻脈、毎分50回以下の徐脈、胸の傷みや違和感
胸苦しい、だるい、めまい、立ちくらみ、気が遠くなる、失神する
重篤な肝機能障害
だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ
皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、尿が茶褐色になる
重篤な腎機能障害
尿が出ない・少ない、尿が濁る・泡立つ、血尿、むくみ、だるさ
吐き気、側腹部痛、腰痛、発熱、発疹
重篤な血液成分の異常
発熱、のどの痛み、口内炎、だるさ
皮下出血(血豆や青あざ)や鼻血・歯肉出血などの出血傾向
重篤な皮膚・粘膜障害
発疹、発赤、水ぶくれ、膿、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ
唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身倦怠感
間質性肺炎
空咳(痰の絡まない咳)、息苦しい、少し動くと息切れする、発熱
大腸炎
激しい腹痛、頻回な下痢、発熱、血液便、下血
横紋筋融解症
手足のしびれ・けいれん、力が入らない、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、尿が赤褐色になる
後から現れる重篤な過敏症状
発疹、発熱、だるさ、吐き気、リンパ節の腫れ、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)

おわりに:クラリス®︎は皮膚や消化管、肺や喉などの感染症に効果を発揮する抗生物質です

クラリス®︎は、病原体微生物のうち「細菌」に対して効果を発揮します。そのため、インフルエンザなど、ウイルス性の疾患の治療薬としては使えませんが、風邪やインフルエンザの際に他の細菌による感染症を起こさないよう、二次感染を防ぐために処方されることがあります。

クラリス®︎は比較的副作用の少ない薬ですが、消化器症状やアレルギー症状が出ることがあります。症状がひどい場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

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