~ 妊娠中の出血で考えられる原因・対処法について ~

2017/8/29

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

妊娠中に起こる腟からの出血。
不安になると思いますが、幸いにも多くの場合は心配することはありません。しかし、腹痛を伴う出血があった場合は胎盤早期剥離、絨毛膜下血腫、子宮外妊娠等の可能性があるため注意が必要です。そこでこの記事では、注意すべき妊娠中の出血の原因と対処法をご紹介します。

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絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)は、絨毛膜(胎盤の外側の胎児膜)の間、または子宮と胎盤それ自体との間の血液の蓄積によってできた血腫のことです。
症状は軽度から重度のものまで様々ですが、ほとんどの場合は母体や赤ちゃんに危険をもたらすものではないため、妊娠を継続することができます。

みられる症状

絨毛膜下血腫は顕著な症状を引き起こすとは限らず、見つけにくい場合があります。
そのため、妊娠初期の出血の際や日常的な超音波検査で絨毛膜下血腫が検出されることも多いです。

ほとんどは自然に吸収されますが、まれに胎盤が子宮壁から分離してしまうケースもあり、その場合は流産や早期陣痛のリスクが高くなる可能性があります。
妊娠中に腟出血があれば、すぐに医師に相談しましょう。

対処法

・血腫が治るまで超音波検査を受ける
・血腫が消えるまでは性行為を避ける

胎盤早期剥離

胎盤早期剥離とは、胎盤が分娩が起こる前にで子宮壁からはがれてしまうことです(通常は赤ちゃんが出てきてから胎盤を取り出します)。
腹痛を伴う腟出血があった場合は、胎盤早期剥離の前兆である可能性があります。
胎盤早期剥離は深刻な症状ですが、特に早期発見されれば治療することができます。
胎盤早期剥離は比較的まれな現象で、深刻な剥離は、800~1600の妊娠に対して1件の割合でしか起こりません。

みられる症状

胎盤のはがれ具合にもよりますが、通常は以下のような症状がみられます。
・腟出血(少量から多量まで様々で、塊が出るものと出ないものがある)
・子宮の圧痛 ・腰痛
・腹部の痙攣痛
・頻繁に子宮が収縮する

対処法

特に妊娠後期に腹痛を伴う出血がある場合は、直ちに医師に連絡してください。

常位胎盤早期剥離早期剥離の状態が深刻な場合、治療するための唯一の方法は赤ちゃんを出産することです。
深刻な状態のままお腹の中に残しておいてしまうと、胎児に十分な栄養と酸素が届かず、母親は命に関わるような血液喪失や分娩後出血を経験するリスクが高まってしまいます。
普通分娩にするか帝王切開にするかなど、出産の方法は母体と赤ちゃんの状態に応じて決められます。

異所性妊娠(日本では子宮外妊娠と呼ばれることが多い)

卵子が精子と受精すると、通常は子宮に進入して子宮内膜に着床し胎児へと成長します。
しかし、異所性妊娠(日本では子宮外妊娠と呼ばれることが多い) の場合は、受精卵が子宮外に着床するため正常に発達し続けられないのです。
異所性妊娠が進むと、卵管が破裂して命にかかわる内出血を引き起こすため、直ちに治療する必要があります。

みられる症状

乳房の圧痛、吐き気、疲労など、現れるの症状の多くが妊娠初期症状と似ているため、診断が難しく、人によっては妊娠したことに気づかずに発見が遅れる場合があります。
不定期に起きる痙攣や軽度の腟出血があるからといって一概に異所性妊娠が原因とはいえませんが、特に次のような症状がある場合は医者に相談することをおすすめします。

・妊娠検査薬で陽性が出た後に、異常な出血や茶色の腟出血がある
・生理とは違う腟出血がある
・下腹部に生じる鋭い差し込むような痛み(鈍痛で始まり、痙攣に進行します)がある
痛みは継続的または時々途切れ、運動や腸の緊張、咳で悪化することがあります。

対処法

早期発見かつ最も小さい異所性妊娠(胎児の心拍がなく、卵管が破裂していない)の場合は、メトトレキサートという薬物で治療することができます。
治療後も卵管が破裂する可能性があるため、医者のフォローアップ治療の指示に従うことが大切です。

投薬が適切でないときは、子宮外妊娠を取り除くために全身麻酔下で手術を受ける必要があります。
腹腔鏡手術は腹腔鏡(カメラや器具が先端についた細長い映像伝達器具)を使って行われ、腹部を小さく切開して挿入されます。
これによって切開することなく体内を見ることが可能であり、異所性妊娠を取り除くこともできます。
2~3日程度で退院し、1~2週間で回復するケースが多いです。

おわりに:思い当たる症状がある場合は、速やかに医師に相談を

妊娠中の出血はめずらしいものではないので、ほとんどの場合は心配要りませんが、中には母子ともに危険な状態を引き起こす可能性もあります。
そのような事態を避けるためにも、思い当たる症状がある場合は速やかに医師に相談しましょう。

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