記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/3
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
乳がんは乳腺にできる悪性腫瘍ですが、早期に発見すると治療の効果が高くなります。
自分の乳房がどんな状態であるかを知ることで、異常な変化に気づきやすくなります。
乳房の見た目や感触を把握しましょう。見た目や感触は、月経周期に合わせて変わります。
乳房内の乳腺組織は、月経が始まる前の数日間で活性化します。月経が始まる前にわきの下あたりで乳房が柔らかく、でこぼこしているように感じることがあります。
閉経後、乳腺組織の活動は止まり、胸は柔らかくでこぼこしていません。
自分の乳房を知るというのは、以下のようなことを指します。
・何が正常であるかを知る
・乳房を見たり触ったりする
・見た目の変化を知る
・かかりつけの医師にすぐ報告する
・50歳以上は、定期的に乳がん検診(マンモグラフィー)を受ける
次のような変化があるときは、乳がんの前兆と考えられます。変化に気づいたら医師に相談してください。
・腕を動かしたり乳房を持ち上げたりするとわかる輪郭または形状の変化
・しわやくぼみなど、肌の見た目や触った感じの変化
・痛みの有無に関係なく、一方の胸やわきの下にかたまりや肥厚した部分、もしくは肌のでこぼこ(片方の同じ部分にはみられない)
・乳頭からの異常分泌(特に血性)
・乳首の湿った赤い部分がすぐ治らない
・乳首の位置の変化(引きつっていたり、今までと違う部分にあるなど)
・乳首の上もしくは周辺の湿疹
乳がんの危険因子には、次のようなものがあります。
1. 年齢40歳以上
2. 30歳以上で未婚
3. 初産が30歳以上
4. 閉経年齢が55歳以降
5. 肥満(特に50歳以上)
6. 良性の乳腺疾患の既往(特に増殖性、異型を伴うもの)
7. 家族(特に母、姉妹)に乳がんになった人がいる
8. 乳がんになったことがある
自己診断することで、自分の乳房の変化に気づくことができます。月に1回、以下の手順でセルフチェックしてみてください。
①鏡の前に立ち、肩の力をぬいて両腕を下げたまま、次に両腕を上げた状態で次のことを調べてください。しこりがあると凹みや、ひきつれを感じます。
・左右の乳房の形や大きさに変化がないか
・乳首のどこかに皮膚のへこみやひきつれはないか
・乳首がへこんだり、ただれができていないか
②仰向けに寝て、枕や折りたたんだタオルを背中の下に入れます。左手を上に上げ、頭の下に入れるようにします。
・右手の指をそろえてのばし左乳房の内側を調べます
・左手の指をそろえてのばし右乳房の内側を調べます
③右手を左乳房の内側にのせ、指の腹を胸の中央部に向かってやさしくすべらせるようにして、しこりがないかを調べます。手を変えて、右乳房も同じように調べます。
④起き上がり、右手の指をそろえてのばして左の腋の下に入れてしこりがあるかどうかを指先で調べます。手を変えて、右の腋の下も同じように調べます。
⑤左右の乳首を軽く搾るようにつまみ、血の混じった分泌物が出ないかどうか確かめます。
もし、セルフチェックでしこりをみつけ、検査で乳がんを指摘されたら、治療法について医師とよく話し合ってください。
乳がんの治療は、女性にとってかけがえのない乳房を取り除く乳房切除術(全摘術)か、乳房を残す乳房温存手術か、重要な決断を迫られることも少なくありません。
乳がんを治す手術や治療にはどのような方法があるのか、その方法の良い点と悪い点は何なのか、適切な治療を受けなかったときにはどうなるのか、お互いによく話し合いながら、自分にとって最善の治療法を決めることが大切です。