記事監修医師
工藤内科 副院長 工藤孝文先生のスマホ診療できるダイエット外来
工藤 孝文 先生
「睡眠時間は確保できているはずなのに、朝なかなか起きられない」「毎朝なんだかだるい」といった睡眠疲労に、お悩みではありませんか?
今回は、寝てもいまいち疲れが取れない理由と対処法をご紹介していきます。
平日は毎朝早起きして出勤し、夜遅くに帰宅して就寝するサラリーマンやOLの方に多いのが、「休日の寝だめ」です。
日頃の睡眠不足を補おうとして、つい休日は昼過ぎまで寝てしまったり、長時間昼寝をしてしまったりする方も多いかと思います。しかし、睡眠疲労を感じないようにするには、「休日に寝だめせず、毎日同じ時間に起床・就寝する」ことが大切です。
体内時計は、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)のいう所にあります。体内時計は睡眠や覚醒、体温や血圧、ホルモン分泌など生命維持に欠かせないシステムを司っており、この働きによって、各臓器はほぼ24時間周期のリズム(サーカディアンリズム)で動くようになっています。
この体内時計は、朝に太陽の光を浴びることで正しくリセットされます。そして14~16時間後に眠りを促す睡眠ホルモン「メラトニン」が分泌され、夜に自然な眠気がやってくるようになります。
つまり休日に昼過ぎまで寝だめをしてしまうと、朝に太陽の光を浴びることができないため、体内時計がズレてしまいます。すると睡眠や覚醒のリズムも乱れ、「朝起きるのがつらい」「なかなか寝つけない」「日中頭がぼーっとする」といった問題が発生し、海外旅行での時差ボケと同じような現象に見舞われます。
他に起床時のだるさの原因として挙げられるのが、睡眠中のいびきです。
いびきは気道が狭くなっている状態で呼吸をしているときに聞こえる、空気音です。
「いびきはよく寝ているサイン」と思っている人もいるかもしれませんが、いびきは呼吸を調整する自律神経を疲弊させるので眠りの質も下がります。
ひどく疲れているときやお酒を飲んだあとなどに「たまにいびきをかく」くらいなら心配することはありませんが、習慣的にいびきをかいている場合は慢性的に気道が狭くなっている可能性があります。
また、もし呼吸が止まっているようなら「睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)」の恐れもあるので注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っている間に呼吸が止まる病気で、検査と治療が必要です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、医学的には下記のように定義されています(7時間睡眠の場合)。
休日の寝だめが習慣化してしまっている方は、寝だめによる体内時計のズレが睡眠疲労の原因になっている可能性があります。
これらの習慣を心がけて、なるべく寝だめはしないようにしましょう。
もし「昼間はどうしても眠くなってしまう」というなら、20分くらいの昼寝をとり入れてみてください。
20分くらいの昼寝でも脳や体の疲労はある程度回復できますし、20分くらいであれば体内リズムも乱れにくいです。
睡眠中いつもいびきをかいているという方は、まず「右向きの姿勢で寝る」のを試してみてください。横向きの寝姿勢は気道が確保しやすく、いびきをかきにくくなります。また、胃は体の右側に向かってカーブしているので、右向きで寝ると消化の流れも改善します。
途中で寝返りをうつのは自然なことなので、起床時に姿勢が変わっていても特に気にする必要はありません。入眠時だけは右向き寝を意識しましょう。
なお、右向き寝でもあまり睡眠の質が向上しなかったり、慢性的にいびきがひどかったりする場合は、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の専門外来を受診しましょう。
睡眠の質が低下している原因としては、ご紹介したような理由があります。
当てはまるものがある場合はその対策を行い、日々の快眠を目指していきましょう。
※この記事は工藤孝文先生の著書「疲れない大百科 – 女性専門の疲労外来ドクターが教える – (美人開花シリーズ)」を一部編集し、工藤先生の監修のもと発表しています。