記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/11/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
生後まもない赤ちゃんは、まだまださまざまな部分が未発達であり、例えば離乳食を与えられるのは生後半年が過ぎたころからとされているように、食事の内容や味つけには十分気を配る必要があります。
では、水道水は赤ちゃんに飲ませても良いのでしょうか?日本の水道水は世界的に見てもキレイだとされていますが、一方で残留塩素の問題はよく指摘されています。赤ちゃんに水道水を飲ませたいときは、どうすれば良いのでしょうか。
赤ちゃんに水道水を飲ませても良いかどうかが問題になるのは、水道水に含まれる物質の問題です。水道水は、安全のために塩素で消毒されているのですが、この塩素が「残留塩素」という形でごくわずか残ってしまっているのです。そのため、キレイか汚いかで言えば間違いなくキレイな水なのですが、残留塩素が赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性もある、という意見もあります。
赤ちゃんの臓器はまだまだ未発達であり、非常にデリケートです。実際に、水道水をそのまま飲ませると下痢をしてしまう赤ちゃんもいるほどです。日本の水道水に含まれる残留塩素はごくわずかで、一生涯水道水を飲み続けたとしても問題になるほどではないとされていますが、生後まもない赤ちゃんにとっては身体に負担となる可能性がゼロとは言えないのです。
他にも、水道水を塩素で消毒する過程で「トリハロメタン」という物質も出てきてしまい、これもごく微量含まれています。トリハロメタン自体は有害な物質ですが、含まれている量が非常に微量なため、成人が飲み続けてもとくに問題となる物質ではありません。しかし、塩素同様、臓器のデリケートな赤ちゃんにとっては負担となる可能性がゼロとは言い切れないため、避けた方が良いでしょう。
水道水をあげる場合、煮沸すれば良いとされていますが、これは正しく、かつ、家庭でも手軽にできる方法です。煮沸する時間は必ず10分以上にすること、大量の作り置きはしないこと、の2つのポイントだけは忘れないようにしましょう。
10分以上煮沸すれば、塩素もトリハロメタンも蒸発して水中から出ていくので、冷ました後、赤ちゃんにも安心して飲ませることができます。しかし、5分程度しか煮沸しないと、前述の「トリハロメタン」の濃度が高まってしまうだけで出ていかないので、かえって赤ちゃんに与えるにはリスクが高まってしまいます。必ず、煮沸には10分以上かけるようにしましょう。
また、大量の作り置きはしないようにしましょう。これは、煮沸したお湯を冷ました「湯冷まし」は残留塩素が抜けているため、空気中の雑菌が入り込み、繁殖しやすい環境になってしまっているのです。ですから、夏場はもちろん、冬場もできるだけ作り置きはせず、短時間で飲みきれる量を煮沸するようにしましょう。
結論から言うと、ミネラルウォーターや浄水器の水なら赤ちゃんに飲ませても構いません。しかし、ミネラルウォーターの場合は飲ませるときには、以下の2点に注意しましょう。
ミネラルウォーターは煮沸の心配もなく、多くはペットボトルで売っているため、外出先でも使いやすくて便利な水分です。しかし、ミネラルウォーターの中には「硬水」と呼ばれるような硬度の高い水があり、こうした水はミネラル成分が多く、赤ちゃんのデリケートな臓器にはかえって負担をかけてしまうことも考えられるのです。
ミネラルも身体にとっては大事な成分であり、大人にとっては硬水が身体に良いとされることもあります。しかし、赤ちゃんはまだ身体も臓器も未発達であり、ミルクなどにもミネラル分が含まれているため、摂り過ぎるとミネラルバランスが崩れてしまう可能性があるのです。ですから、赤ちゃんに飲ませるなら硬度が100以下でミネラル分が少なめの「軟水」を選びましょう。
また、冷蔵庫から出したばかりのミネラルウォーターは冷たすぎるため、赤ちゃんの胃腸を刺激しすぎてお腹を壊してしまったり、身体が冷えて低体温となり、免疫力の低下や体調不良につながったりすることもあります。ミネラルウォーターを飲ませるときは、必ず赤ちゃんに飲ませる前に常温に戻しましょう。もともと常温のミネラルウォーターなら、開封してすぐ赤ちゃんに飲ませても構いません。
浄水器を使う場合は、これらの心配はとくにいりません。浄水器を通した水は、水道水でも活性炭で塩素が吸着され、中空糸で殺菌類が除去されるとされていますので、水道水を煮沸して湯冷ましする手間が省けます。とくに最近は、浄水器の性能も高くなっていますので、安全性がうたわれているものも多く見られます。
しかし、浄水器の場合、カートリッジの交換などで意外とコストがかかることもあります。設備投資に費用がかかることをよく考えて選びましょう。
水道水をそのまま飲んでも大丈夫になるのは、だいたい1歳ごろとされています。これは、1歳ごろは母乳から離乳食への移行が完全に終わるころであり、離乳食でさまざまなものを食べてきているため、内臓も強くなってきていると考えられるからです。
水道水には消毒用の塩素が残留していたり、その過程で生じたトリハロメタンが含まれていたりします。これらの物質は大人にとっては問題にならないほど微量しか含まれていませんが、赤ちゃんのデリケートな臓器には負担となる可能性がゼロではありません。
そこで、赤ちゃんに水道水をあげる場合は、10分以上煮沸してこれらの物質を取り除きましょう。ミネラルウォーターや浄水器の水なら、そのままあげることもできます。