記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/9/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
月経が始まる前になると、イライラする、気分が落ち込む、眠くなる、頭痛やむくみが出るなどの症状を感じる人がいます。こうした精神的、身体的症状が月経前に繰り返し現れ、月経が始まると軽くなる状態は、月経前症候群、PMSと呼ばれます。症状の種類や強さには個人差があり、毎月同じ症状が現れるとも限りません。日本産科婦人科学会は2025年にPMSと月経前不快気分障害、PMDDに対する診断・治療指針を公表しています。特に精神症状が強く、仕事や学業、人間関係などに大きな支障が生じる場合はPMDDが疑われることがあります。月経前の不調を性格や気分の問題として片づけるのではなく、症状が周期的に起きているかを確認することが大切です。
PMSやPMDDの評価では、どの時期に症状が現れて、月経後にどの程度軽くなるかを確認します。そのため、症状日記をつけることが役立ちます。月経開始日とともに、イライラ、落ち込み、不安、頭痛、腹部の張り、眠気、集中しにくさなど、その日の症状を簡単に記録してみましょう。仕事や家事にどの程度影響したかも残しておくと受診時の参考になります。一日だけ強い症状があったかどうかではなく、複数の周期で同じようなパターンを繰り返しているかを見ることが重要です。月経前だけでなく一か月を通して気分の落ち込みや不安が続いている場合は、PMSとは別のこころの病気が関係している可能性もあります。既存の精神疾患が月経前に悪化する場合もあるため、婦人科と精神科、心療内科などが連携して治療することがあります。
症状が比較的軽い場合は、まず自分の症状と周期を知り、生活の負担を調整することから始めます。十分な睡眠をとる、食事を極端に抜かない、無理のない身体活動を行うなど、基本的な生活習慣を整えることが大切です。月経前に忙しい予定を詰め込みすぎると症状を強く感じる人は、可能な範囲で予定を調整する方法もあります。職場で支障がある場合は、体調の波について産業医などへ相談する選択肢もあります。ただし、特定の食品やサプリメントをとればPMSが治ると考えて大量に摂取することは避けましょう。市販の医薬品や漢方薬を使う場合も、持病や他の薬との相互作用を確認することが必要です。生活改善だけで症状が十分に軽くならない場合は、医療機関での治療を検討します。
PMSやPMDDの治療では、症状の種類や強さに合わせて方法を選びます。婦人科では排卵やホルモン変動を調整する治療などが検討されることがあります。精神症状が強い場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれる抗うつ薬などが使われることもあります。また、症状によって漢方薬などが選択される場合があります。ただし、すべての治療がすべての人に同じように有効とは限りません。日本産科婦人科学会の指針では、精神症状が強い場合には精神科や心療内科への紹介を検討することも示されています。インターネット上で紹介される治療法を自己判断で試すのではなく、月経周期と症状の記録を持参し、困っている症状を具体的に相談しましょう。治療の目標は、症状だけでなく生活への影響を減らすことです。
毎月のように月経前の症状で仕事や学校を休む、人間関係に大きな支障が出る、強い不安や抑うつがある場合は、婦人科などへ相談しましょう。特に自分を傷つけたい気持ちがある、消えてしまいたいという思いが強いなど、安全に関わる精神症状がある場合は、月経が始まるまで我慢せず、速やかに医療機関や相談窓口につながることが大切です。また、症状が月経周期と関係なく続く場合にも、別の病気の可能性を含めて評価が必要です。PMSやPMDDは、日常生活への影響を含めて治療を考える病気です。毎月同じ時期につらくなることを本人の我慢だけで乗り切るのではなく、症状を記録し、家族や周囲とも必要な範囲で共有しながら専門家に相談しましょう。