記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2024/2/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
最近は、漢方薬の棚が充実している薬局やドラッグストアが増えてきましたね。花粉症で毎年悩んでいる人のなかには、漢方薬を使ってみたいと考えている人もいるのではないでしょうか。この記事では、花粉症でつらいときによく処方される漢方薬の特徴と服用するときの注意点について解説していきます。
花粉症とは、花粉をアレルゲン(抗原=アレルギーを引き起こす原因物質)として起こるアレルギー反応のことです。免疫細胞のひとつである「リンパ球」は、大きく「Th1リンパ球」と「Th2リンパ球」に分かれていて、それぞれ以下のように役割が異なります。
このうち、花粉症のアレルギー反応を引き起こす免疫とは「Th2リンパ球」です。これらのリンパ球の多さ少なさはシーソーのようになっていて、Th1が多いとTh2が少なく、Th2が多いとTh1は少なくなることが明らかになっています。そのため、花粉症などのアレルギー反応が起こるときは、Th2が増えて両者のバランスが崩れます。バランスが崩れる原因はまだ解明できていませんが、ストレス・食生活の乱れなど、ライフスタイルが影響しているのではないかと考えられています。
以上のような西洋医学の考え方に対して、漢方医学では「症状そのものを抑える治療と、病気になりやすい体質を改善する治療」の両方からアプローチしていきます。花粉症の場合、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状を抑える治療と、アレルギー体質を改善する治療の両方からアプローチしていきます。
漢方医学では「症状そのものを抑える治療と、病気になりやすい体質を改善する治療」の両方からアプローチします。花粉症の場合、その症状は漢方医学で「体内の水分バランスの異常(水毒)」という状態と考えられます。
水毒とは、必要なところには水分が少なく、特定のある部分に水がたくさん溜まってしまっている状態(水の偏在)のことです。たとえば、鼻水や涙目は本来不必要な部分に水が多く溜まってしまっているために起こる症状で、鼻づまりは鼻の粘膜に水分が溜まって腫れてしまったと考えます。花粉症の時期にはなんとなくむくんでしまうという人もいますが、これも水毒の症状のひとつと考えられます。
そこで、花粉症の治療では、水分の偏在を解消して体内の水分バランスを整える「利水剤」を使います。おもに使われるのは「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。体力中等度またはやや虚弱の人、薄い水のような痰を伴うせきや鼻水が出るタイプのアレルギー性鼻炎や花粉症に使われます。
そのほか、「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」も、体力虚弱で手足に冷えがあるタイプのアレルギー性鼻炎に対して使われますが、小青竜湯の治療効果は臨床試験でも鼻水・鼻づまりに対して効果があると判明しているため、花粉症の漢方薬では主に小青竜湯が使われています。
体の「水(すい)」をうまく排泄できないと、体内に余分な水が溜まりやすくなってしまい、さまざまな不調を引き起こします。この水が鼻から溢れ出たものが鼻水で、水が気の流れを妨げてしまうことから、気を動かそうとしてくしゃみが出る、と漢方医学では考えられています。小青竜湯とは、「水(すい)」によって冷えた部分を温めながら水分代謝を促すとともに、「気」を動かし、鼻水・くしゃみなどの症状を抑える漢方薬です。眠くなる成分は含まれていませんので、仕事や学校があって強い眠気が出るのは困る、という人でも飲むことができます。
小青竜湯は花粉症のほか、気管支炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎、むくみや感冒(いわゆる風邪)などに対しても使われることがあります。症状としては、薄い水のような痰を伴う咳や鼻水が出ている人、体力は中等度かまたはやや虚弱な人に対して使われます。
小青竜湯は、生後3カ月未満の赤ちゃんには使えません。また、以下のいずれかに当てはまる人は、服用の前に必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
もし、服用後に「発赤・発疹・かゆみ」「吐き気・食欲不振・胃部不快感」などが現れた場合、副作用の可能性がありますので、すぐに医師や薬剤師に相談しましょう。また、まれに以下のような重篤な副作用が起こることもあります。この場合はすぐに病院で医師の診察を受けましょう。
小青竜湯を1カ月ほど(風邪の場合は5〜6日間)服用しても症状が良くならない場合、服用を中止して医師や薬剤師に相談しましょう。また、長期にわたって飲み続ける場合も専門家への相談が必要です。とくに、花粉症の時期は数か月間飲み続けることもありますので、飲み始める前に一度医師に相談してみるのも一案です。
花粉症は、西洋医学ではアレルゲン(花粉)に対するアレルギー反応だと解明されていますが、漢方医学では水毒という体内の水分バランスの異常だと考えられています。これは、必要なところに水分が少なく、不要なところに水分が溜まってしまっている状態です。そこで、花粉症の治療には、水分の偏在を解消して体内の水分バランスを整える「利水剤」であり、臨床試験でも効果が確認された「小青竜湯」がおもに使われています。小青竜湯には、副作用や使用上の注意点もありますので、使用するときは必ず医師や薬剤師に相談しましょう。