記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/15 記事改定日: 2017/9/7
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
摂食障害は極度にやせてしまう「神経性食欲不振症」と、むちゃ食いをするがその分自分で嘔吐するなどして体重増加を防ぐが、痩せるまでには至らない「神経性過食症)があります。実は「神経性食欲不振症」の中にも、むちゃ食いをしながら、無理やり嘔吐するなどして痩せた状態を保つタイプがあります。
現代の過剰なまでの「痩せ型」信奉や、極度まで高まった「太りたくない」願望による過激なダイエットが、拒食症とも関係しています。
太ることに対し、強い自責と恐怖を抱いているため、食べたものを吐くことで「なかったこと」「ゼロ」にしようとします。しかし、自発的な嘔吐は、食道や胃を傷つけるだけでなく、肉体にさまざまな悪影響を引き起こします。
・体重に対する過度のこだわり
・体型への過剰なこだわり
という2つの心理的要因が深刻な状態に陥り、重度の摂食障害となったものが、拒食症(神経性食欲不振症)です。
拒食症の人は、体重をできる限り減らすため、食べ物の量を制限したり、わざと嘔吐したり、下剤を過度に服用したり、過剰に運動したりします。
太ることへの恐怖心と、痩せたいという強い願望によって、体重・体型へのこだわりが増えれば増えるほど、症状が進行します。
また、拒食症の人のほとんどが、自分自身に対して偏った評価をします。実際には太っていなくとも、周りからは「痩せすぎ」に思える場合でも、太っていると感じてしまうのです。
拒食症は、女性に多く見られる摂食障害ですが、近年は男性の患者も増えてきています。最初の兆候が見られるのは、平均して16歳~17歳ごろといわれています。
拒食症の人は、体重を減らそうとしていることを周囲に秘密にしたり、食事をしていないのにしたと嘘をついたり、食べたふりをします。
拒食症の兆候として、以下のようなものがあります。
・食事を取らないことがある
・少ししか食べない
・脂肪の多い食べ物を避ける
・食べたものを吐くために、食事が終わるとすぐにトイレに行く
・何度も体重を計ったり、鏡で体型を確認する
・めまい、抜け毛、皮膚の乾燥のような身体的症状がある
拒食症がサインを越え、見た目にも明らかになる症状として、以下のものが挙げられます。
・非常に痩せている
・痩せているにもかかわらず太りすぎと感じる
・体重を増やすことを恐れる
・過剰にカロリーを気にする
・食事の取り決めをつくる(たとえば、一口につき一定回数咀嚼するなど)
・過度の運動
・意図的に嘔吐を繰り返すことで、指に嘔吐ダコができている
・下剤の使用
・女子は、生理がないか不規則になる
・いつも寒く感じる
・体重減少を隠すために緩い服を着る
また、拒食症は、うつ病、不安神経症、卑下、アルコール乱用、自傷行為などの精神的な問題も引き起こすことがあります。
拒食症の人は、拒食状態を何年も隠して、周りに助けを求めないことがよくあります。
拒食症の回復に最も重要な第一歩は、誰かのサポートが必要であるという自覚を持つことと、回復したいと強く思う気持ちです。
拒食症の疑いのある人がいるなら、心配しているということを伝え、サポートを受けるよう促してください。
問題があるという自覚がないことから、不信感を持たれたり、身構えられたりすると思いますが、批判したり、プレッシャーをかけたりしないでください。状況を悪化させてしまう可能性があります。
もし、自分自身が拒食症かもしれないと思うのであれば、できる限り早くサポートを受けてください。家族や友人など、信頼できる人に相談することからはじめてください。一緒に病院に付き添ってもらってもいいでしょう。
より適切なケアを受けるため、治療開始の前に、まず、医師か摂食障害の専門家が身体的、精神的な状態をチェックします。
その後で、医師、精神科医、専門看護師、栄養士など、ヘルスケアの専門家たちが関わり、体重を増やしていくために、心理的療法と、食事・栄養に関するアドバイスを行います。
拒食症の人のほとんどは通院による治療を受けますが、深刻な場合、病院や摂食障害のクリニックに入院が必要になるケースもあります。
また、拒食症のほとんどは過食症の前段階であることが多く、拒食症状の後に過食症を引き起こします。過食症にならないようにするためのケアも必要になります。
拒食症は、完治に数年かかることも珍しくなく、再発の可能性もあります。たとえば、過去に拒食症だった女性が、妊娠によって増えてしまった体重を減らそうとする際に、拒食症を再発してしまうことがあります。
拒食症が長引けば長引くほど、骨粗しょう症、不妊症、不整脈、心臓疾患など、他の合併症が起こる可能性も高くなります。
拒食症は「心の病気」と言われており、強い痩身願望や極度のストレスから発症することが多い病です。
摂食障害を引き起こしている心理的な理由は何なのか、心の奥底にあるものを見極めることが大切です。過食症に発展しないよう、合併症にならないよう、躊躇せず、医師や専門家の力を積極的に借りましょう。