記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/6/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断で血圧が高めといわれたとき、心臓や血管の病気を思い浮かべる人は多いかもしれません。一方で、腎臓も血圧と深く関わっている臓器です。腎臓は血液をろ過して老廃物や余分な水分、塩分を尿として排出し、体内の水分量やミネラルのバランスを調整しています。この働きが乱れると血圧が上がりやすくなり、反対に高い血圧が続くことで腎臓の血管に負担がかかることもあります。
血圧が高めの状態は、はじめのうちは自覚症状がほとんどないことが一般的です。そのため、体調に大きな変化がないから問題ないと考えず、健診結果や家庭での血圧測定を手がかりに、食事や生活を見直すことが大切です。とくに糖尿病、脂質異常症、肥満、慢性腎臓病を指摘されている人では、血圧管理が腎臓を守るうえでも重要とされています。
ただし、腎臓の状態や持病によって、望ましい食事内容は変わります。減塩や体重管理は多くの人に共通する基本ですが、たんぱく質、カリウム、水分のとり方については個人差があります。医師から腎機能の低下や尿たんぱくを指摘されている場合は、自己判断で食事制限を強めず、医師や管理栄養士の指示に沿って進めましょう。
血圧が高めの人の食事で、まず見直したいのが食塩のとり方です。日本人の高血圧の大きな要因として、食塩のとりすぎが知られています。食塩を多くとると、体内に水分をため込みやすくなり、血液量が増えて血圧が上がりやすくなると考えられています。血圧が高い状態が続くと、腎臓の細い血管にも負担がかかります。
日本高血圧学会の一般向け資料では、高血圧の人は食塩摂取量を1日6g未満にすることが目標とされています。ただし、これまで濃い味に慣れている人が急に厳しく減塩すると、食事の楽しみが減り、続けにくくなることがあります。最初から完璧を目指すより、少しずつ味つけを薄くすることが現実的です。
減塩の基本は、調味料を量って使うことです。しょうゆやみそ、ソース、ドレッシングは、少量でも塩分を多く含むことがあります。料理にかけるより小皿にとって少しだけつける、汁物は具だくさんにして汁を少なめにする、麺類の汁は残すなど、日常の小さな工夫が役立ちます。漬物、干物、練り製品、ハムやソーセージ、インスタント食品にも塩分が含まれやすいため、頻度や量を調整しましょう。
減塩は、味気ない食事にすることではありません。だし、酢、香辛料、香味野菜、柑橘類を使うと、塩分を控えながら食べやすくなります。たとえば、みそ汁はかつお節や昆布のだしをきかせ、具を多めにすると満足感が出やすくなります。焼き魚にはしょうゆをかける代わりに、レモンやすだちを添える方法もあります。
家族や介護職が食事を用意する場合は、本人だけを別メニューにするより、家族全体で味つけを少し薄くするほうが続けやすいことがあります。高齢の人では味覚の変化や服薬の影響で味を感じにくくなり、濃い味を好むこともあります。そのような場合は、温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たく出す、料理の香りを生かす、見た目に彩りを加えるなど、塩分以外の満足感を整えることも大切です。
一方で、腎機能が低下している人では、野菜や果物に含まれるカリウムのとり方に注意が必要な場合があります。高血圧予防では野菜や果物の摂取がすすめられることがありますが、医師からカリウム制限を指示されている人は、自己判断で量を増やさないようにしましょう。食事の工夫は、血圧だけでなく腎機能、薬、血液検査の結果を合わせて調整することが大切です。
腎臓をいたわるために水をたくさん飲めばよいと考える人もいますが、すべての人に過剰な水分摂取がすすめられるわけではありません。慢性腎臓病の生活習慣指導では、むくみなど水分が過剰にたまっている状態がない人が、必要以上に水分を制限することは避けるよう示されています。一方で、心不全や腎機能低下が進んでいる人では、水分量の調整が必要なこともあります。
ふだんは、のどの渇き、尿の量、むくみ、体重の変化を目安にしながら、主治医の指示に沿って水分をとりましょう。暑い時期、発熱、下痢、食事量の低下があるときは脱水に注意が必要です。高齢者ではのどの渇きを感じにくいことがあるため、家族や介護職は、朝、食事の前後、服薬時、入浴前後など、生活の中で水分をとる機会を作るとよいでしょう。
アルコールは血圧や睡眠、服薬管理に影響することがあります。飲酒習慣がある人は、量と頻度を見直し、休肝日を設けるなど無理のない調整を考えましょう。高齢者や女性では、一般的にアルコールの影響が出やすい場合があります。薬を服用している人、肝臓や腎臓の病気を指摘されている人は、飲酒の可否を医師や薬剤師に確認することが安心です。
血圧の管理は食事だけでなく、日常生活全体と関わっています。睡眠不足や強いストレスが続くと、血圧が上がりやすくなることがあります。夜更かしが続く、夜間に何度も目が覚める、日中の眠気が強いなどがある場合は、生活リズムを整えることから始めましょう。いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まるように見えるといった場合は、睡眠時無呼吸症候群が関係することもあるため、医療機関に相談しましょう。
運動は、血圧管理や体重管理に役立つとされています。無理な運動を急に始める必要はありません。散歩、体操、家事の中で体を動かすことなど、続けやすい方法から取り入れるとよいでしょう。膝や腰の痛みがある人、息切れが出やすい人、心臓や腎臓の病気で治療中の人は、運動の量や内容を医師に相談してから始めることが大切です。
喫煙は血管に負担をかけ、腎臓や循環器の健康にも影響するとされています。本人が禁煙を望んでいても、長年の習慣を一人で変えるのは簡単ではありません。禁煙外来や薬局、自治体の相談窓口などを活用し、周囲も責めるのではなく支える姿勢を持つことが大切です。受動喫煙を避ける環境づくりも、家族や介護の場では意識したい点です。
血圧が高めでも自覚症状がないことは多いため、健診や家庭血圧の記録が大切です。家庭で測る場合は、朝と夜など決まった時間に、座って安静にしてから測ると変化を見やすくなります。測定値に一喜一憂するのではなく、数日から数週間の傾向を医師に伝えられるよう記録しておきましょう。
健診で高血圧、尿たんぱく、血尿、腎機能低下を指摘された場合や、血圧が高い状態が続く場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。足や顔のむくみが強くなった、急に体重が増えた、尿量が明らかに減った、息切れが強い、胸の痛みがある、激しい頭痛やろれつが回らない、手足の動かしにくさがある場合は、急な病気が隠れていることもあるため、速やかな受診が必要です。
薬を飲んでいる人は、血圧が下がったからといって自己判断で中止しないようにしましょう。降圧薬は、血圧を安定させ、腎臓や血管への負担を減らす目的で使われることがあります。めまい、ふらつき、むくみ、咳、体調変化などが気になる場合は、薬をやめる前に医師や薬剤師へ相談することが大切です。
血圧が高めの人が腎臓をいたわるためには、特別なことを一度に始めるより、毎日の食事と生活を少しずつ整えることが大切です。減塩を意識する、だしや香味を使って薄味でも食べやすくする、水分やアルコールを体調に合わせて調整する、睡眠や運動、禁煙に目を向けることが、血圧管理を支える基本になります。
腎臓は自覚症状だけでは状態を判断しにくい臓器です。健診結果や家庭血圧の記録を活用し、気になる変化があるときは早めに相談しましょう。持病や服薬状況によって必要な食事療法は異なるため、自己判断で制限を強めすぎず、かかりつけ医や管理栄養士と相談しながら、自分に合った方法を続けることが大切です。