記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/1/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
気温がどんどん冷え込んでくる冬は、身体も冷えやすいものです。とくに、冷え性の人にとってはつらい季節ですね。そんな冬の寒さや身体の冷えは、食事や飲み物で身体を内側から温めて追い出してしまいましょう!
この記事では、内側から身体を温めてくれるスパイス「しょうが」「シナモン」「唐辛子」の3つをご紹介します。日々の食事や飲み物に上手に取り入れて、寒い冬を元気に乗り切りましょう。
スパイスと聞くと辛いイメージがありますが、辛味成分を持っているものはスパイスの中でもごく一部です。日本料理に伝統的に使われてきた香辛料が主に魚料理に関するもので、それもしょうが・わさび・山椒・にんにくなど、辛味成分を持ったものに集中していたことから、スパイス=香辛料=辛い、というイメージが定着したようです。しかし、スパイスとは本来「植物由来の香りや風味によって、メインの食材を引き立てる」もので、辛くないものの方が圧倒的に多いです。
しかし、高温多湿の東南アジア諸国では防腐や食欲増進のために、ヨーロッパ諸国では冬に食物を保存しておくための防腐や肉の臭み消しのために、スパイス文化が発展してきました。料理をより美味しくしたり、冬の寒さを乗り切ったりするために、スパイスを活用するのがおすすめです。とはいえ、スパイスは入れすぎてもざらざらと粉っぽい食感になってしまったり、薬のような味がしたりしてしまいます。最初は少なめに、味や風味が足りないと思ったら足していくのがポイントです。
冬のスパイスは、辛さで汗をかくためではなく、お腹を刺激して内側からじんわりと身体を温めるために使います。辛いスパイスは身体がぽかぽかするからと、辛いメニューで身体を温めようとする人もいるのですが、辛いものを食べすぎると汗を大量にかいてしまい、かえって身体が冷えて逆効果になります。
以下では、お腹がぽっと温まる程度のじんわりとした優しい温かさを意識した冬のスパイスの使い方をご紹介します。
しょうがは清涼感のある香りが食欲をそそり、独特の辛味が唾液の分泌を促すことから、消化吸収を助け、食欲増進の効果があります。また、しょうが湯に代表されるように、身体をぽかぽかと温める冷え対策としての効果も昔から利用されてきました。
しょうがの原産地は熱帯アジアですが、中国では古くから漢方処方に使っていました。生のしょうがは「生姜(しょうきょう)」、乾燥したものは「乾姜(かんきょう)」と呼び、「しょうがは百邪を防御する」と古書にも記されているほどです。新陳代謝を促し、身体を温めることで、冷え症・健胃・嘔吐・咳・むかつきなどに効果を発揮するとされています。
実際、しょうがに含まれる辛味成分「ショウガオール」には、血行を促進し、発汗を促すなど体温を維持する効果があると言われています。血行を促すことによる鎮痛作用もあり、風邪を引いたときの節々の痛みや、冷えからくる関節炎などにも効果があるとされ、しょうがの効能にはますます注目が集まっています。
「ショウガオール」は加熱後に変化したもので、生のしょうがには「ジンゲロール」という形で含まれています。ジンゲロールには強い殺菌作用があることから、生魚を使った料理によく薬味として添えられています。しょうがと一緒に食べることで、生臭さを消すだけでなく、ジンゲロールの強い殺菌力による食中毒の予防効果も期待できるのです。
ジンゲロールは、体内に入ってきた病原性の細菌やウイルスも退治してくれますので、風邪やインフルエンザなどの予防にも役立ちます。こうした免疫力アップ効果のほか、解熱作用・鎮痛作用・抗炎症作用など、感染症がもたらすさまざまな症状に対しても効果を発揮するとされています。
このように、しょうがは冬に身体を温めるだけでなく、冬に流行りやすい感染症の予防や、諸症状の緩和にも役立ってくれるのです。
生のしょうがを買ってきたときは、薄くスライスしたものを天日干しにし、乾燥させてから保存しておくと、長期保存できるだけでなく味も凝縮されてさまざまな料理に活用できます。スライスのまま加熱しても構いませんし、ミルなどでパウダー状にしても使いやすいです。手っ取り早く使いたいという人には、ジンジャーパウダーの形でスーパーなどにも売っています。
しょうがはどんな料理と合わせても良いのですが、鍋料理やスープに投入すると、身体を芯から温めてくれることでしょう。塩や砂糖とブレンドしてオリジナルスパイスとして使ったり、紅茶に入れたりしても美味しいです。また、お肉を焼くときにこのジンジャーソルトを用意しておくと、簡単にジンジャーソテーが作れておすすめです。
シナモンと言えば、甘いアップルパイなどにパウダーが乗っているものが有名です。クスノキ科ニッケイ属の樹皮を加工したこの香辛料は、くるくると巻いて乾燥させた「シナモンスティック」や、粉末にした「パウダー」の形でよく使われます。日本ではあまり見られませんが、葉をお茶にしたり、ハーブのように料理に使ったりすることもあります。
日本でよく見られる活用法として、先ほどもご紹介したスイーツのほか、シリアルやパンに、肉料理・煮込み料理・スープの風味づけなどに使われています。そのほか、シナモンには以下のようなさまざまな効果があります。
このことから、冬にシナモンを摂ると、血行を改善し身体を温めてくれる効果が期待できます。そのほか、生活習慣病予防のための健康効果が注目されますので、これらを日頃から意識している人は、ぜひシナモンを上手に食事に取り入れていきましょう。
シナモンは料理に取り入れるのも良いですが、手軽に摂るならやはり飲み物に入れるのがおすすめです。大人から子供まで誰でも飲めるスパイスチャイと、大人向けのホットワインをご紹介します。
チャイとは、インドの紅茶のことで、たっぷりのミルクとお砂糖で深いコクを味わいます。
砂糖やシナモンはお好みで増減して構いません。シナモンのほかにカルダモンやジンジャーなど、お好みのスパイスを加えて味の変化を楽しむのもおすすめです。
先にワインを温めておき、後から砂糖やオレンジジュースを混ぜてシナモンスティックをさし、香りとともにいただきます。
甘みが苦手な人は、オレンジジュースや砂糖の量を調節してみましょう。甘みの強いワインなら、ワインを温めてシナモンスティックをさすだけでも十分です。レストランなどで飲むワインは冷やして飲むイメージが強いかもしれませんが、ドイツやフランスなど、ヨーロッパのクリスマスにはこのホットワインが欠かせないものとされています。冷たいまま飲むよりもアルコール度数が低くなるため、お酒に弱い人でも飲みやすくなっています。一般的には赤ワインで作ることが多いですが、白ワインで作るものもあります。
辛味スパイスの代表とも言える唐辛子には、ビタミンA・ビタミンE・ビタミンB2のほか、カリウム・鉄など多くの栄養素が含まれています。しかし、その性質上大量に食べるものではありませんから、これらの栄養素の摂取という観点から見ると、あまり期待はできません。一方で、唐辛子の辛味成分「カプサイシン」は、少量でも効果を得ることができます。
カプサイシンには、以下のような効果が期待できます。
この他にも、血流改善や肥満予防・便秘予防などから、生活習慣病予防や発毛促進効果も期待できるとされています。
唐辛子もまた、しょうがと同じようにさまざまな料理によく合いますが、中でもにんにくや玉ねぎなど、身体を温める食材と合わせた「チリコンカルネ」「豚キムチ炒め」の2つをご紹介します。
チリコンカルネはメキシコ系料理の1つで、19世紀の中ごろにアメリカのテキサス州で生まれたとされています。今回は手に入りやすい豚肉のレシピをご紹介しましたが、アメリカでは牛ひき肉で作られることが多く、他にも鶏肉や七面鳥で作られたり、肉を使わないベジタリアンアレンジされたりと、バリエーションが豊富です。お好みの食材を使うのも良いでしょう。
キムチは発酵食品ですから、乳酸菌も豊富に含まれています。とはいえ、乳酸菌は熱に弱いので、キムチを乳酸菌摂取目的で食べるなら、納豆などと合わせて生で食べるのが良いでしょう。もちろん、冬に身体を温める辛味成分であるカプサイシンは、加熱しても壊れにくいので安心してください。
この乳酸菌の力で、キムチは発酵が進むにつれて酸っぱくなる性質がありますが、豚キムチ炒めにすれば酸っぱさが和らぎますので、美味しく食べられます。普段は生で食べ、酸っぱくなってきたら豚キムチにと活用するのも良いでしょう。
唐辛子に含まれるカプサイシンは、血流を良くして脂肪を燃焼させるため、身体を温める効果もあるのですが、一方で発汗作用もあるため、食べすぎるとかえって身体を冷やしてしまいます。辛いものを食べると汗をかくのは、口内や皮膚の感覚神経に働きかけて身体が温まったような感覚を起こし、脳が暑いと錯覚するからです。
も奪われることで涼しくなろうとするからです。そのため、冬に辛いものを食べすぎて汗をかくと、かえって身体が冷えてしまうのです。もし、唐辛子の含まれるものを食べて汗をかいてしまったときはすぐに拭き取って着替えると良いでしょう。
また、汗だくになってしまうほど辛いものを食べるのは避け、辛味を抑えるか、摂取する量をほんの少量にしましょう。身体を温める効果と冷やす効果の両方がある唐辛子は、季節に合わせてうまく使い分けるのがコツです。
今回ご紹介した3つのスパイスは、いずれも血行を促進し、身体を内側から温めてくれるものばかりです。血行を促進することは、冷え対策だけでなく、体内の隅々まで酸素や栄養分を運ぶことができ、老廃物を排出するのにも役立ちます。
こうしたスパイスを上手に料理や飲み物に取り入れ、身体を芯から温めるとともに、健康も促進・維持していきましょう。ただし、唐辛子など発汗作用のあるスパイスの摂りすぎには注意してください。