記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/12/17
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ステロイドという薬の名前は、非常によく知られています。しかし、なんとなく怖い薬というイメージが先行してしまい、なぜその薬が作られたのかといった効能の部分や、実際にどんな副作用が起こるのかについてはあまりよく知られていないのではないでしょうか。
そこで、この記事では副腎皮質ステロイド薬について、どのような疾患に使われるのか、実際に起こりうる副作用にはどのようなものがあるのかなどをご紹介します。
ステロイドとは、副腎という両方の腎臓の上部にある部分で作られる「副腎皮質ホルモン」の一種です。このステロイドホルモンを薬剤として使うと、体内の炎症を抑えたり、免疫力を抑制したりする作用があるため、さまざまな疾患の治療薬として使われます。しかし一方で、副作用も多いため、使用にあたってはリスクと効能を十分に検討しなくてはなりません。
副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)には、アルドステロン(電解質コルチコイド)・コルチゾール(グルココルチコイド)・アンドロゲン(男性ホルモン)などが含まれます。しかし、治療薬として使われるステロイド(副腎皮質ステロイド)のほとんどは「糖質コルチコイド」というホルモンです。
副腎皮質の疾患の診断や、ホルモンが足りない人の補充療法に使われるほか、抗炎症薬・免疫抑制剤として副腎以外の疾患に対して使われます。ステロイド薬が使われる主な疾患には、以下のようなものがあります。
例えば、自己免疫疾患やアレルギー疾患では、本来、自分の身体を守ってくれるはずの免疫機能が自分自身を攻撃してしまいますので、免疫機能を抑制する薬として働きます。一方で、潰瘍性大腸炎のように大きな炎症が起こっている場合には、炎症を鎮める薬として働きます。このように、副腎皮質ステロイド薬は疾患によって体内でさまざまな働きをしているのです。
副腎皮質ステロイド薬を使った治療法は2種類あり、少量を継続的に内服する「経口ステロイド療法」と、大量のステロイドを注射で投与する「ステロイドパルス療法」です。
パルス療法は、一度に大量のステロイドを点滴投与することで一気に血中濃度を上げ、経口ステロイド薬よりも早く効果を発揮させようとする治療法です。メチルプレドニゾロンを点滴投与した場合、血中濃度が上がるのも早いですが、血中半減期も1〜3時間程度と早いため、血中濃度がまた一気に下がりやすいという性質があります。
そこで、疾患によって、あるいは病状によってはパルス療法の後、血中濃度を維持するため、経口ステロイド薬を併用することもあります。しかし、パルス療法を使用した場合は、その後の後療法としての経口ステロイド薬を通常よりも少なめに設定でき、副作用を抑えられるというメリットがあります。
後療法においても、通常の経口ステロイド療法においても、ステロイドを長期服用した際の安全性については確立されていませんので、副腎皮質ステロイド薬の使用はできるだけ短期間に抑えられるような治療を行うことが推奨されます。
副腎皮質ステロイド薬の副作用は非常に多岐に渡っていて、以下のようなものが挙げられます。しかし、これらの副作用が必ずしも全員に起こるものではなく、疾患・ステロイドの量・投与期間によってさまざまですから、気になる症状があった場合はすぐに医師に相談しましょう。
副腎皮質ステロイドホルモンには、免疫を抑制する作用があります。これは自己免疫疾患などの症状を改善するという効能の面と、免疫機能を下げることで雑菌やウイルスなどの侵入を許しやすくなっている、という副作用の両面があります。ですから、ステロイドの投与中は通常よりも手洗い・うがい・マスク着用などの予防対策を徹底するとともに、必要がなければ人混みを避けるなどの工夫も必要です。
ステロイド薬には血糖値を上げる作用や、脂質の代謝を阻害する作用もあることから、糖尿病・高脂血症・動脈硬化などの生活習慣病に似た症状が出ることがあります。これらの予防策は生活習慣病対策と同じで、まずは食事療法からスタートしましょう。ステロイド薬によって引き起こされたこれらの症状は、ステロイド薬を減量すれば改善されます。
また、服用中に注意することは以下の2点です。
まず、前述の副作用で、急に薬の服用を止めると「ステロイド離脱症候群」という症状が出ることがあると説明しました。自己判断で内服を中止してはならない理由はまさにこの離脱症候群によるもので、長期に渡って外部からステロイドホルモンを供給されていた身体はステロイドホルモンの分泌を止めてしまいます。
そのため、ステロイドホルモンを止めるときには、様子を見ながら少しずつ減量していかなくてはなりません。このタイミングも含め、医師の判断が必要です。決して自己判断で勝手に中止したり、減量を始めたりしないようにしましょう。
また、身体にかかるストレスとは、手術・抜歯などで身体にかかる負担のことを言います。このように身体に大きな負担がかかるときは、ステロイド薬の増量が必要になることがありますので、行う前に必ず主治医に相談しましょう。
副腎皮質ステロイド薬とは、人間の体内でも分泌されるステロイドホルモンを薬として利用するものです。体内の炎症を抑えたり、免疫を抑制したりする作用があり、自己免疫疾患やアレルギー疾患、呼吸器疾患、消化器疾患など、さまざまな疾患の治療に使われます。
副作用も多いことはよく知られていますが、とくに免疫機能を抑えてしまうことから感染症にかかりやすくなります。手洗いやうがいなどの予防対策をしっかりしましょう。